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「不妊治療の保険適用」で懸念も? 生殖医療専門医が教えるクリニック選び

2022年06月29日 公開

坂口健一郎(生殖医療専門医)、吉澤恵理(医療ジャーナリスト)

坂口健一郎

2022年4月に不妊治療の保険適用がスタートした。昨今の不妊症は増加傾向にあり、保険適用によって経済的負担が軽減され、不妊治療を始める人も多いだろう。それに伴い、不妊治療を行う医療機関も増加傾向にあるが、実は、不妊治療を専門に行う生殖医療専門医は、まだ少なく、全国でわずか991名(2022.6現在)である。

生殖医療専門医である坂口健一郎医師は、日本の不妊治療は、患者ファーストではないケースも多く、保険適用になったことで専門医ではない医師が不妊治療を行い、妊娠するタイミングを逃してしまう可能性があるのではないかと危惧する。

 

もう1年早く治療していれば...

「私は、産婦人科医となり様々な病院を見るに連れて、不妊治療を行う医療機関の多くが、流れ作業的な診察で、患者さんの理解と気持ちがついて来れないでいる状況を知り、患者さんが十分に治療内容を理解しながら進んでいけるような診療をしたいと思い、不妊治療専門医になり、クリニックを開業しました。

実際に『もう1年早く検査を受けていれば...』『もう1年早く治療を開始していれば...』という患者さんはたくさんいらっしゃいました。そのたびに、医師として不甲斐なく、悔しい気持ちでいっぱいになります」

坂口医師がそう話す理由の1つが、婦人科クリニックと不妊治療専門クリニックの違いにある。

「婦人科クリニックは、生理不順や婦人科系の病気、避妊や不妊の相談など、女性の幅広いトラブルに対応してくれます。婦人科での不妊治療は、排卵日を特定したりセックスのタイミングを指導するのが一般的です」

一方、不妊治療専門クリニックでの不妊治療はより高度な治療が行われるという。

「不妊治療専門クリニックが治療開始前のスクリーニング検査やAMH検査などを行います。これらの検査は保険適用ではないため、婦人科クリニックでは行わないまま、不妊治療を行っているケースもあります」

 

不妊治療における検査の重要性

「一般に不妊治療のクリニックでは、卵巣のなかにある卵子の数を測る 『AMH検査』という検査をおこないます。この値は個人差が大きく、20代や30代でも40代と同じくらいの数値という人もいます」

AMH値が低いことが必ずしも不妊になるわけではないが、1つの目安になる。

「妊娠は、いい卵子が1つでも精子と出合えば受精可能ですが、『年齢が若いから大丈夫』とのんびりしているといざ、妊活となったときに卵子がなくなっていたということもあり得ます」

また、スクリーニング検査は、健康状態や不妊の原因となる疾患を調べるために不可欠なものであるという。

「スクリーニング検査では、感染症・末梢血・肝機能腎機能・血液型・甲状腺・クラミジア抗体・血液凝固機能・抗精子抗体について調べます。例えば、血液凝固機能に異常があれば妊娠しても流産を繰り返してしまうし、甲状腺疾患が不妊の原因である場合も多く、治療により妊娠の確率が上がることもあります。

また、抗精子抗体があるだけで体外受精となりますが、検査によって知ることがなければ、ただ不妊に悩むしかないのです」

抗精子抗体とは精子の動きを止めたり、受精能力を消失させ、精子が子宮内に侵入することを阻止する物質のことをいう。不妊症に悩む女性の約3%程度が抗精子抗体を持つというデータもある。

検査を行わず不妊治療を続けることは、患者にとって精神的にも経済的にも負担が増幅する可能性もあり、坂口医師は、不妊治療前の検査は非常に重要だと話す。

「患者さんの中には、複数のクリニックを渡り歩き『不妊治療難民』となっているケースがあります。患者さんが不妊治療について理解し、必要な検査や治療を納得して受けることができるように、私のクリニックでは、定期的に不妊治療の説明会を行っています。

患者さんにはまず、説明会に参加していただき、その後、治療を開始するかを決めていただいています」

女性の活躍に伴い、妊娠・出産という人生のプランニングを考えた場合、早い段階で検査を受け、自身の『妊娠する可能性』を知っておくことが大切だが、日本の教育では不妊についてのリテラシーを学ぶ機会は多くない。

また、現代は、女性が活躍する社会となり、女性は、仕事が充実し始める時期と妊娠・出産しやすい時期が重なっていることは否めない。そういった背景から近年、増加傾向にあるのが高齢出産である。

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