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背筋も凍るホラー漫画なのに…戸川純が「死より生を感じる」作品

戸川純(女優/歌手),寺井広樹(⽂筆家/日野プロダクション代表)

2020年01月24日 公開 2024年12月16日 更新

 

『地獄変』の詩集の朗読を断った理由

(戸川)私ね、日野先生のドキュメンタリー映画の中で『地獄変』の詩集の朗読の依頼をいただいてたんですけど、お断りしたんですよね。

私は言霊を信じてるのでね。言うのも憚られる、言うのも怖い言葉だけど、「あたしもうぢき××××」っていうタイトルの曲で、凄くパワフルなマイナスの歌詞を描いて歌っちゃったら、私もホントにすぐダメになっちゃった。いいにつけ悪いにつけ、私は言葉の力を信じてます。

だから、『地獄変』のあの詩集を口にしたら、ほんとにやって来そうで、大好きな日野先生の作品で光栄なんですけど……。大変申し訳なかったです。

――とんでもないです。戸川さんのライブに行かせていただいて、どうしても戸川さんに朗読をやっていただきたいと思ったんです。

(戸川)日野先生は居合いとかで鍛えていらっしゃるので、そういったマイナスなものを寄せ付けないのでしょうけど。

――先生はお酒もたくさん飲まれるんですけど、お酒で体を清めてるのかもしれないですね。「命の水」とおっしゃってます(笑)。今度はポジティブな言葉の作品をチョイスするのでまたご相談させていただけませんでしょうか。

(戸川)はい。光栄です。

――でも、日野作品であまりポジティブな言葉がパッと思いつかないですね。

(戸川)うーん。日野作品に私が感じるのは、風景。胎児が浮いてる昔の下水の風景。ゴーレムみたいな泥人形。あれは公害の話なんでしょうけど、人間が人工的にしちゃった良くないものの象徴みたいな感じ。

決して自然界に元々あったものじゃない。日野先生は鋭い感性でそういうのを拾ってらっしゃる。日野漫画でも虫とか出てきても、野山の虫とかは意外と出てこなくて蛆虫とか。その蛆を湧かせたのは人間だ、そうした人間が悪いんだ、みたいなそういうことを描かれてるんじゃないかなと思うんです。

でも、「それでも生きていく」というような印象を受けるんです。そこにピシッとした根幹のようなものを感じます。私はそこにポジティブさを感じるんですよ。

 

戸川純(女優/歌手)
映画、ドラマ、舞台、CMなど出演作多数。CM『TOTOウォシュレット』、映画『釣りバカ日誌』『いかしたベイビー』、近作に演劇『グッド・デス・バイブレーション考』、近著に『ピーポー&メー』がある。音楽作品に『玉姫様』、『好き好き大好き』、『昭和享年』、自選ベスト3枚組『TOGAWA LEGEND』『わたしが鳴こうホトトギス』など多数。YAPOOSとして『ヤプーズの不審な行動 令和元年』発売中。発売記念ライブを2020.1.28(tue) 渋谷 Club Quattroにて開催。

寺井広樹(日野プロダクション代表/文筆家)
文筆家。日野日出志とともに日野プロダクションを設立。文筆業のかたわら地方創生事業に進出し、企画プロデュースした「お化け屋敷電車」「まずい棒」が話題に。今春公開の映画『電車を止めるな!』では原作・脚本を務める。『日野日出志 泣ける! 怪奇漫画集』(イカロス出版)、『ようかい でるでるばあ!!』(彩図社)、『南米妖怪図鑑』(ロクリン社)など著書多数。

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