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堀江貴文「大人を演じる生き方はごめんだ」

堀江貴文(実業家)

2022年03月28日 公開 2024年12月16日 更新

堀江貴文「大人を演じる生き方はごめんだ」

変化の激しいこの時代。大切なのは「頭の良さ」より「ハートの強さ」。日本のIT業界を牽引してきたサイバーエージェント代表取締役・藤田晋氏はこう語る。

同じく長きにわたりIT業界を発展させてきた、"ホリエモン"こと堀江貴文氏。藤田氏と堀江氏はともに事業をしたこともある"盟友同士"。そんな二人が書籍『心を鍛える』を通して、初めて「生い立ち」「起業」「キャリア」「未来のこと」を語り合った。

ライブドア事件を経て、堀江氏が経営者として、一人の人間として得た教訓とは。(写真:HARUKI)

※本稿は藤田晋,堀江貴文共著『心を鍛える』(KADOKAWA)より抜粋・編集したものです。

 

ライブドア事件で実感した「感情の面倒くささ」

ライブドア事件を知らない若い世代も多いだろうから、ざっくりと振り返っておこう。33歳のとき、つまり2006年1月16 日、証券取引法違反容疑で、六本木ヒルズのライブドア本社や僕の自宅などに、東京地検特捜部の家宅捜索が入り、1週間後に逮捕された。

その後、4月27日に保釈が認められる。そして9月4日から26回もの公判を経て、2007年3月16日に実刑判決を言い渡される。その後、控訴するも2008年に東京高裁が棄却。上告するも2011年4月に最高裁に棄却され、懲役2年6ヶ月の実刑判決が確定した。

時が流れて38 歳。2011年6月20日、僕は東京拘置所に収監された。その後、長野刑務所に移送され、2013年3月27日に仮釈放となる。同年11月10日、任期満了...。つまり、働き盛りであるはずの30代を中心に、実に7年余りもの年月が奪われたのである。それを今さら愚痴るつもりなんてない。

ただ多くの人に、僕が得た教訓をお伝えできればと思う次第だ。

まずお話ししたいのは、人の感情の「面倒くささ」についてである。そもそもライブドア事件の発端は、「側近」と思い込んでいた部下が、検察へ密告したことだった。後から聞こえてきたことだが、僕が飯に誘わなくなったことが理由らしい。もちろん、その真偽はわからないし、確かめる気力もない。

しかし、「部下に対して、もっと情をかけて接していたら、ライブドア事件なんて騒ぎは起こらなかったのではないか」という気はする。

そういった感情のケア、つまり気遣いにかけては、藤田晋さんは天才的だ。生来の性格の良さだろう。周囲への気遣いがナチュラルにできてしまうのだと思う。他の企業でも、人徳を集めていたり、「人たらし」と称されたりする経営者を見かけることがある。部下の相談に乗ったり、士気を高めるためにイベントを開いたり、社内制度を充実させたり...。

そういう態度や施策が人の心をつかむというのは、当然わかる。でも僕には、それができない。というか、そっちの方向にまったく興味が持てない。性分だから仕方がないだろう。どこまでいっても、僕は会社の人間とコミュニケーションを楽しむことの意味が理解できないのだ。

たとえば、部下が悩みを抱えていると知ったとき、「一緒に飲みに行って相談に乗る」というような方法が、低レベルの話に思えてならないのだ(そこは、世間が僕に抱いているドライなイメージそのまんまと思ってもらっていい)。

もちろん、それが一般社会では奨励される経営者の姿だと頭ではわかっている。つまり、人の「感情」とは非常に面倒くさいものなのだ。

僕自身は「好きな仕事にのめり込めればハッピー」という性質なので、従業員のケアやフォローなどに回ることが苦痛で仕方がない。「みんなも純粋に仕事を楽しんでくれればいいのに、なぜそうならないのか?」と不思議にすら思ってしまう。

そんな人間は、人を雇ったりせず、一匹狼で頑張るのが正解なのかもしれない。面倒なのは「部下の感情」だけじゃない。「世間一般の感情」についても、面倒くさいという思いしかない。

ライブドア事件の直後。「村上ファンドの村上世彰さんみたいに、世間にきちんと詫びを入れていたら、あなたも同情を集めて許してもらえたんじゃないか」とよく言われた。確かに、その通りかもしれない。

村上さんは、ニッポン放送株についてインサイダー取引をしていたということで逮捕された。控訴審で、村上さんは3年の執行猶予つきの判決だった。一方、僕は懲役2年6ヶ月の実刑判決。この差は、僕が反省の態度を見せなかったからと思えてならない。無論、量刑が恣意的なものであっていいはずがないのだが...。

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「大人になれよ」という同調圧力

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