橋下徹氏が北朝鮮に学んだ「小国が大国を揺さぶる交渉術」
2020年03月17日 公開 2023年07月12日 更新
力がなければ国際社会は相手にしてくれない
北朝鮮ほどの小国が、アメリカや中国などを動かした。オバマ前大統領のときは、「戦略的忍耐」というフレーズで、アメリカは結局何もやらず、北朝鮮を無視し続けた。
ところが、北朝鮮が開発してきた核兵器と、アメリカ本土を狙うことのできる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成がいよいよ間近に迫ってきたら、アメリカは北朝鮮を無視するわけにいかず、動かざるを得なくなった。アメリカは徹底的な経済制裁を行いながらも、最終的には米朝首脳会談を行った。
もし北朝鮮が核兵器やICBMを保有する可能性がまったくなければ、アメリカはここまで北朝鮮のために動く必要もなかったし、場合によっては一気に金正恩の命を奪いに行ったかもしれない。
アメリカは、価値観を同じくする西側同盟諸国にとっては力強い味方ではあるが、アメリカと価値観を共有しない国、敵対する国にとっては大変な脅威である。アメリカは、敵対する国の体制転覆を、軍事力で実行することもある。
こんなアメリカに対抗するには、まさに自分の力に頼るしかない。いざというときに国際社会が守ってくれるかと言えば、そうでもない。日本国憲法前文のように「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」することさえすれば、自国の生存が必ず守られるほど甘い国際社会ではない。
世界各国に対して国際ルールを強制的に守らせる世界政府や世界裁判所、世界警察という国際法執行機関が存在しない以上、いざというときには、自分たちの力で自分の国を守るしかないのが国際社会の現実だ。
繰り返しになるが、今の国際ルールや国際連合は、みながルールを守ってくれるだろうという善意で成り立っており、ルールを守らない場合にルールを強制的に守らせる仕組みが不十分なのである。
こんな状況の中で国際社会を動かしていくためには、相手国に対して圧力をかけて危機感を募らせ、自分たちのために動かざるを得ないように仕向けるしかない。こちらに力がなければ国際社会は相手にしてくれない。金正恩はそのことを十分過ぎるほど理解している。
ゆえに金正恩は、大国が北朝鮮のために動くほどの危機感の醸成に徹底的にこだわり、核兵器の開発にこだわり続けた。
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金正恩が核開発とともにこだわった「勢力均衡」とは?