営業トーク、上司との会話などにおいて「5分でも時間をもらえませんか?」と話しかけたことのあるビジネスパーソンは多いのではないだろうか。本稿では、短い時間から信頼を築き上げ、一生の人脈をつくる話し方を紹介する。
※本稿は、小宮一慶著『たった5分で「あなたと一生仕事をしたい」と思われる話し方』より一部抜粋・編集したものです。
ビジネスを成功させる「5分」
こんなやりとりを、ビジネスシーンで見掛けることがあります。「少しお時間ありませんか?」と上司におうかがいを立てる部下。または飛び込み先で、「ご挨拶だけでもさせていただけませんか」と頭を下げる営業担当者。
あなた自身、同じようなセリフを口にしたことがきっとあるはずです。逆に、部下や取引先の営業担当者からそう切り出された経験もあると思います。
このような場合に与えられる時間は、どのくらいの長さでしょう。運がよければ30分・1時間ですが、5分・10分とごくごく短い時間しか与えられないことのほうが多いのではないのでしょうか。
しかし、そのほんのわずかな時間から、いったいどれほどのビジネスチャンスが生まれることでしょう。一流のビジネスパーソンなら、たった5分でも充分。初対面の相手に「あなたと一生仕事をしたい」と言わせることさえ、可能なのです。
ビジネスをするにはあまりに短すぎるように思える5分間ですが、その5分という時間をさらに細かく区切り、戦略を立てて会話に臨むことで、思わぬ広がりを見せていきます。そもそも会話とは、常に小さな判断を私たちに強いてくるものです。
「この人とビジネスを成立させるにはどう話せばよいのか」
「この人の言っていることは本当なのだろうか」
このように私たちは、ひと言ひと言に込められた意味を吟味し、相手の反応をリアルタイムで予測しながら、会話を展開していきます。ひとつ判断を誤れば、信頼を得るどころか得意先を失う危険もあります。
5分といわずじっくり時間をかけて話をしたいと、誰もがそう思うことでしょう。しかし、ビジネスの現場は、必ずしも充分な時間を私たちに与えてはくれません。
刻々と状況が変わる会話の現場で、瞬間的に最善の一手を放つ。それができるだけの判断力を磨かなければならないのです。では、判断力の有無はどこで決まるのでしょうか?
成功者が持つ判断の「基準」
だからこそ、まずは本書でよい会話の「基準」を身につけていただきたいと思います。判断基準をもたない人は、会話の善し悪しをジャッジできません。
空気の読めないひと言を発してしまったり、タイミングを逸してせっかくのビジネスチャンスを台無しにしたりするのも、明確な判断基準に従って行動しないからです。
また、判断基準をもたないと、意思決定も覚束ないものです。例えば、私が判断に苦しむのは、家族とフランス料理屋に行った時などです。メニューを渡されても、何を注文したらいいのか頭を抱えてしまうのです。
どれも美味しそう。私がメニューを選ぶ基準をもたないから、ひとつに決められない。美味しそうな料理を目の前にしても「どれでもいい......」と言うしかありません。
しかし、私の本職である経営コンサルティングにおいては、判断は常に明快。迷うことはまずありえません。それは、意思決定の基準をはっきりともっているからにはかなりません。