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検証「年収200万円時代」予言の森永卓郎氏…本人の暮らしぶりの実態は?

森永卓郎(経済アナリスト/獨協大学教授)

2020年08月06日 公開 2023年12月27日 更新

検証「年収200万円時代」予言の森永卓郎氏…本人の暮らしぶりの実態は?

かつて「年300万円時代」の到来を予見し、話題を集めた森永卓郎氏。時を経て、『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』(PHPビジネス新書)を発刊した森永氏は、新型コロナウイルスの経済的影響で「正社員の給与が年収200万円になる」と主張する。

しかしながら、当の本人は実際にどんな暮らしをしているのか? 誰もが気になる疑問を森永氏にぶつけてみた(聞き手 大隅元・PHP研究所)。(聞き手 大隅元・PHP研究所)。

※本稿は、『年収200万円でもたのしく暮らせます コロナ恐慌を生き抜く経済学』 (PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです。

 

年収100万円台に突入する正社員も

――『年収200万円でもたのしく暮らせます』が話題を呼んでいます。そもそも、ほんとうに年収200万円時代が到来するのでしょうか?

【森永】これから、過去に例のないほどの大不況が訪れます。これまで30年間続いてきたグローバル資本主義が音を立てて崩れ始めているために、仮に新型コロナウイルスが収束しても世界的な大恐慌に発展する可能性が高いからです。市場は冷え込み、規模を問わず企業の倒産、従業員のリストラが相次ぐでしょう。みなさんの給料はどんどん削られていくに違いありません。

2003年に私は、『年収300万円時代を生き抜く経済学』(光文社)という本を上梓しし、大きな反響を得ました。

サラリーマンの平均年収は300~400万円にまで落ち込む。抜本的な生活スタイルの改革が必要だと訴えました。いまの経済状況は当時より深刻です。

おそらく、普通の正社員でも、業種・職種によっては、年収200万円台という人が大半を占めるようになるのではないでしょうか。100万円台の人が出てきてもおかしくありません。

――仮に正社員の年収が200万円に落ち込んだとして、逆境を打開する術はあるのでしょうか?

【森永】私たちは、国民年金や健康保険を払わなくてはいけません。光熱費や食費もかさむ。子供の教育費もある。趣味や娯楽にまでお金を回せない。そうした時に必要なのは、「ライフスタイルチェンジ」。自分で考え、自分で決断し、少しずつ生活を変えていくことです。

長期間デフレが続いていた日本では、多くの人がなんとなく働いて、そこそこの暮らしができました。それは、ある意味で「バブルの時代」。これからは、違います。誰もが「年収200万円しかない」といった危機感をもち、生活スタイルを変えていく必要があります。

――意識を変えて、生活スタイルを見直すこと。そうは言っても、「テレビや執筆の仕事で活躍する森永さんは、きっと裕福な暮らしを送っているに違いない」と国民全員が信じて疑いません。

【森永】そんなことはないですよ。じつは、私は30年以上前から都心から1時間半もかかる都会と田舎の中間に存在する「トカイナカ」で生活しており、そこから都心に出稼ぎに出ています。

東京と比べれば、自然も豊かで、人の密集もはるかに少ない。近隣の農家が作った農産物を直接買うこともできます。私自身、畑を借りて、野菜作りもしています。こうしたトカイナカこそ、年収200万円時代でも豊かに暮らすのにふさわしい「理想郷」なのです。

東京の人たちが必死に働き続ける理由の一つに、高い家賃と住宅ローンが挙げられますが、私が住むトカイナカに住めば、家賃は劇的に安くなります。トカイナカにいても、これまで通りの仕事はできます。パソコンがあれば、オンラインで会議や打ち合わせは可能です。

 

野菜の高騰もこわくない

――生活環境が変わっても、都心のときと同じように働けるのはたしかに魅力的ですね。

【森永】13年にわたる都心とトカイナカのパラレル生活を経験した結果、「都心は人の住むところではない」という考えに至りました。新型コロナの感染者数は増加傾向にあり、首都直下地震など災害のリスクも高い。おまけに、都心では野菜をはじめとする物価が上昇しています。

私は自分で畑もやっていますし、家の周りは畑だらけなので、スーパーに買いに行かなくても、旬の野菜が農家の「直売所」で買えます。ケージのようなものが置いてあり、そこに100円を入れて持って帰る方式です。

コロナ禍では、ニューヨークで野菜が買えなくなりパニックになりました。ところが私のところは野菜がなくなることはありえません。近所の畑だけではなく、わが家の庭にも畑にも、野菜が植えてあるからです。野菜の高騰も心配ありません。

――経済アナリストが農業? プロの農家に怒られますよ。

【森永】私は2年前から群馬県昭和村で、ミニ農業をしてきました。仕事があるので、多い時でも週に一度しか出かけられないのですが、プロの農家が畑の整備と苗や種の準備、そして農作業のあらゆるアドバイスをしてくれるので、10坪くらいの狭い畑でも、家族では消費しきれないほどたくさんの収穫があります。

畑を始めてから、近所の人とのコミュニケーションが増えました。畑をいじっていると、通りかかった近所の人が声をかけてくれるのです。日々育っていく作物の様子をみるのは、彼らも楽しみのようで、話がはずみます。

また、私の畑の周りは、定年後のサラリーマンを中心に、私と同じようなミニ農業をしている人がたくさんいます。彼らは育て方のアドバイスをしてくれたり、種や苗をくれたりします。作物も、「たくさん穫れたから」と言って、分けてくれます。

彼らになぜ農業をずっとやっているのかと聞くと、農業の面白さは2つあると言います。1つは、思い通りにならないことです。自然が相手ですから、いくら習熟していっても、自分の思い通りに育つのは、せいぜい3分の2くらいだそうです。うまくいかないからこそ、いろいろと知恵を使って、柔軟に対策を講じないといけない。そして、手をかければかけるほど、作物が育っていきます。

もう1つの楽しみは、全部自分で決められるということです。サラリーマン時代というのは、思い通りにできないことばかりです。給料は我慢料だという人もいます。それと比べると農業は、すべて自分の考えで自由に出来るので、楽しいのです。

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