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世帯年収の中央値は437万円…昭和・平成型「正社員」の限界に苦しむ女性社員

前川孝雄(FeelWorks代表取締役/青山学院大学兼任講師)

2021年09月27日 公開 2024年12月16日 更新

世帯年収の中央値は437万円…昭和・平成型「正社員」の限界に苦しむ女性社員

元『リクナビ』編集長として学生の就職活動を支援するなかで、就職したものの働きがいを見いだせずメンタル不調、早期退職を余儀なくされた若手社会人も多く目の当たりにしてきた前川孝雄氏。

その経験から企業側のマネジメントに大きな課題があると気づき起業。管理職自体もプレイングマネージャーであることを強いられる現状にも寄り添いながら、400社以上で人材育成を手がけてきた。

そんな前川氏が自らが出版社となり上梓した新著『人を活かす経営の新常識』では、「雇用を守る」経営の限界を指摘しつつ、人を大切に育て活かす会社になるための条件を示している。本稿では同書より「若手社員の価値観の変化」に触れた一節を紹介する。

※本稿は前川孝雄著『人を活かす経営の新常識』(株式会社FeelWorks刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

多くの女性が正規雇用を離れる問題の本質とは

官民を挙げて多様な女性活躍推進施策が講じられているにも関わらず、多くの女性が出産・育児期に今なお正規雇用の"安定待遇"を手放すのはなぜでしょうか。

先に結論をいえば、政府や企業が女性の「働きやすさ」の整備には注力してきたものの、より大切な「働きがい」への取り組みが疎かだったからというのが、私の見立てです。

もちろん、未だに両立支援施策が不十分な企業や、個々の家庭環境の課題もあるでしょう。しかし、いかに産休・育休、短時間勤務、在宅勤務など働きやすい環境が整っても、仕事と育児・家事を両立させるための負荷は相当に大きいものです。

それを乗り越えてまでも、正社員として働き続けたいと考える状況にないことが本質課題なのではないでしょうか。つまり、「そこまで無理して正社員にこだわる気持ちになれない」ということです。

 

昭和に生まれ平成に変われなかった「正社員」という仕組みの限界

多くの日本企業の正社員は、メンバーシップ型の職場で、いまだ会社都合による残業、出張、異動、転勤などの負担を強いられているのが現状です。

非正規雇用者の労働時間は減少傾向ですが、正社員の労働時間削減はそこまで進んでいません。強制的に残業規制する企業も増えていますが、そうした企業ほど仕事の持ち帰りが多いという調査結果もあります。

こうした環境下、無意識にせよ、"無理のきかない女性には重要な仕事を任せられない"ととらえる「ガラスの天井」がまだ存在している場合が多いのです。

日本の終身雇用・年功序列の正社員という仕組みは、昭和に生まれ戦後の高度経済成長期までは有効でした。しかしバブル経済崩壊後、平成の30年間に経済再生の機動力にはなりませんでした。

世界も時代も劇的に変化し続けるなか、メンバーとなった正社員の雇用を守ることに力点を置いたため、産業の新陳代謝やビジネスモデルの変革が進まなかったからです。

そして日本は世界的な影響力もどんどん失い、働く人たちの能力開発も進まず、給与も下がり続けてきました。1998年に世帯年収の中央値は544万円でしたが、2009年には438万円まで激減しています。

2019年時点でも、437万円という値です(厚生労働省2020 年家計調査)。一方で税や社会保険料負担は増加し続け、消費税まで引き上げられたため、生活に苦しむ人たちも増えています。

ここを襲ったコロナ禍でとどめを刺されて、そうした正社員メンバーですら雇用を守るどころか、倒産・廃業せざるをえない企業も急増しています。

こうした課題山積の正社員の枠組みに、ただ女性を押し込めようとすることは、失われた30年の教訓を活かせない時代錯誤ともいえる施策なのではないでしょうか。

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安定待遇の正社員か、柔軟な働き方ができる非正規雇用かの二者択一

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