老け手の原因は「静脈」の拡張?
血管は「動脈」と「静脈」に大別されます。ハンドベインの方の手や腕に浮き出ている血管は「静脈」です。
動脈は、酸素と栄養素をたっぷり含んだ血液を、心臓から全身の細胞へ運ぶ役割を担っています。これに対して、酸素と栄養素を運び終えた血液を全身から回収し、心臓へ戻す働きをしているのが静脈です。
静脈は、動脈より血管の穴(内腔)が大きく、血管壁が薄い構造をしているため、やわらかくて拡張しやすい傾向があります。こうした性質を生かし、普段は血液をプールしておく貯蔵庫としての役割も果たしているのですが、何らかの理由で血流が障害されると、血管が拡張したままになってしまいます。
静脈が拡張して起こる症状というと、下肢静脈瘤(足の静脈瘤)がよく知られています。下肢静脈瘤も、皮膚に血管がボコボコと浮き出てくるのが特徴ですが、下肢静脈瘤とハンドベインはまったく別ものです。
下肢静脈瘤は見た目の問題だけでなく、足のだるさや疲れ、痛み、むくみ、色素沈着、足がつるなど、さまざまな症状を伴います。
加えて、放置すると症状がさらに悪化し、正常なほかの血管にも悪影響を及ぼします。場合によっては、足の静脈に血栓ができ、それが肺の動脈に移動して詰まる肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)の誘因になる場合があります。
これに対してハンドベインは、見た目以外は特に症状がありません。本人が見た目を気にしなければ、放っておいても何ら問題のない生理現象です。
血管は破裂しないのか…
ハンドベインの症状が進み、手や腕の静脈がボコボコと太く浮き出てくると、「血管が破裂するのではないか?」と不安を覚える方が時折いらっしゃいますが、そうした心配は不要です。
破裂の可能性があり、かつ危険なのは、動脈にできる動脈瘤です。加齢や生活習慣が原因で動脈硬化が進むと、心臓から勢いよく流れ込んできた血液の圧力で、血管の一部が瘤のようにふくらんでしまうことがあります。
これが胸部や腹部の大動脈にできると、破裂して大出血を起こし、死亡する危険性も生じます。
一方ハンドベインは、静脈のトラブルです。静脈も加齢や生活習慣が原因で変化しますが、動脈のように硬く細くなるのではなく、静脈の場合はやわらかく伸びやすくなります。そこに血液が溜まって浮き出てくるのがハンドベインです。
もちろん、高い圧力が加われば、静脈も破裂します。食道静脈瘤(肝臓から出ている門脈の血流が滞ることで発症する静脈瘤)がそうです。しかし、手や腕の静脈の血流は比較的遅いので、血管を破裂させるほどの力はありません。下肢静脈瘤も同様です。