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テスラが「広告費ゼロ・ディーラー無し」でも売れる理由

山本康正(ベンチャーキャピタリスト)

2020年12月12日 公開 2024年12月16日 更新

テスラが「広告費ゼロ・ディーラー無し」でも売れる理由

電気自動車のみならず、太陽光発電にも参入するなど、ひたすら異彩を放つテスラ。同社はここまで大きく支持されているのに、実はディーラーがおらず、さらに広告費も一切かけていないという。

テスラはブランディングはすでにテスラを乗っているユーザーの動向ならびに口コミだと捉えているのです――新著『2025年を制覇する破壊的企業』を上梓したベンチャーキャピタリストの山本 康正氏はいう。なぜこれでビジネスが成り立つのか?同氏に聞いた。

※本稿は、山本康正(著)『2025年を制覇する破壊的企業』(SB新書)より、内容を一部抜粋・編集してものです。

 

テスラの購入はオンラインのみ

テスラが従来の自動車メーカーと大きく異なります。テスラでは、まずディーラーがほぼ存在しません。ショールームのような場はありますが、そこはあくまで車両やサービスを紹介しているだけで、購入は基本オンラインのみでの受け付けとなっています。

広告費も一切かけていません。雑誌でも、テレビコマーシャルでも、テスラが宣伝しているのを見たことはありません。ブランディングはすでにテスラを乗っているユーザーの動向ならびに口コミだと捉えているからです。

先述したとおり、ハリウッドセレブなどがこぞって乗っていることが、まさに宣伝になっています。

ブランディングという観点であえて取り上げるとすれば、これは利用者の利便性を考えてのサービスだと思いますが、充電ステーションや駐車スペースが、使いやすい場所に設けられています。

電気自動車が普及しない理由の一つに、充電ステーションの不備があります。これまで同事業は、国や電力会社が行っていましたし、誰もがそれが当たり前だと思っていました。

ところがテスラは、自前で充電ステーションを設置していきました。それも大手ショッピングモールの入り口付近、スターバックス、高速道路のそば、など。利用者があったら便利だと思う場所に、次々と開設していきました。

さらに初期ユーザーは充電料金が無料となるサービスまで提供。有料になってからも、フル充電で500円ほどと、ガソリン車と比べると圧倒的に燃料代が安いです。駐車スペースには動画などで快適に車内で過ごせるよう無線LANも備え付ける構想が出ています。

 

徹底したユーザーファーストにこだわる

広告もディーラーも存在しないテスラですが、ユーザーとの接点やコミュニケーションにおいては、かなり重視、注力しています。ソフトウェアのアップデートの際には必ずメッセージが届きますし、そのほか定期的に連絡が来ます。

ソフトウェアのアップデートに関するメッセージでは、次のようなものもありました。

シカゴを大寒波が襲ったときです。電気自動車は寒さに弱いですから、テスラは事前に気象予報を察知し、対応策を準備。大寒波が来ても、充電効率が落ちないシステムを開発。

そのシステムをアップデートした方がいいですよと、該当地域のユーザーに発信したのです。

半導体を交換するような大掛かりなメンテナンスにおいても、ディーラーはありませんが、対応・コミュニケーションはスムーズです。交換が必要なユーザーに、まずメッセージを送ります。

ユーザーは都合のよい日と時間帯を連絡すれば、その日時にテスラのサービスマンが直接、本人の元に来てくれます。そしてその場で、交換してくれる。あるいは他の修理など、その場で直らないと判断した場合でも、持ち帰るなどの対応をしてくれます。

こちらから連絡を取る場合のコミュニケーション方法もユニークです。ウーバーのようなアプリが備わっていて、どこにサービスマンが常駐しているかひと目で分かり、利用者は近くのサービスマンを呼べばすぐに来てくれます。

代理店が存在することで、当然ですがその代理店で働く人、事業所というハード維持のために、それなりの費用がかかります。特に大手自動車メーカーでは、ともすると代理店の方が力を持っている場合もあります。

テスラではそこにかかる費用や労力をカットし、その分をユーザー体験の充実に充てているのです。

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テスラのユニークな4つのソフトウェア

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