転職しても何も変わらない人もいれば、転職し仕事もプライベートもどんどんうまくいく人もいる。転職が当たり前になった時代になったとはいえ、新しい道へ踏み出すのは勇気が要るもの。
新刊『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』の著者である佐野創太さんは、転職エージェントとして転職サポートと、求人サイトの新規事業の立ち上げをした経験がある。その後、日本初・唯一の「退職学(R)(resignology)」の研究家として1000名以上の20代〜50代の「会社辞めようかな」からはじまる働き方相談に乗ってきた。
佐野さんは同書にて「会社も上司も結局、ガチャ。」と断言し、それでも運の要素に左右される転職の世界で「転職してうまくいく人、いかない人」を分ける要素を見出したと語る。本稿では同書よりその違いに触れた一節を抜粋し紹介する。
※本稿は佐野創太著『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版刊)より一部抜粋・編集したものです。
「会社を辞める」を目的にすると負のループにはまる
正直にお話ししますと、「会社辞めたい」というニーズに応えるなら「内定をとること」を目的にした方が手っ取り早いです。実際、多くの転職エージェントは「内定をとって転職してもらう」ことを目的にしています。それは転職エージェントが働く人の事情を考えていないという意味ではありません。転職エージェントは私たちを転職という目的地に運んでくれる高性能の飛行機です。
しかし、「会社を辞めること」を一番の目的に転職活動した人が転職後しばらくして、こんな悩みを「また」抱えて相談にくるシーンを幾度となく見てきました。
「自分のやり方を押し付ける上司の考え方や価値観についていけません」
「この仕事をしていても成長できるとは思えないし、ずっとやりたいとも思えません」
「大変な仕事の割には給料が低くて、自分を安売りしているような気持ちになります」
そして、仕事で感じるモヤモヤは、生活にも少しずつ忍び寄ってしまいます。
「休日に自己分析や自己投資をしてるのに〝このままでいいの?〟が止まりません」
「友人の転職や結婚報告のSNSを見ると、取り残されているような気になっちゃいます」
「寝る前にスマホをぼーっと眺めて"早く寝ればよかった"と後悔するのをやめたいです」
この人たちは口を揃えてこう言います。
「転職前と変わっていない気がします」
転職「だけ」うまくいった人は、転職前の不満がまた追いかけてくるかのようです。
いわば、モヤモヤし続ける負のループにはまってしまっています。
これが、「会社辞めたい」ループです。
皮肉にも、「会社を辞める」を目的にするからこそ、「会社辞めたい」ループに陥ってしまうのです。それはいわば、目的地を定めずに飛行機を操縦して、着陸してから「行きたいところはここじゃなかった」と嘆いている状態です。
転職「だけ」うまくいってもモヤモヤはおさまらない
一方で、転職後「も」うまくいく人は、転職前の不満から逃れ、スッキリする正のサイクルに入っていきます。
「新しい仕事の勉強が楽しいです。前職では終業後に仕事のことは考えないようにしていたのに、新しい職場では上司や同僚との会議で発言回数が増えました。転職前は"早く終われ"だったのに業務改善チームのリーダーに立候補しました。"会社が好き"なんて綺麗事だと思っていたのに」
転職後「も」うまくいく人は、何より自分を転職前より好きになれている実感も持っています。
「大好きだったピアノの教室に通い直しています。3ヶ月前の休日は寝てばかりでした。自信と余裕ができてきたので、彼氏と今後のことを話し合えるようになっています。私にとっては家族は仕事以上に大切なものだとわかって働き方を変えたら、仕事も生活も楽しくなりました」
転職後「も」うまくいった人はこのように話してくれます。
「勇気を出して転職して、本当によかったです」
このように転職を成功させたとしても、転職「だけ」うまくいってモヤモヤしはじめて、「会社辞めたい」ループに陥る人と、転職後「も」うまくいってスッキリしている人にわかれます。
それは、転職しても何も変わらない人と、転職して自分をより好きになることで人生が好転していく人、と言い換えられます。
では、両者の違いはどこにあるのでしょうか?
その違いは、転職活動に"本音で挑んでいるかどうか"です。
自分の正直な気持ちにフタをしても、内定をとることはできます。頭のいい人ほど、ロジカルに話ができるので、本音を隠したまま内定はとることができます。
しかし、仮に内定がとれて転職できたとしても、また「会社辞めようかな……」とモヤモヤしはじめてしまうのです。