大病を克服した哲人・中村天風が説いた「病を遠ざける方法」
2020年04月17日 公開 2024年12月16日 更新
中村天風(写真提供=公益財団法人天風会)
《新型コロナウイルスが猛威を振るっている。列島全体を覆う不安と恐怖に心身に不調をきたす者も多いだろう。稀代の思想家・中村天風は、「健康を保つには、心を消極的にさせないこと」と説く。
中村天風は1876年に生まれ、大病を克服し実業界で活躍するも、1919年に突如、社会的地位や財産を放棄。真に生きがいのある人生を送るための実践哲学についての講演活動を開始する。
その「天風哲学」は政財界の有力者から大谷翔平のようなプロアスリートまで多くの人から支持され、現代に至ってもその哲学を探求する人が後を絶たない。もし中村天風がこの時代に生きていても、その哲学は揺らぐことはないだろう。そして、心を煩う人の支えになっていたに違いない。
本稿では、新刊書籍『力の結晶 中村天風瞑想録』より、中村天風が「病に打ち克つ哲学真理」について語った一節を紹介する。》
※本稿は『力の結晶 中村天風瞑想録』(中村天風、PHP研究所刊)より、一部抜粋・編集したものです
肉体と心は、生命を活動させるための道具
現代の人間たちは、自分が人間であることは知ってるんです。
人間であることは知っているけれども、人間とはなんだということは知らないんだから。
人間というのは、立って二本足で歩いて、二本の手のあるのが人間だと思ってる。もっとはっきり言っちまうと、人間というのは犬や猫と形の違った肉体を持っている、これが人間だとこう思ってる。
そういう人はだから、人間とは何って言えば肉体だと思っている。したがっておまえはなんだと言や、肉体だとすぐに思う。
人間というのは、本当の人間の正体を突き止めていくと、何も見えない、感じない、霊魂という気体である。それで霊魂という気体が現象界に命を活動せしめるために、その活動を表現する道具として、肉体と心が与えられてあるんだ。
いわば絵描きの持つ絵筆、大工の持つかんなと同じようなのが、命に対する肉体であり、心であるんだということがわからせられた。
その命というものに、限りのない強さと、喜びと、安心と、平和とが、正しくこれを理解し、これを正しく応用する人に与えられているという、ありがたい事実が我々の生命にはあるのであります。
ただ多くの人々は、命と言うとすぐ肉体ということを考えるために、大変な間違いがそこに出てくるので、肉体に不思議な命の力があるんじゃないんです。
霊魂という気の中に、不思議な働きを行う力がある。
それはちょうど、回っている扇風機にあのファンを回す力があるんじゃなくして、あの風を起こしているファンが回っているのは、電気という不思議なものが、これを回すという動力を起こしているから。
このたとえでもってすぐ人間というものがわかりそうなものだが、人間だけは何かこう、肉体に生きる力があるように思っているところに、大変な寸法違いがある。
肉体の生きているのが、霊魂という気の力で生きているということが本当の悟りなのだが、この本当の悟りを正しく自分の心に持って生きている人がきわめて少ないために、わずかな不健康な状態が肉体に生じても、肉体が生きていると思っているものだから、その不健康状態が非常に心配になってくる。