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人種差別の構造と同じ?いま問われている「動物の権利」の本質

2022年06月06日 公開

佐々木正明(ジャーナリスト・大和大学教授)

 

人類の動物に対する「意識の変化」

シンガーは、動物性食品を摂取しなくても「十分な栄養を取ることは可能」とも述べ、ビーガニズムの徹底を訴えた。

対して、リーガンは1983年の『動物の権利擁護論』(原題:The Case for Animal Rights)で、知覚や欲求などの感覚を備える生き物はすべての自由の権利や生きる権利を持ち、人間と同等の権利を認めるべきだとの論を展開した。

2018年に出版された『動物の権利入門 わが子を救うか、犬を救うか』(緑風出版、ゲイリー・L・フランシオン著、井上太一訳)ではリーガンの説について「動物に道徳的権利があるとして、人間は結果に関わらず動物搾取をただ規制するのではなしに廃絶しなければならない」と紹介されている。

リーガンは「真の非常事態が発生した時、私たちは動物を犠牲に人間を救う義務があるばかりか、一人の人間を救うためならば百万の犬を犠牲にする義務がある」と述べる。

しかし、この説に反論するフランシオンは、人間の死が動物の死よりも大きな害になるという説は経験的事実として認められないとして、「真の非常時には人間を優先的に助けてもよいが、動物を優先的に助けてもよい」と主張している。

太地町の漁師の暮らしよりも、イルカの命を守ることを優先する者たちは、決してこの分野の専門家ではなく、動物の権利論の考え方が自然にインストールされている。

漁を監視しているNGO団体「LIA」のリーダー、ヤブキレンもこうした動物の権利論について、本を読んだり、特別に勉強したりしたことはないと打ち明ける。周りを山々が取り囲む大自然の中で育ったレンは「命の尊さを動物たちが教えてくれた」という。

イルカを捕まえて食肉用に殺したり、水族館のショーに利用したりすることは、彼らの生きる権利を奪っていることであり、「人間のあり方が異常に間違っている、と誰よりも強く思っている」と話す。

レンが動物の権利論の本質を心で理解していることに、着目したい。シンガーの『動物の解放』から半世紀が過ぎようとしている中で、これまでの様々な事件や問題を通じて、動物に対する人類の意識が変わってきたことを、レン自身が示している。時代の空気なのかもしれない。

シンガーが発端となった動物の権利運動は全世界で拡大の一途をたどっている。

 

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