日々仕事や家事で忙しく、自由な時間を持つことが難しいと感じている人は多く存在する。しかし政治・教育ジャーナリストの清水克彦氏によれば、どのように時間を使うか、時間をどういうものとして捉えるかによって、その状況は改善できるという。
※本稿は、清水克彦著『残業ゼロで自分を伸ばす! 40歳からの時間術』(PHP文庫)から一部抜粋・編集したものです
やりたいことをするための時間を天引きしておく
「時間があると、やりたいことができる」
「やりたいことがあると、時間ができる」
この両者の考えには雲泥の差がある。
夢や目標を持てば、おのずと後者の考え方に立つことになるが、そのためのテクニックが、やりたいことをするための時間を、1日24時間の中から天引きしておくことである。
これは、個人資産を増やすため、収入の中から一定額を天引きして貯蓄に回し、残りのお金で生活するのと同じだ。
たとえば、月収40万円の人が無計画に使えば、貯蓄は一向に増えない。
しかし、その中から5万円を財形貯蓄や銀行預金などに回すようにすれば、最初は(しんどい)と感じるかもしれないが、やがて、35万円で生活することが習慣になってくるし、やり繰り上手になってくるものだ。
時間資産を増やすのも同じ要領でいいのだ。1日の中で1時間でも2時間でも、今、あなたがやりたいと思っていることのために時間を天引きしておけばいいのである。
会社員であれ、自営業であれ、仕事を持っている人なら、1日のうち8時間以上が、「仕事の時間」としてほぼ自動的に埋まってしまう。主婦の方でも、家事や子どもの送り迎えなどに追われ、放っておけば、自分の時間などないという状態に陥る。
自分のための時間は、意識して先に確保しておかない限り、どんどん他の仕事や用事で奪われていくので、まず今、あなたがやりたいと思っていることにどれだけ時間を割けばいいかを決めることからスタートしてみよう。
○新しいスキルを身につけたい→それに投資する時間は1日何時間必要か
○最近、増えている社会人向けの夜間の大学院に通い、修士号を取得したい→入試対策や入学後にどれくらいの時間がかかるか
○年相応の教養を身につけたい→そのための時間はどれくらい必要か
○転職も視野に入れて、将来につながる副業を始めたい→労力と時間はどれくらいか
○子どもが小中学受験を控えている→子どもと向き合う時間はどれくらい確保すればいいか
このように考えれば、1日の中で先に確保しておくべき時間がわかる。
それが仮に2時間だったとすれば、それを24時間の中から天引きし、残りの24時間で、仕事で成果を挙げ、家族との団らんを楽しみ、疲れを翌日に引きずらないよう睡眠時間もきちんと確保するべく、やり繰りすればいいのである。
私も、「今日は2時間原稿を書く」「今日は1時間、明日の講演の準備をする」などと決めて、時間を天引きするようにしている。
そうすれば、本業のラジオ局の仕事も、だらだらやらなくなるので、2時間天引きしたつもりが、3時間に増えてきたりするから不思議だ。その増えた時間を、家族との団らんや趣味に回せば、日々の生活がさらに充実したものになること請け合いだ。
1週間分の仕事を木曜までに終わらせる
先の項で「1日の中から数時間、天引きする」ことをおすすめした。これに、さらに応用編として付け加えるなら、「1週間の中から1日を天引きする」こともおすすめしておきたい。
つまり、平日を月曜日から金曜日までの5日間ととらえるのではなく、4日間として計算するということだ。
もちろん、職種によって勤務する曜日は様々だろうが、週に5日間出勤する日があるなら、4日間で5日分の仕事をやってしまおうというプランである。つまり、1週間のうち1日を最初から天引きするということなのだ。
「そんなこと、実際にできるのだろうか?」といぶかる向きもあるかもしれないが、5日間で処理する仕事を4日間で片づけることは私の経験上可能だ。次に私が実践している方法を紹介しておくので参考にして欲しい。
まず、先に述べたように、人より少し早目に出社し、1日に何をすべきかを考え、午前中に1日の大半の仕事に目鼻がつくよう、前倒しで集中して仕事をこなす。そして、同じように、1週間全体でやるべき仕事をリストアップして、それをやはり前倒しで処理している。
たとえば、次のように1週間で処理すべき仕事があったとすれば、木曜日までにA~Oまでの仕事を終えておけばいいのだ。
○月曜日に片づけなければならない仕事=A、B、C
○火曜日に片づけなければならない仕事=D、E、F
○水曜日に片づけなければならない仕事=G、H、I
○木曜日に片づけなければならない仕事=J、K、L
○金曜日に片づけなければならない仕事=M、N、O
月曜日でいえば、午前中に少なくともAとBの仕事を終え、Cの仕事にも段取りをつけておく。午後はCの仕事の残りと、余力があれば火曜日にやるべきDの仕事まで済ませておくようにすると、火曜日には水曜日にやればいい仕事まで処理でき、1週間全体で仕事を処理するスピードが速まる。
木曜日になると、もう当日やるべき仕事はなく、金曜日にやればいい仕事に取りかかることになるので、金曜日が完全な「予備日」になるのだ。
金曜日を「予備日」にしている私の場合、金曜日は翌週の月曜日に会っておきたい人にアポイントを取ったり、翌週の火曜日の会議で使う資料を整理したりと、翌週に備えて戦略を練るだけの気楽な一日になる。
そうなると100%定時に退社できるので、執筆や大学院の研究に充てる時間とエネルギーが十分あるということになる。
「金曜日には毎週必ず重要な案件がある」という人なら、たとえば、月~水曜日と金曜日の4日でバリバリ仕事をこなし、木曜日を「予備日」にすればいいのである。
もちろん、仕事にはトラブルや突発的な用事も起きるので、毎週、絵に描いたようにはいかない可能性もあるが、5日のうち1日を「予備日」にしておけば、その日のアフターファイブに習い事のスケジュールを入れるもよし、外部の人間と交流を深めるもよし、気分的にゆとりを持って、マイペースで過ごすことができる。
「毎日、分刻みでスケジュールが入ってくるような生活を送っていて、何かを感じたり考えたりする時間がいつあるでしょうか? 1週間の中で1日は、考えを整理し、充電する日が必要です」
こう語るのは、大手コンビニエンスストアチェーン、ローソンの元社長・新浪剛史氏だ。新浪氏は、毎週水曜日を「予備日」にしている経営者で、手帳の水曜日には×をつけ、アポイントもできるだけ入れないようにし、アイデアを練ったり、街を歩いたりする日に充てているそうだ。
経営者ではない私たちサラリーマンはそこまで自由にはできないが、立ち止まって先々への構想を練る「予備日」、情報や知識、仕事では得られない感動をインプットするための「予備日」を、1週間のどこかに入れてみてはどうだろう。