極めることは膨大なトライ&エラーの繰り返し
――脳内でスパイスを調合し、レシピを書くまでにスパイスカレーを極められたわけですが、何かを極めるために必要なことは何だと思いますか?
【カリー子】何かを極めるというのは、たくさんある道をひとつにすること。1本の道を選ぶのであれば、失敗した道にバツをつけて、徐々に絞っていくことだと思います。
その際に注目すべきは"変数"、つまり変えられる数です。「失敗の原因を探るときに、変数を同時に2個以上変えてはいけない」というのが私の持論です。
例えば、玉ねぎが多かったことが失敗の原因だろうと思っているときに、「じゃ、玉ねぎを減らそう、ついでにターメリックも増やしてみよう」と2つも変数を変えてしまうと、次に変化が起きたときに、果たして玉ねぎを減らしたことが原因なのか、それともターメリックだったのか、結局何が原因かわからなくなってしまう。玉ねぎを減らした方がいいと思ったときは、玉ねぎを減らすことだけにとどめるべき。
何かを極めるには、たくさんある変数の中から1つだけを動かして実験していくしかありません。そのためには、ものすごい数の試行回数が必要になりますが、ものすごいスピードで繰り返せばいいだけ。科学の実験なども、そのくり返しなのだと思います。変数を1個ずらしてみてどうか、違ったらバツ、よかったら採択、このプロセスを無限にくり返していくことでしか極められない。
そう考えると、単純に好きなことでないとできないです。トライ&エラーで考えたら、確率的に失敗の方が多いわけですよね。何度失敗してもへこたれない、飽きないというのは、本当に好きでないとできません。
運よく私はスパイスカレーに出会って、ダイヤモンドの原石を見つけたような感覚に陥ったほどハマった。カレーが好きで、料理が好きで、食べることも好きで、こうやって思考をくり返すことも好きだったから、印度カリー子としてやっていけているのだと思います。結局、何かを極めるのに必要な原動力は、「好きこそ物の上手なれ」ですね。