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パワハラ体質の人の特徴 より注意が必要な“ダークトライアド”とは

津野香奈美(神奈川県立保健福祉大学大学院教授)

2026年04月24日 公開

パワハラ体質の人の特徴 より注意が必要な“ダークトライアド”とは

「パワハラ」という言葉が広く知られるようになって久しいですが、「自分はパワハラをされているのではないか」と疑問を抱くことや、「部下を指導したいがパワハラと言われないか」と懸念することも多いのではないでしょうか。誰もが働きやすい職場のために、今一度知っておきたい知識を神奈川県立保健福祉大学大学院教授の津野香奈美さんに教えていただきます。(取材・文:石澤 寧)

※本稿は、月刊誌『PHP』2025年4月号より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

パワハラのよくある誤解

「パワハラ」すなわちパワーハラスメントとは、そもそもどのようなものでしょうか。「改正労働施策総合推進法」の定義では、職場における3つの要素を満たす行為のことを言います。

①優越的な関係を背景とした言動
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
③労働者の就業環境が害されるもの

◎上記の3つすべてに当てはまるものがパワハラとなるので、次に挙げるような、よくある誤解には注意が必要です。

誤解① された側がパワハラだと思ったらパワハラ

たとえば、上司からミスを注意された部下が「パワハラだ」と感じても、「業務上必要かつ相当な範囲」なら、パワハラとは判断されません。逆に、上司から毎日叱責されている部下本人がパワハラとは思っていなくても、毎日という「頻度」やその叱責の「様子」が社会通念上、「相当な範囲を超えている」ときは、パワハラと認定される場合があります。

誤解② パワハラは上司だけがするもの

パワハラの定義にある「優越的な関係」は上司→部下とは限りません。たとえば、パソコン操作が苦手な上司に、得意な部下が「こんなこともわからないのですか?」と中傷することは、部下のほうが「専門的知識」という優越性を持つことを意味するのでパワハラになります。また、部下が集団で上司を無視する行為も、人数のうえで部下側に優越性があると判断されます。

誤解③ される側に非があるなら仕方がない

相手に非があったとしても、暴言を吐いたり、罵倒したり、怒鳴ったりしていい理由にはならないことに注意が必要です。どんな人に対しても、人格否定発言は業務上不要なのでパワハラになります。それだけでなく、仕事のミスが多い人でも、毎日のように怒鳴られたり説教されたりするのは、「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」と判断される可能性が高いでしょう。

 

あなたは大丈夫? パワハラリスクチェックリスト

□ 日ごろ、他人に対してイライラすることが多い
□ 自分は仕事ができるほうだと思う
□ 努力しない人は、怠け者であると思う
□ 部下が突然泣いたり反抗したりして驚くことがある
□ 時々、不安に駆られることがある
□ ついカッとなることがある
□ これまでに、自分の指導がきついと言われたことがある
□ 部下の感情や気持ちがよくわからない
□ 最近ストレスがたまっていると思う

3つ以上当てはまる場合は、「パワハラを行なうポテンシャルが高い」と判断できます。実際にパワハラをしているかは別問題ですが、ストレスや不安が高まったときにパワハラをしてしまうリスクがあると自覚しましょう。

また、自分の言動を振り返るのは難しい場合もあるため、「もし自分がパワハラ的なことをしたら教えてほしい」と、周囲の人に頼んでおくのも方法です。

 

パワハラにならない「伝え方」

時には同僚や部下に厳しいことも言わなくてはならないもの。「行きすぎた指導」にならないためのポイントを押さえましょう。

【ダメ出しの鉄則は「3+3」】

・最初に守るべき3つのポイント
①周りに人がいない状態で行なう
②ほめられる点、できている点を先に伝える
③人格否定をせず、何をどうしてほしいかを伝える

・プラスで伝える3つの説明
①~③を守ったうえで、
(a)行動の指摘
(b)なぜそれが問題なのかの説明
(c)どうしてほしいかの具体的な説明
の3つを付け加えましょう。

例:何事も丁寧に取り組んでくれて感心します。ただ、丁寧すぎるために仕事をためこみがちで(a)、締切に遅れてしまっているように見えます(b)。自分の基準で60パーセントくらいのところで、一度提出してもらうことはできますか(c)?

最後に「○○さんならきっとできます」と期待を伝えると、さらに効果的です。この「ダメ出しの鉄則」を使うと、指摘される側は傷ついたりモチベーションが下がったりしづらいですし、指摘する側も気が楽です。職場だけでなく、友人や家族にも応用できます。

 

【言語化は上司の務め】

パワハラ上司にありがちなのが、自分の期待水準(ゴール)はどこかを隠して、部下にボールを投げさせること。部下の仕事と自分の評価基準に乖離がある際、具体的なアドバイスはせずに何度もやり直しを命じて部下を疲弊させます。上司は評価するポイントを明確に言語化して伝えなければなりません。

 

