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「クレジットカード、半導体も…」GAFAが狙う次のターゲットは?

山本康正(ベンチャーキャピタリスト)

2020年12月16日 公開 2024年12月16日 更新

「クレジットカード、半導体も…」GAFAが狙う次のターゲットは?

2025年の未来では、GAFAがカード・金融会社を飲み込んでいるかもしれない。物理的なクレジットカードの需要が減り、電子決済が当たり前になりつつあるからだ。

カード会社や金融会社は、当然、このような未来を警戒しています。しかし良い対処法が見つからない。正確には対処法を実行するのを躊躇するでしょう――新著『2025年を制覇する破壊的企業』を上梓したベンチャーキャピタリストの山本康正氏はいう。どういうことか。同氏に聞いた。

 

カード会社が飲み込まれる

5年後は、もはや店舗にそれなりの価格がするカード読み取り機を設置する時代ではありません。ですので、クレジットカードの需要は急速に減っていくでしょう。

実際、コンシューマにクレジットカードとスマートフォンどちらを手放してもよいかを尋ねたら、ほとんどの人がクレジットカードと答えるでしょう。スマートフォンがあれば、決済もできるからです。

カード会社や金融会社は、このような未来を警戒しているものの、対処法を実行するのを躊躇するでしょう。現在利益の出ているビジネスモデルを、崩したくないからです。

カード会社の利益の源はカードの決済手数料です。店ごとで異なりますが、大抵4〜6%。1万円をカード決済した場合、自動的に400〜600円が利益として入る仕組みです。

このようなビジネスを、ビザ、マスター、アメックスのカード会社大手は、世界中で展開しています。ですから今まさにこの瞬間も、カード会社はものすごい額の手数料を得ているわけです。

実際、カード会社が手数料で得る額は、年間約2兆円。ビザの時価総額は約47兆円、マスターカードは約34兆円。いかに大きなマーケットであるかが分かります。

カード会社が動けない理由がもう1つあります。GAFAが得意とするデータ活用による、eコマースや広告事業といったビジネスを、手がけたくてもなかなか内製できないことです。同事業に強いデータサイエンティストなどの人材ならびに、ノウハウをなかなかとりこめていないからです。

ただGAFAと同じように、同領域に強いベンチャーなどを買収して、参入する可能性はあるでしょう。決済手数料を下げてスマホ決済に対抗するよりは、こちらの動きの方が可能性は高いと私は見ています。

実際、マスターカードは動きました。AppleCard(アップルカード)です。GAFAに飲み込まれる前にアップルと組むことで、同業のカード会社に対抗しようとしたのです。

金融業務においては、同分野でノウハウを持ち、シェアを拡大したいゴールドマン・サックスが協力しています。マスターカードもゴールドマン・サックスも英断をしたと思います。

アップルがマスターカードやゴールドマン・サックスと連携したような動きは、他のGAFAでも見られます。グーグルです。グーグルに限らず、GAFAをはじめとするネット決済に強いベンチャーが、金融機関と連携する。このような話題は、最近多く出ています。

会社の規模や歴史ではカード会社の方が勝っているかもしれませんが、テクノロジーにおいては、圧倒的にGAFAをはじめとするネット企業が強いです。その結果、GAFAがカード・金融会社を飲み込むような流れは今後も続くでしょう。

ビザカードはオリンピックやFIFAワールドカップといった世界的なイベントのスポンサーでもありますが、この先の未来では、その筆頭スポンサーがGAFAに変わっている、このような未来も、十分考えられるシナリオです。実際、東京オリンピックのスポンサーにはグーグルが入っています。

金融だけではありません。物流、エンターテインメント、ヘルスケア、モビリティなど。旧来のビジネスに固執している大企業は、GAFAならびにデータ領域で強いベンチャーに、次々と飲み込まれていきます。

 

アップルが他業界に参入するのは、すべてiPhoneに囲い込むため

先ほど紹介したアップルカード、マスターカードと連携しているので、クレジットカードとして利用できるのはもちろん、アップルカードならではのサービスや便利機能が多く盛り込まれており、私も早速使っていますが、とても便利。これから大いに広がると感じています。

まず便利なのは、アップルペイとの連携機能です。通常アップルペイを利用した際の値引率は1%ですが、アップルカードをiPhoneに内蔵したチップを経由して使えば値引率が2%に。

さらにアップルと提携している企業、例えば、ウーバーの利用時に使えば3%引きに。同じく、アップル製品の購入利用でも3%の値引きとなります。

iPhoneのアプリ、ウォレットとも連携します。アップルカードの利用履歴が会計アプリを使うことなく、自動で統合。しかも一般的な会計アプリとは異なり、ウォレットは、食事代、交通費など、利用用途により色分け表示されますから、直感的に何にお金を使ったのかが分かりやすくなっています。

そしてさすがはデザイン力に長けたアップル。一般的なクレジットカードとは異なり、クールでスタイリッシュなカードに仕上がっています。カード番号は記載されていませんし、素材はチタン製で、高級感もあります。

そしてこれはさすがに驚きましたが、カード会社のロゴまでアップルのデザインに合う仕様になっています。先ほどお伝えしたゴールドマン・サックスはトレンドに敏感で、最近はテクノロジーカンパニーが金融サービスに進出する際の請負人として、黒子に徹しながら粛々とビジネスを手がけています。

ところでなぜ、ハードウェアカンパニーとの印象が強いアップルが、金融サービスに参入したのか。そのことを紐解いていくと、アップルの今後の戦略が明確に浮かび上がってきます。iPhoneへの囲い込みです。

アップルはもともと、パソコンを開発しているハードウェアカンパニーでした。それがiPhoneの登場により、iPhoneを中心とした会社にがらりと変わりました。実際、現在のアップルの利益の半分以上はiPhone関連です。

iPhoneの登場でアップルの時価総額は一時期200兆円を超えました。しかしここにきて、成長が鈍化しています。OPPO(オッポ)やHUAWEI(ファーウェイ)といった中国企業の台頭です。彼らはiPhoneの半額程度の価格で高性能スマートフォンを販売、中国人ユーザーはiPhoneから乗り換える動きが見られます。

そこでつなぎ止めるために役立つのがアップルカードです。しかもアップルらしい、他の企業にはないクールで洗練されたカードに仕上げました。そしてこのデザイン力というブランディングこそ、アップルの強みでもあります。

これは私の推測ですが、アップルは製品を開発する際、単なるデバイスとしてではなく、所有すること、使うことで利用者の生活が豊かになるのを実感する。このようなビジョンを持ち、開発に臨んでいると感じています。

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アップルは人の五感すべてを狙っている

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