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「働き方改革」を“丸投げ”されるマネジャー…サイボウズはどう変えたか(山田理)

山田理(サイボウズ株式会社取締役副社長 兼 サイボウズUS社長)

2019年11月08日 公開 2022年08月09日 更新

 

働き方改革でいちばん損しているのはマネジャーです

働き方の多様化と、こうした世代間のギャップが生じている中で、いちばん損しているのはだれか?

間にいる、マネジャーです。

マネジャーには「上」から無茶ぶりが降ってきます。「うちの会社は働き方を改革します」「フレキシブルに働かせます」「残業を削減します」「社員の満足度を上げます」−−。

いったい、どうやって?

だからといって、マネジャーには、会社のルールをつくったり変えたりする権限はありません。これがいちばん苦しいんですよね。

昭和世代の「上」は、実はだれもそのやり方を知りません。唯一の指示は「問題が起こらないようにうまくやって」とだけ。

なのに、会社の業績目標は変わらない。メンバーの成果目標も下げてはいけない。業務効率を良くし、社員のモチベーションを高く維持しなければならない。自分が持っている数字もある。

「できるかいっ!」

そんなことができるくらいなら、とっくにやっていますよね。

しかも、そのジレンマに対して「下」から突き上げられるのもマネジャーです。

「下」からは、「無理です」「どうすればいいんですか」「そもそも何のための働き方改革なんですか」と問われます。上司に相談にいっても、「それをうまくやるのが君の仕事だろ」とまた無茶ぶりされます。

部下のモチベーション維持の前に、自分のモチベーション……それ以前に、まともな精神状態を維持するのさえ難しいのではないか、と思うのです。

これまでの組織のあり方は、現在の大企業が、創業当初のベンチャー的な経営を脱して成長していく中で、その成功体験を元にできたものです。ですから、それを踏襲し、一生懸命頑張ることが美徳とされてきました。

終身雇用と引き換えに、会社への忠誠心が求められる。「24時間働けますか」と問われ、子どもが生まれようともマイホームを買おうとも、辞令ひとつでどんな場所へも飛んでいく。

弱音を吐くやつは「情けない」と叱責され、ついて来られないやつは窓際に追いやられ、あまり意味のない仕事を渡される。

そんな時代の中で這いつくばって仕事を学んだ世代と、インターネット以降の時代に生まれ育った世代。その狭間で、これまでだれも経験したことのないほど困難なマネジメントスキルが求められている。

それが今の時代のマネジャーなのです。

「上」からの指示の意図を汲み取り、「下」に対しては納得させ、コーチングし、ティーチングし、メンタリングする。

そのために必要なスキルは、ビジネス書を読み込んで学習する。自主的にセミナーにも足を運ぶ。もちろん、個人の成果も出しながら、です。

「そんなパーフェクトヒューマン、どこにおんねん!」

あまりに酷です。

この状況でうまくいく人がいるなら、それは奇跡か「もうけもん」です。

しかし、こんな状況の中でさえも、「やるからにはいいリーダーになりたい」という強い責任感を持ちながら、押し付けられた役割と戦っているのがみなさんなのだと思います。

そもそも、何でもかんでも役割をマネジャーに集中させてしまっていることが問題なのです。これらの仕事は、たった一人のマネジャーが抱え込まなければならないものなのでしょうか。

マネジャーを、もっとだれでもできる役割にしたい。抱え込みすぎているマネジメントの仕事と責任を分散させたい。いや、むしろ「なくして」しまいたい。

サイボウズは、「マネジャー」という役割を、より希少価値が高い重要なもの、ではなく、もっと「大衆化」することに挑んできました。

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