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"祝日"を増やしてきた政府の思惑…日本人の「労働時間減少」のからくり

山岡信幸(東進ハイスクール地理講師)

2021年07月22日 公開 2021年07月27日 更新

 

"日本の祝日"はなぜ有休休暇より多いのか

ところで、余暇活動に欠かせない労働者の休日日数のデータを見ると、日本の特徴がよくわかります。完全週休二日制が達成され、どの国も週休日が104日あります。

しかし、日本の年次有給休暇取得日数は明らかに少ないのです。制度上は約18日分あり、それでもヨーロッパ諸国よりは少ないのですが、取得日数はさらにその半分。

一方で、法定休日=祝日はイギリスの倍以上とたくさんあります。敗戦直後の1948年に「国民の祝日に関する法律」が制定された時点では祝日は"ヨーロッパ並み"の9日でした。

ところが、働き過ぎの批判を避けるため、自分では有給休暇を取ることが難しい労働者の代わりに、国が法律改正で休みを増やしていったのです。予備校の夏期講習会で忙しかった私の知らない間に、「海の日」や「山の日」まで作られています。

山岡信幸

 

上の表以外にも、祝日が日曜日と重なった時の振替休日(1973年〜)や、祝日を月曜に移動させて3連休にする「ハッピーマンデー」制度(2000年〜)もあります。

また、2020年には東京オリンピックの開会式・閉会式に合わせて3つの祝日の名称や日付が変わりましたが、結局開催延期で空振りになりました。まぁ、コロナ禍でそれどころではなかったのですが…。

山岡信幸

日本では、有給休暇の自主的な取得が少なく、お盆や年末年始の休暇の多くは帰省旅行に費やされます。ゴールデンウィークなどの「お上」に頂戴した細切れの休日に集中する観光旅行では、少ない日数で観光地を巡る「短期周遊型」が中心になります。

一方、ヨーロッパでは余暇活動が早くから定着していました。別荘やホテルに長期にわたって滞在し、余暇を楽しみます。以前は上流階級に限られていたバカンスの楽しみが一般市民にも普及したのです。

フランスでは、すでに1936年、年に2週間の有給休暇が法制化され、現在は年5週間(!)に拡大されています。もともと休みの土日(週休日)を除いて、25日分の有給休暇を取得するのです。「フランス人はバカンスのために働く」というくらいですから、日本人のように企業に「遠慮」して半分しか消化しないなんてことはありません。

お上に与えられた祝日やわずかな年休ではなく、自分で好きなときに一カ月近いまとまったバカンスが取れるようになって初めて、政府が推進するワークライフランスも達成されるのではないのでしょうか。

 

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