イオンの中に境界線が引かれた理由
トイレ前の通路にまで線が引かれているという念の入れようで、これほど大規模に境界線を可視化してくれている場所は、おそらく全国でもここが一番ではないだろうか。
なぜここまで施設内に徹底的に線が引かれているのだろうか。それは警察から建物を分けるよう申し入れがあったからだという。両府県警とも県境をまたぐ商業施設が管轄にできるのは初めてで、もし事件・事故が起きた時、どちらが受け持つことになるのかハッキリさせたかったのだそうだ。
もし事件が起きた場合だが、まずは住所地である木津川署が駆けつける。その後、事件が京都府と奈良県のどちら側で起きたのかが確認され、以後はその所轄が担当する決まりになっている。事故が起きた時も同様で、駐車場にラインが引かれているのはそのためである。市民の安全と警察の仕事は、まさにこの線一つで決まるのである。
ちなみにイオンモール高の原における電気やゴミなどの問題であるが、これは分野によりさまざまで、電話番号は市外局番「0774」で統一。各店舗のゴミは所在する府県に分けて出し、水道も別々になっている。
さらにいうと、奈良県の地名「高の原」を冠した施設であるにもかかわらず、住所は京都府木津川市だ。これは敷地面積の7割以上と事務所、そして正面玄関が木津川市にあるためで、こういう所もまたややこしさに拍車をかけている。やはり県をまたぐ施設はできればつくりたくなかっただろう。
しかるにこの施設が県境をまたいでいる理由は、駅前の土地をここ以外に用意できなかったからといわれている。立地の便利さと運営の煩雑さ、その混沌とした状態も県境ゆえである。ほかにはない県境の側面を味わえるスポットだ。マニア以外は気にも留めない側面だが。