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専門家が語る、不透明な時代に求められる「キャリアの自由度」とは

渡辺秀和(コンコードエグゼクティブグループCEO)

2022年09月26日 公開

 

難関資格に対する誤解...その資格は“キャリアの保険”になるのか

人材市場で評価されるスキルを身につけるという話を聞くと、難関資格の取得をイメージされる方もいらっしゃいます。

「弁護士になりたいから、司法試験に挑戦する」「監査業務に関心があるので、公認会計士を目指す」といった明確な目的があるのであれば、難関資格へのチャレンジはもちろん素晴らしいことです。

しかし、職務に必須とされる資格を除くと、一般のキャリア本や資格取得学校で語られているほどに、人材市場で高い評価を受けることは稀です。

特に、"箔付け"としての資格取得は、努力に比して見合わないことが多いので注意が必要です。2年間を試験のために使うのであれば、希望する仕事の実務経験を早く積んでおいた方が良いことも多いでしょう。

また、多くの難関資格は年に1、2回しか受験機会がないため、リスクの高い勝負となります。資格取得によって、キャリアに保険をかけるつもりだったのが、逆の結果を招くことも珍しくないのです。

資格取得に奔走する前に、その資格が本当に自分のキャリアに役立つのかを慎重に見極めることが大切です。

 

ブランドに対する誤解...“就職偏差値”は他人の価値観

大学でキャリアデザインの授業を行っていると、いわゆる就職偏差値の高い、ブランド企業ばかりを受けたがる学生と会うことがあります。

もちろん、その企業に入ってやりたいことがあるのであれば、素晴らしいことだと思います。しかし、その理由が「ブランド企業に入っておけば、次の転職でも良い企業に転職できる」という思考であれば、注意が必要です。

抜群のブランド力を誇る会社、例えばゴールドマン・サックスに行っておけば「次の転職でどこにでも行ける」というのは少々危険な考え方です。

第二新卒などのポテンシャル採用でない限り、転職時には職務経験や専門スキルがまずは重視されます。ゴールドマン・サックスでの仕事は、投資銀行業務なのか、IT部門なのか、営業なのかー-勿論それぞれに素晴らしいキャリアですが、ネクストキャリアの方向性は異なってくるでしょう。

もちろん、ブランドが無価値なわけではありません。同じコンサル出身者でも、実力が同じであれば、知名度の低いコンサルティングファーム出身者よりも、マッキンゼー出身者のほうが、人材市場で評価されるでしょう。

問題なのは、ブランドを極端に重視して就職先や転職先を決める人が、決して少なくないということにあります。

そもそも就職偏差値とは、入社の難易度を示しているだけです。当然ですが、目指すゴールや価値観、年齢、スキル、学歴などが、同じ人は一人としていません。

世間の人から人気があるか否かではなく、あくまでもご自身の望むキャリアにフィットするかを軸に、キャリアを選択することが大切だと思います。

 

迷ったら「キャリアビジョン」に立ち戻る

今回は明確な売りとなるスキルを身につけて、「自由度の高いキャリア」を築くことの重要性と、注意点について、解説してきました。

ここで新たな課題として、どのようなスキルを高めていくべきか分からない、という悩みが出てくるかもしれません。そのような際には、ぜひご自身の「キャリアビジョン」に立ち戻ってから、検討して頂くとよいかと思います。

キャリアビジョンとは、中長期的なスパンで見た、自分がやりたい仕事や人生の理想像のことです。一般的に"ハイキャリア"だと思われているから、という理由でキャリアを選択した結果、たどり着いた先が自分の望むキャリアと異なってしまっていては勿体ないことです。

ご存知のとおり、仕事とは人生の大半の時間をかけることになる大切なものです。働くことで、生活のための収入を得られるというだけではなく、人の役に立つ充実感や社会をつくる醍醐味を経験できるでしょう。

どのような道でスキルを高めるかを決める前に、ぜひ自分のやりたい仕事は何か、どのようなライフワークに取り組みたいのか、といったご自身の価値観を大切にして、ご検討いただければと思います。

【渡辺秀和(わたなべ・ひでかず/コンコードエグゼクティブグループCEO】
一橋大学商学部卒業後、株式会社三和総合研究所(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)戦略コンサルティング部門にて、同社最年少でプロジェクトリーダーに昇格し、多数の新規事業支援を手がける。2008年株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立し、代表取締役社長CEOに就任。1000人を越えるビジネスリーダーに対して、キャリアチェンジを支援。著書『ビジネスエリートへのキャリア戦略』(ダイヤモンド社)、『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社)など。

 

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