近寄ってはいけない! 邪悪な性格特性「ダークトライアド」を持つ人

注意されてもやめない重度のパワハラ行為者には、「ダークトライアド」と呼ばれる邪悪な性格特性を持つ人がいます。広範囲に悪影響を及ぼしかねず、細心の注意が必要です。

サイコパシー:生まれつき良心が欠如し、罪悪感なく非人道的なことをします。噓をついたり、他人のものを盗んだり。自尊心が過大で自己中心的なのが特徴です。

マキャベリアニズム:どんな非道徳的な行為も、組織のためになるなら許されるという考え方。成功体験により後天的になることが多く、目的のために手段を選びません。

ナルシシズム:自分の能力を過大評価し、ほめられて当然と思っているため、賛美が得られないと驚きます。共感性が低く、他人を不当に利用したり、搾取したりします。

【ダークトライアドを見分けるヒント】

□ はたからは魅力的に見えるが、「二度と関わりたくない」という声があるなど、身近な人からの評判が悪い。
□ 相手が自分のために動いて当然と考えている。お世話になった人でも、都合が悪くなると人間関係を断つ。

彼らは仕事の能力に優れ、社会的地位の高い仕事や役職についていることも多いですが、身近にいる人がパワハラを受けている場合もめずらしくありません。

当てはまる人がいたら、できるかぎり関わるのを避け、パワハラを受けたら相談窓口に連絡するなど、身を守る行動を起こしましょう。

 

周囲の行動でパワハラはなくせる! パワハラされない、させない職場づくり

個人でできる対策や、社員の衝突を生まない仕組み、傍観者にならずに自他ともに守る方法をご紹介します。

【パワハラを「されない」ために】

①毅然とした態度を取る

言われたことを何でも素直に引き受ける人は、標的になりやすいです。パワハラする側は相手を選んでいて、毅然と言い返す人や、怒らせたら面倒な人は対象にしません。パワハラの知識を身につけ、「自分を標的にすると損をする」ことが相手に伝わると、標的にされにくくなります。

②SOSを出す

社内のハラスメントの相談窓口に、些細なことでも相談に行きましょう。社内で解決できそうにない場合は、都道府県労働局や労働基準監督署の「総合労働相談コーナー」に相談することもできます。

 

【パワハラを「させない」ために】

①マネジメントを学ぶ

残念なことに、上司からパワハラを受けた人はそのやり方を学んでしまい、自分も部下に対してパワハラをしやすい傾向があります。しかし、研修などでパワハラにならない部下との接し方を学び、身につけることができれば、負の連鎖を断ち切れます。企業は個人だけの責任にせず、時間やお金をかけて適切な方法を習得する機会を設けることが必要です。

②余裕のある職場をつくる

労働時間が長く、ノルマが厳しい職場では、パワハラが横行しやすくなります。人員や業務量を調整して余裕を持たせることで職場全体のストレスが減ると、パワハラの抑制にも効果的です。ある食品メーカーでは、終業時刻を前倒しして残業ゼロを実施したところ、メンタルヘルス不調の減少だけでなく、離職率の低下や採用にも好影響が出たそうです。

③誰もが働きやすい制度を整える

男性中心で体育会系の組織は、パワハラが起きやすい傾向があります。時短勤務の取得や休業する理由が出産や育児、介護のみだと、対象外の人にしわ寄せがいき、不公平感が生まれます。誰もが時短で働ける・休みやすい制度整備が大切です。フラットな文化を築けば、自他ともにタフに働くことを求める考え方から脱却できます。

④ルールを明文化し、価値観を押しつけない

価値観の違いが社員同士の衝突を生み、パワハラにつながる場合があります。ある工場では、道具の使い方や片づけ方がバラバラで、ぶつかり合う原因になっていました。そこで、制服を洗う汚れの基準を定めたり、収納場所を細かく決めたりすると、社員同士の衝突がなくなり、ハラスメントの減少にも効果があったそうです。

組織でよくありがちなのが、会議や営業先に何分前に着いておくべきといった不文律で意見の対立が起きること。すべてのルールを明文化すればいいわけではなく、明文化されていないものは個人の自由にし、互いに価値観を押しつけないことが大切です。

⑤パワハラを見て見ぬふりをしない

パワハラ被害を受け続けると、感覚が麻痺してしまっていたり、気力が失われていたりして、自ら行動を起こせなくなっている場合があります。周りの人が「指導として行きすぎている」と感じたら、余計なお世話と思わずに、ハラスメントの窓口に相談しましょう。

パワハラは加害者と被害者の関係性だけでなく、周囲にも波及するとわかっています。「こんなこともできないのか」「だからお前はダメなんだよ」という怒声を周りで聞いているだけでも、メンタルの不調を抱えやすくなります。パワハラを見て見ぬふりをしないことは自分を守ることにもなり、それは職場全体の生産性を低下させないことにもつながるのです。

 

【津野香奈美(つの・かなみ)】
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。博士(医学、保健学)。和歌山県立医科大学講師、ハーバード公衆衛生大学院客員研究員などを経て現職。職場での人間関係と健康への影響などを研究。著書に『パワハラ上司を科学する』(ちくま新書)がある。

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