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人生がつまらないのはなぜ? 大人になり切れない「5歳児の大人」ための処方箋

加藤諦三(早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員)

2020年11月27日 公開 2024年12月16日 更新

人生がつまらないのはなぜ? 大人になり切れない「5歳児の大人」ための処方箋

5歳の子どもに、30歳、40歳のビジネスマンのような生き方はできない。しかし何の責任も負うことなくチヤホヤされていたいと願いながらも、大人として生きなければならない「5歳児の大人」が多い。

加藤諦三著『「大人になりきれない人」の心理』(PHP研究所刊)では、自身も「5歳児の大人だった」という加藤諦三氏が、大人のフリに疲れた人が満足感をもって生きるためにはどうすればよいかを語っている。

本稿では大人になっても未成熟な人間の特徴、そしてその生きづらさから解放されるための方法を語った一説を紹介する。

※本稿は加藤諦三著『「大人になりきれない人」の心理』(PHP研究所刊)より、一部抜粋・編集したものです。

 

「5歳児の大人」5つの特徴

5歳児の大人の性格的特徴として、真面目人間である、などをすでにあげた。ここでは、少し具体的に5歳児の大人の生活上の特徴を述べてみたい。

まず、彼自身の話をすると喜ぶ。結婚していれば、会社の自慢話と苦労話を聞いてあげると喜ぶ。逆に会社の話を聞いてあげないと不服そうな顔をする。そして彼が「いかに大変か」に同情すると、機嫌がいい。

5歳児の大人は、生きるのが辛いのである。だから同情されると機嫌がよくなる。「僕をちやほやしてほしい」が5歳児の大人である。5歳児は「僕をちやほやしてほしい」のだから、5歳児の大人も同じことである。5歳児の大人は、義務と罰で育てられている。甘えの欲求が満たされていない。

2番目は、どちらかというと頭痛持ち。頭が痛い、と言う人が多い。それは、怒りを抑えているからである。頭痛は怒りの外化と考えればよい。頭痛の原因は心であって、肉体ではない。したがって、内科診療してもどこも悪くないことが多い。でも、頭痛は頭痛なのである。

3番目は、家族旅行が好き。小さい頃の家族愛が満たされていないから、家族旅行が好きである。親になってから、子ども時代の欲求を満たそうとしている。もちろんそのことに本人は気がついていない。自分の愛情欲求を満たすのだから、その家族旅行は自分が楽しまないと面白くない。

4番目は、奥さんがいつもニコニコと太陽のように朗らかでないと不機嫌になる。5歳児の大人は、小さい頃家の中が暗かった。そこで、自分の小さい頃満たされなかったものを大人になって満たそうとするからそうなる。

また、奥さんのほうが5歳児の大人の場合には、とにかくわがまま。こちらは父親に甘えたいと思った願望が満たされていない。それをなんとか埋めたいと思うから、極端にわがままになる。父親に甘えられなかった憎しみも、拗ねたり、僻んだりという形で表現される。

5番目は、食事を疎かにすると怒る。おかずが多いと喜ぶ。それは、小さい頃家庭に愛がなかったから、それを今求めているからである。「愛の原点は食べ物」というくらいである。

いくつか例を挙げたが、このような傾向がある方は注意したほうが良いだろう。いずれにしても、愛情欲求が満たされていない結果である。5歳児の大人は、小さい頃暖かい家族関係がなかったとも言える。

 

不利な環境で育っても、人は幸せになれる

私はマーレーン・ミラー著『ブレイン・スタイル』(講談社)という本を訳した。その本では、しきりに人は自分の長所を活用して生きなければならない、と主張している。

――「子供への環境の影響についての特に珍しい研究で、デービスのカリフォルニア大学のエミー・ワーナーは、32年間にわたり、698人の『ハイリスクの子供』のグループを研究した。

子供たちは、ハワイのカウアイ島の『物理的障害に囲まれた、最も不毛な家』で育った。両親と環境の強力な影響の中で教育されたわけである。私たちの多くの予想どおり、3人のうち2人は10歳までに極度の学習的、行動的問題を抱えていた。

『しかし驚くことに、彼らの3人のうち1人は、有能な、自信に満ちた、心の優しい若者に育った』」――。

ここには、5歳児の大人が学ぶことはたくさんある。最も不毛な家で育っても幸せになっている人がいる、ということである。もちろん、それにはその人の生まれついての気質が関係している。

しかし、とにかく不利な環境で育っても、幸せになった人がいるのだという事実は、5歳児の大人を励まさないだろうか。自分の生まれ育った環境を呪って生涯を終わるよりも、幸せな人生を送りたいと思わないだろうか。

では彼らは、なぜ幸せになれたのだろうか。調査から分かった顕著なことは、成功したグループで見つけられた何百もの変数の中から、3つの類似性があることだった。

(1)特に才能はなかったが、持っている技能を効果的に使ったこと――状況に関係なく、赤ちゃんたちは"幸せ"に生まれた。1歳になる頃には、ポジティブな感情(笑ったり、幸せそうにする)が芽生えていた。赤ちゃんたちは、ハッピーになるように教えられたり、しつけられたりしたわけでは決してなかったが、自身で環境を管理するようになっていった。

(2)精神的よりどころを家族以外の学校、仲の良い友人、そして教会に求め続けたこと――グループの子たちがまだ幼児の頃は、親には限らず、最低一人の大人が、彼らを信じてあげる長期の個人的な世話役だった。そして1/3近くが、信仰と祈りが大きな内的、個人的心の支えであり、外での人との関係を補うと言った。

(3)他人とは関係なく、個人的に趣味を持っていたこと

『子供の時の不利で、満たされない体験は、人格形成を決定づけない』ということを最近の研究が実証している。子供たちが、困難な状況から6歳や7歳になってから連れ出されても、10代に入る頃には、正常のIQや行動が起こりうることもわかっている。

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5歳児の大人を救う「3つの条件」

著者紹介

加藤諦三(かとう・たいぞう)

早稲田大学名誉教授、元ハーヴァード大学ライシャワー研究所客員研究員

1938年、東京生まれ。東京大学教養学部教養学科を経て、同大学院社会学研究科修士課程を修了。1973年以来、度々、ハーヴァード大学研究員を務める。現在、早稲田大学名誉教授、日本精神衛生学会顧問、ニッポン放送系列ラジオ番組「テレフォン人生相談」は半世紀ものあいだレギュラーパーソナリティを務める。

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