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いい学校を出るのだけが「高学歴」じゃない...子どもの自信をつちかう親の方針

2022年04月18日 公開

出口治明(APU(立命館アジア太平洋大学)学長)

出口治明

2022年に高校1年生になる世代から、高校の教育指導要領の改訂が実施される。知識を活用して、どう「生きていく力」につなげるかに重点がおかれるというのだ。また、地歴の必修科目として「歴史総合」「地理総合」が、公民の必修科目として「公共」が生まれた。2025年度入試からは「情報」が入試科目になることも発表された。

ここで目指されていることは、変化に対応できる力=幅広い知識を総合する力、新しく生まれる情報技術を学び活用する力、どんな社会を創っていきたいかを考えられる構想力をもった人を育てていこうということだ。

つまり、これからの子どもたちには「自分のやりたいこと」、「自分はどう考えるか」を追究することがもとめられるようになっていく。そんな教育の方向の変化に、不安を覚える子どもや親も少なくないだろう。

本稿では、2020年8月に刊行された『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』(講談社)から、APU(立命館アジア太平洋大学)学長の出口治明氏へのインタビューを掲載する。

ライフネット生命保険会社の創業者でもある出口氏が、変化の時代における「高学歴」とはどのようなものを指すのか語ってくれた。

【出口治明さん<APU(立命館アジア太平洋大学)学長>】
1948年生まれ。大学卒業後、日本生命保険相互会社入社。2006年退職。同年、ネットライフ企画株式会社(現・ライフネット生命保険株式会社)を設立。2012年上場。社長、会長を10年務めて2017年に退任。2018年より現職。旅と読書をこよなく愛し、訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は一万冊超。数々のベストセラーを執筆。

 

高学歴とは「好きなことを徹底的にやる、学び続ける能力」

日本で「すばらしい」とされる子どもは、たとえばアップル創業者のスティーブ・ジョブズとは正反対ですよね。全員がジョブズだったら社会はまわらないという話もあるので、全員がそうなる必要はないですし、偏差値教育が完全に悪いというわけではありません。

「偏差値80を取りたい」とがんばる子どももいるわけですから、たとえば高校生の6、7割くらいは従来型の「偏差値コース」で学ぶ。そこで、素直で我慢強く、協調性があって先生の言うことをきく子どもを育てればいい。

けれども残りの3割くらいの「高い偏差値を取ることより、好きなことをやりたい」という子どもたち用に、「個性派コース」を用意したらいいと思うんですよ。好きなことを徹底的にやる非認知能力が高いほうがこれからの社会ではおそらく成功するので、個性派コースの中から次のジョブズが生まれるかもしれない。

ぼくが学長を務めるAPU(立命館アジア太平洋大学)で実践しているのもそういう大学作りです。2018年7月には、課外プログラム「APU起業部」を発足させました。本気で起業を考えている学生を支援し、将来的に国内外で活躍する起業家を育成したいと思っています。

どこの大学にもキャリアオフィスはあって内定率などを競い合っていますが、これは既存の企業や役場に勤める「勤め人」を養成しているだけ。今ある産業に勤める人を養成するだけで日本はよくなるのでしょうか? 日本は、大学院まで行く人が少ない。子どもたちに勉強意欲がないんじゃなくて、企業が大学院生を採用しないからです。

博士号を取った人が多い社会のほうが、アイデアが出やすいという研究結果まであるのに、とことん勉強をした人を今の企業社会は大事にしていない。大学院に進んで学びたい、起業したい、NPOを作りたい、などという学生の多様な希望を応援するのが大学の役割です。それを、企業や役所に就職したらそれで大学の役割を果たしたと考えているのはとんでもない話です。

今の10代が大人になってさまざまな分野で活躍していく、世界中を相手にしていく、そのために武器となる、とがった個性を身につけるのに必要なことは、「ダイバーシティ(多様性)」と「高学歴」だと思います。

経済学者のヨーゼフ・シュンペーターが言っていますが、イノベーション(技術革新)とは今ある知識の組み合わせです。知と知の間の距離が遠いほど、おもしろいアイデアが生まれる。これこそダイバーシティそのものですね。多様で思いがけないことが起きる場所でなければ新しい知恵が出てくるはずがない、ということです。

「高学歴」というのは、単にいい学校を出ろということではありません。非認知能力、「好きなことを徹底的にやる、学び続ける能力」があることが高学歴なんです。大学院に行ってとことん研究を突きつめるといったこともそうですね。いろいろな人が交ざった環境で人を育てて、その中で好きなことを徹底的にやらせる、それが日本に必要な「ダイバーシティ」と「高学歴」です。

だから親ができることは、子どもが好きなことを徹底的にやらせるということに尽きるんです。子どもたちに自信を持ってほしいのなら、ほかとは比べず点もつけないで、ただやりたいことをやらせる。そして一所懸命やる子どもを励ましてあげる。

現代の日本人は年間平均2000時間働いて、経済成長率は1パーセントです。そういう人生が楽しいでしょうか? 10代のみなさんが好きなことを徹底的にやったほうが、将来新しい産業を生み、活力を生む可能性が高いのだと思います。

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