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1億円を超え、4000人以上が集結…苦境の宿泊施設を救う「無名サイト」が誘った涙

竹内謙礼(有限会社いろは代表取締役)

2020年07月08日 公開 2024年12月16日 更新

 

大きすぎる反響に運営が頓挫する危機も…

種プロジェクト https://save-ryokan.net/ より
種プロジェクト https://save-ryokan.net/ より

「僕自身が驚いていますよ」

 種プロジェクトの主宰者の丹羽尚彦さんも、今回の反響は想定外だったという。

「東日本大震災の時も、同じ種プロジェクトを行って、東北のお宿さんを支援したことがあったんです。その時は東北を中心に10軒ぐらいご参加くださって、約半年間、サポート制度を行いました。

それでも集まった総額は300~400万円ぐらい。今回も金額ではなく、この企画でお宿さんを勇気づけようと思って、再び種プロジェクトをやってみることにしたんです」

もともと、丹羽さんは温泉旅館のレビューサイトの運営や、宿泊施設のホームページの制作業務を請け負っていた。顔見知りの宿泊施設でキャンセルが続出していたこともあり、なんとか励ましたいという思いから、種プロジェクトを立ち上げたのだ。

丹羽さんは多くの人に種プロジェクトの存在を知ってもらいたいと思い、知り合いの宿泊施設以外にも、懇意にしている温泉ライターや、大学で観光業を研究している准教授に声をかけた。

すると、その人たちがブログやSNSで種プロジェクトを拡散してくれて、さらにその情報をキャッチした宿泊施設が企画に参加することで、一気に宿泊施設業界で話題のサイトになった。

やがてテレビや新聞でも種プロジェクトが取り上げられるようになり、サポーター登録は多いときに1日150人を超えるようになった。しかし、嬉しい反面、丹羽さん一人では種プロジェクトの運営を回せなくなってしまった。

「入金確認やサポーター証書の送付はお宿さんがやってくれるんですが、応援メッセージの掲載や宿泊施設の登録は、運営サイドがやらなくてはいけないんです。

ボランティアでやっているサイトなので人を雇うこともできず、困っていたところ、この企画に賛同してくれた友達や、大学の准教授の教え子の大学生たちがボランティアで手伝ってくれることになったんです」

コロナ禍で大変な状況の中、「大変な宿泊施設のために役立ちたい」という思いだけの人たちが集まり、引き続き種プロジェクトは継続して運営されることになった。

 

「無償の善意」が生んだ一大ムーブメント

緊急事態宣言後はサポーターの登録数も落ち着き、今は3~4名のボランティアがオンラインで作業をすすめている状況だという。

無報酬では申し訳ないということから、今まで手伝ってくれたボランティアの人たちに、宿泊施設からサポーターと同じ宿泊補助券が進呈された。それでも、金銭的な見返りもなく、困っている宿泊施設を助けたい一心で働いた人たちには、頭が下がる思いだ。

主宰者の丹羽さんに、今後の種プロジェクトについて聞くと「お役目がある間はやってみようと思います」と、ゆるい言葉が返ってきた。

「これでお金を稼ごうとか、有名になろうとかまったく思っていないんです。お恥ずかしい話、無計画で、思いつきで始めてしまった企画なので、そこまで先のことを考えて運営はしていないんです。

ただ、種プロジェクトを立ち上げたときに、『やれるとこまでやってみよう』という決心みたいなものはありました。そんな欲のない気持ちで始めたから、お宿さんやサポーター、著名人の協力が得られたんだと思います」

もし、これがクラウドファンディングのように、集まったお金の数%を徴収する仕組みだったら、おそらくここまで種プロジェクトは成長しなかったかもしれない。

丹羽さん自身が宿泊施設を励ましたい一心で始めた企画で、それに共感した人たちが協力し合って運営した企画だったからこそ、多くのサポーターの心を動かしたと言える。

「お宿さんを"助けよう"なんておこがましいことはまったく思っていないんです。お宿さんが抱えている売上のマイナス分を考えれば、種プロジェクトで集まったお金はとても十分とは言えません。

ただ、それでも、『必ず行きます』というお客様からのメッセージをもらって、前払いのお金が振り込まれ、その方々がいつか必ず泊まりに来てくれることが確認できただけでも、そこで働く人たちの気持ちの支援になるんじゃないかと思っているんです」

種プロジェクトは、登録した宿泊施設が自ら支援を終了できる仕組みになっている。丹羽さんは、登録している宿泊施設が「もう大丈夫だよ」と思ってくれるまで、引き続き種プロジェクトのサイトの運営を続けるという。

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「見捨てられていない」金額だけではない声援に涙

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