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『冬ソナ』時代から一変?「韓国ドラマ=恋愛」が古いと言い切れるワケ

渥美志保(映画ライター、コラムニスト)

2022年03月24日 公開

 

韓ドラファンが「隠れキリシタン」だった、「冬ソナ」時代

そんな苦節の数年が過ぎた2003年、あの『冬ソナ』が日本にやってきたのだ。そもそもドラマが大好きで映画を見始めた私は、まんまと『冬ソナ』にハマった。ヨン様演じるミニョン独特のマフラー2本使いの「ミニョン巻き」を真似たりなんかもした。

だが真の魅力は物語だと思う。山口百恵の「赤いシリーズ」かと見まごう出生の秘密と記憶喪失、絶妙にすれ違う恋する二人は実は兄妹…?とか、何しろストーリーテリングが抜群だったのだ。

私は日本で見られる韓国ドラマを片っ端から見て、今度は「韓国ドラマが面白いんだよ!」と周囲に広報し始めた。だがやっぱり反応はめちゃめちゃ低反発で、かつ「韓国ドラマ好き=ヨン様ファンのオバサン」とふわっと嘲笑するような空気が漂った。

データ的裏付けもない「私調べ」で恐縮だが、こうした偏見はK-POP第2世代――BigBang、少女時代、KARAなど――に若い世代がハマり始めるまで続いたように思う。それ以前の韓国カルチャーのファンはほぼ「隠れキリシタン」状態で、私の回りには「ファンだということを周囲には隠している」という友人も結構いた。

そんな20年を過ごしてきたからこそ、今回のブームにもちょっと懐疑的だった。つまり「ヨン様ブーム」「グンちゃんブーム(チャン・グンソク『美男(イケメン)ですね』)」がそうだったように、多くの人が主演のイケメン俳優ヒョンビンの作品を掘るだけで、韓国ドラマそのもののファンにはなってくれないんだろうな、一般には広まらないんだろうな、と考えていたのだ。

昨年の夏ごろ、ウェブの女性媒体で韓国ドラマの連載がはじまったのだが、その時点ではまさにそういう人称だった。実際、タイトルに「ヒョンビン」「愛の不時着」がある記事は桁違いのページビューを叩きだしていた。

「えっ?!」と思ったのは、連載が半年を過ぎた頃に書いた、「ヒョンビン」もイケメンもない、地味だけどいい作品ばかりを揃えた記事が、爆発的な超大ヒットを記録したのだ。夏に書いた「桁違いのヒョンビン記事」の4倍以上のページビューを記録したのである。

 

「イケメン&恋愛だけ」のワケがない、韓国ドラマの魅力

一過性のブームではないと確信した私の次の(勝手な)使命は、「韓国ドラマ=イケメン&恋愛」の偏見から解き放つことだ。っていうかそう決めた。もちろん私だって韓国ドラマに出てくるイケメンも、可愛い女の子も大好きだ。でもそれと同じくらい、コメディからシリアスまで変幻自在に演じ作品を支える大人の俳優たち、個性派の俳優たちが大好きだし、何よりもドラマそのものが大好きなのだ。

私の人生が恋愛だけでは語れないのと同じで、ドラマにもそれ以外にも語られるべき物語が無数にある。特に韓国ドラマの作り手は本当に自由でチャレンジングで、新しい領域にガンガンと突っ込んでゆく。

そういう環境だからこそ、世界的に大ブームとなった『イカゲーム』はもちろん、『ヴィンチェンツォ』『D.P.』『賢い医師生活』『キングダム』などの面白いドラマが次々と生まれているのだと思う。「『愛の不時着』のヒョンビンが理想」と思っている人も、もっと知ればもっと好きなキャラクターに出会えるに違いない。

そしてできたら作品の垣間見える韓国の社会にも注目してくれたらと思う。社会問題を時にがっつりと、時にそこはかとなくにドラマに織り込む韓国ドラマは、その社会的背景を知ればもっと立体的に、もっと面白く見てもらえると思う。そしてせっかくならば、お隣の国・韓国そのものを知り、好きになってくれたらなと思うのだ。

「隠れキリシタン」の時代を思えば、今は本当に夢のような状況だ。多くのケーブルテレビ局では様々な韓国ドラマが放送されているし、Netflixでは韓国の放送とほぼ同じタイミングで見られるドラマもある。旧作であれば、UNEXTやアマゾンプライムなどの有料ストリーミングチャンネルはもとより、GYAOやABEMA TVをこまめにチェックすれば、無料で見られる作品もいくつもある。

私の20年に及ぶ草の根広報活動が功を奏したわけでもなんでもないのだが、この楽しさを共有できる人が増えたことが単純に嬉しい。充実の韓国ドラマライフを楽しんでいただけたらと思う。

 

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