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Amazonはなぜ成長できた? 意外に“普遍的”なジェフ・ベゾスの考え方

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年02月15日 公開 2022年02月15日 更新

大賀康史

ビジネス書を中心に1冊10分で読める本の要約をお届けしているサービス「flier(フライヤー)」(https://www.flierinc.com/)。
こちらで紹介している本の中から、特にワンランク上のビジネスパーソンを目指す方に読んでほしい一冊を、CEOの大賀康史がチョイスします。

今回、紹介するのは『Invent & Wander』(ジェフ・ベゾス著、ウォルター・アイザックソン序文、関美和訳、ダイヤモンド社)。

この本がビジネスパーソンにとってどう重要なのか。何を学ぶべきなのか。詳細に解説する。

 

ジェフ・ベゾスという人物

大賀康史

「長期(ロングターム)がすべて」

アマゾンの創業者であるベゾスの有名な言葉のうち、最もアマゾンという会社を象徴しているものだと感じます。Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をつなげたGAFAという言葉は、覇権国家アメリカを代表するIT企業群を表します。その中でも最も打ち破ることが難しいと考えられる会社がアマゾンでしょう。

本書はそのジェフ・ベゾスが毎年4月に株主に送る「株主への手紙」と、本人によるインタビュー内容と講演の原稿に加え、『スティーブ・ジョブズ(Ⅰ、Ⅱ)』などの著作で有名なウォルター・アイザックソンが序文を寄せた構成になっています。ベゾス自らの言葉による初めての本ということもあって、世界的に注目を集めている一冊です。

ベゾスを象徴するような実績をいくつか紹介します。アマゾン・プライムに加入しているのは、アメリカの全世帯の半分以上です。2018年のアマゾンの配送個数はなんと100億個で、地球の人口よりも多いです。アマゾンの経営に加えて、ブルーオリジンという宇宙開発企業を設立。世界を代表するメディアの1つであるワシントン・ポストの社主にもなっています。

ジェフ・ベゾスの生い立ちを少し紹介します。ベゾスの母親と生物学上の父親が結婚していたのはほんの短い間だけでした。母親はベゾスが4歳のときにキューバからの難民であるミゲル・ベゾスと再婚します。ジェフ・ベゾスはミゲルを生涯の父親と考えるようになります。

少年時代のベゾスは読書が大好きな子でした。成長とともに、ゲーム、電子機器、機械へと興味が広がっていきました。プリンストン大学に進学して、理論物理学者を志します。そして、ベゾスにも解法が思い浮かばない難しい偏微分方程式を暗算で解く友人の才能を目の当たりにして、自分がその道の第一人者になれないことを悟りました。すぐに専攻を電気工学とコンピュータサイエンスに変えて、その後、金融機関に就職しました。

ヘッジファンドで働いていた時にアマゾンのアイデアを着想した先のストーリーは有名なものです。ガレージを仕事場にして、木製のドア板3枚を使ってDIYで机を作り、コンピュータを3台置いて、アマゾン・ドット・コムを始めました。

 

「長期(ロングターム)がすべて」

アマゾンはサービス開始直後から爆発的に拡大しました。その後の躍進は周知の通りです。ベゾスが放つ言葉の中でもとりわけ迫力があるのが、冒頭に記載した「長期(ロングターム)がすべて」。もう1つは、「お客様を中心に考える」でしょうか。この2つの言葉は、アマゾンの社風を象徴するものです。

反対に、ベゾスが気にしないものは、決算の表面上の見栄えや、短期志向の投資家です。本全体を通して思うのは、ベゾスの合理的思考であり、奇をてらわない愚直さであり、王道を貫いているゆえの隙のなさです。ベゾスの脳内時計の時間軸は、人のものよりもずっと長いのかもしれません。

 

「後戻りできるドア」と「後戻りできないドア」

ベゾスによる話で印象的なものに、「後戻りできるドア」「後戻りできないドア」があります。ほとんどの意思決定は「後戻りできるドア」の前で行われていて、やってみてダメだったら元に戻せるものだといいます。そのドアの前にいる場合は、意思決定を素早く行い、やってみた後に振り返って、次の方針を決めればよい、ということになります。

一方で、仕事をしていると「後戻りできないドア」の前に立たされることもあります。一度はじめると後には引き返せないものです。そのドアの前では、慎重に判断することをベゾスは薦めています。

少し本の内容から離れますが、「後戻りできるドア」と「後戻りできないドア」の定義は人それぞれです。例えば、異動や転職や起業がどちらに当てはまるかはその人や環境によって異なります。新規事業の着手についても、どちらに当てはまるのかは判断が分かれそうです。

ベゾスは大胆な意思決定を何度も行っているように見えますが、おそらくそのほとんどを「後戻りできるドア」の前でしていると、本人は考えているのではないでしょうか。リスク許容度が極めて高く、たとえ失敗してもリカバリーできるという強い自信を持った人物のようにも感じます。

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アマゾンを支える3本の柱

著者紹介

フライヤー(flier)

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