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生き方

大病を克服した哲人・中村天風が説いた「病を遠ざける方法」

中村天風

2020年04月17日 公開 2022年02月07日 更新

 

「生きる力」の受け入れ態勢を整えよう

霊魂という気のほうから幽玄微妙な力を送り込んでやることが分量多くありさえすれば、その不健康状態は直ちに健康状態に復活するというような原理を知らない。

考え方が全然違うために、したがって人生をもっと尊く生きられるのに、その尊く生きられる人生を尊く生きてないというような滑稽なことをやっている人が随分世の中には多い。

おそらくあなた方の大部分がそうであったんじゃないかと思う。今までね。

だから人間の第一に必要なことは、人間の生命に与えられた生きる力というものが、肉体にあるんでなくして、霊魂という気の中にあるということを正しく理解しなきゃいけないのであります。これが最も正当な自己認証なんです。self comprehensionと言います。自己認証。

ところが自己認証があやふやなものだから、ちょいとくしゃみをしたとしても、ちょいと咳がひとつ出てもすぐ、肉体に命があると思ってるものだから、非常に神経を過敏にしちまう。

いつも私、講習会のときに、折あるごとに、時あるごとにこういうことを言ってるだろう。結局、心が肉体から離れているときに、肉体には肉体それ自体の生きる力を受け取る十分な働きが行われると。

けど、心がもしも肉体に消極的に注がれると、肉体の生きる力を受け入れる受け入れ態勢に妨害が与えられるために、結局思う存分万物の霊長たる強さを肉体に発揮することができない結果が来るぞと。

だからできるだけ消極的な気持ちで肉体を考えないようにすること。

特に病のときには、病を忘れることに努力しろ。

そういう言葉を静かに味わっていくと、人間の心の中の思い方考え方、もっとわかり易い言葉で言うと、人間の健康も運命も、心一つの置き所だということがすぐわかるはずなんだ。

積極的な方面に置いたのと、消極的な方面に置いたのとは天地の相違がそこに来るのであります。

それを哲学のほうでは、「心の思考が人生をつくる」という言葉になって表現されている。

私は初めてこのね、心の思考が人生をつくるという、ヨーガの哲学の文字を見たときに、ちょっと理解ができなかった。なんだろう、この心の思考が人生をつくるという言葉は、と。

何しろそれまでいつも、あなた方に私が言ってるとおり、その当時まだ人生を考える十分の知識が私の頭の中になかったために、一体この言葉の意味はどういう意味だろうと、少しもわからなかった。

ところがだんだん、だんだん、人生を研究するにつけ、また生命を自分の病を根本として、ああこうと研究するにつれて、今言ったような重大なことがわかってきたわけなんです。

わかってから以後の私は、それは自分でも呆れるほど、丈夫な体になって。ただ丈夫なだけならともかくも、そのうえ本当に思いもよらない長生きをこうやって重ねていく幸いを味わっているわけですが。

しかし、静かに世の中を見てみると、物質文化の非常に進歩している現代。しかも地上には、なんと病人や不運の人があまりにも多い。

この多い理由は、今言ったような心の思い方考え方、すなわち心の置き所が積極か消極かということに関係して、その肉体の生きる力の受け入れ態勢に非常な消長関係が来るということを知っていないで生きている人が多いがためなんです。

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