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日本を「主権国家」と認めていない!? ロシアの強気な言動の根拠

2019年12月10日 公開

小泉悠(ロシア研究者・軍事アナリスト)

プーチン大統領
(写真:ロシア大統領府公式サイト www.kremlin.ru より)

近年、国際社会におけるロシアの存在感が高まっている。

シリアへの軍事介入、ウクライナのクリミア占領、ジョージア(グルジア)やバルト三国への圧力、中国への接近、北極圏への侵出、そして日本との北方領土問題など、その勢力圏は東西南北に及ぶ。

ロシアの狙いは何か? 軍事的野望の向かう先は?

本稿では、ロシアの対外政策における行動原理を読み解く鍵となる“ロシア独自の「主権」の考え方”について紹介する。

※本稿は小泉悠著『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版刊)の内容を一部抜粋・編集したものです
※なお、小泉氏は同作にて「第41回サントリー学芸賞〔社会・風俗部門〕」を受賞しました
 

旧ソ連域外ではウェストファリア的秩序の擁護者

ロシアは闇雲に介入を行っているわけではない。ソ連崩壊後にロシアが軍事プレゼンスを展開させている地域や軍事介入を行った地域を地図上にプロットすると、シリアと北方領土を除けば、ロシアの介入が旧ソ連諸国に集中していることが見て取れる。

外部の我々が賛同できるかどうは別として、そこには何らかのロシアなりの論理が存在している筈である。

たとえばロンドン大学キングス・カレッジのロシア専門家であるデヤーモンドは、ロシアの態度が旧ソ連国境の内部と外部で正反対になるという興味深い傾向を指摘している。

旧ソ連域外におけるロシアの振る舞いは、古典的な国家主権を基礎としたウェストファリア的秩序そのものである。

たとえばロシアは諸国家間の法的平等や内政不干渉、領土的一体性の尊重といった諸原則を擁護する一方、人道的理由に基づいて国家主権が制限されうるとした冷戦後の「保護する責任(R2P:Responsibility to Protect)」論には強硬な反発を示してきた。

NATOによるユーゴスラヴィアへの介入や、2003年のイラク戦争においてロシアが示した反発はその好例である(一方、アフガニスタンへの介入については、同時多発テロを受けた米国の自衛権の範囲内であるとし、ロシアは積極的な協力姿勢を示した)。

また、ロシアはシリアに対する米国の軍事介入に対しても同様の反発を示す一方、主権を有するアサド政権から要請を受けたロシアの介入は法的に正統なのだという立場を示し続けている。

ロシアの行動に賛否はあろうが、古典的な秩序という点に照らすならば、そこに一定の筋が通っていることは否定できない。

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