喫煙は百害あって一利なし!
いよいよ、老化を促進させる最大の生活習慣について話すときが来ました。それは喫煙です。
喫煙は、そもそも15世紀にコロンブスが新大陸より持ち帰った習慣。当時ヨーロッパで流行していたペストに効く、という間違った説も手伝って、あっという間に広まりました。しかも煙草には習慣性・依存性もあるため、皆が手放せないものとなっていったのです。
さて、「喫煙指数」というものをご存じですか?
(1日に吸う本数)×(喫煙してきた年数)=喫煙指数です。この数値が400を超えると、ガンの発症率が高くなります。
1日20本吸って、それを20年間続けると喫煙指数が400。未成年のうちから吸い始めて、その後もヘビースモーカーなら、40歳前に限界がやってくる計算になります。
喫煙が原因のガンというと「肺ガン」が真っ先に頭に浮かびますが、それよりも高率なのは「咽頭ガン」、つまりのどのガンです。吸った煙が一番初めに当たる場所だからです。
第2位が肺ガンで、その次が食道ガン、胃ガンと続きます。
「煙を飲み込むわけでもないのに、どうして消化器が冒されるの?」と疑問に思うところですね。それは、煙草を吸いながらビールを飲んだり、おかずを食べたりするからです。食べ物と一緒にニコチンやタールが胃の中に入って、上部消化器官のガンとなるのです。
ガンだけではありません。動脈硬化で血管が詰まれば心臓病や脳卒中になる確率も増えます。脳の血管が詰まって小さな梗塞を起こすことで、認知症を招く危険性も増大します。
自分が煙草を吸う人は、すぐそばにいる煙草を吸わない家族や友人にまで危険を及ぼしていることに気づいてほしいのです。ゴミの焼却場がある地域では、「ダイオキシンが出た!」と周囲の住民が神経質に動揺します。しかし、ダイオキシンなどより煙草のほうがよほど危険です。その毒性の強さはダイオキシンの比ではないのですから。
また、煙草を吸うと、200種類もの有害物質が血管を通ります。血中をニコチンとタールが通っていくその状態で、日光の下を通ると紫外線の毒性は何倍にも跳ね上がります。
最近は、女性向きのお洒落な煙草が増えました。男性の喫煙率は減っているというのに、女性の喫煙率は逆に増えています。若く美しくありたい、と主張する女性たちがなぜわざわざ美容の大敵を好むのか、理解に苦しむところです。
南雲吉則(なぐも・よしのり)
医学博士、乳腺専門医ナグモクリニック総院長
1955年、東京都生まれ。1981年、東京慈恵会医科大学卒業。同年、東京女子医科大学形成外科入局。癌研究会附属病院外科医、東京慈恵会医科大学第一外科乳腺外来医長を歴任。1990年、医療法人社団ナグモ会を開設。現在、東京・名古屋・大阪・福岡のナグモクリニック総院長。東京慈恵会医科大学外科非常勤講師、近畿大学医学部形成外科非常勤講師、韓国東亜医科大学客員教授、中国大連医科大学客員教授などを務めるほか、2012年には国際アンチエイジング医学会の名誉会長にも就任。また、わかりやすい解説が大好評となり、テレビ番組に多数出演。