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生き方

離婚を経験し、自信を失った40代女性の心を埋めた“サーフィンへの挑戦”

ダイアン・カードウェル(ジャーナリスト)、満園真木(訳)

2023年11月24日 公開

 

大きな一歩

「いい波が来てる。もう行けそうかい?」

「ええ、でもこれが最後かも」

わたしはボードに腹ばいになって言い、サイモンの合図とともにパドリングして波をとらえた。今度も立ちあがり、ボードが進むのを見守った。

「波に乗るんだ、ボードじゃなくて」とサイモンが叫ぶのが聞こえ、そのとおりだと気づいた。立ってボードに乗っていることだけに集中しすぎて、波に乗ることに意識が向いていなかった。

顔をあげ、波がどうやってビーチに向かっていくのか予想し、どうすればそれに乗っていられるかイメージしようとした。波は進行方向に向けて傾斜するくさびのような形をしていて、岸に向かって斜めに進んでいるようだった。そうやって見続けていると、不思議と自然に岸まで乗っていくことができた。

砂浜が迫ってきたところで、自分から後ろ向きに落ちた。

「ほら、ずっとよかっただろ」サイモンが近づいてきて言った。

「ほんとに」わたしは浮かれて笑いながらビーチまで歩いた。

「でもわからないの。自分が何をしたのか」

「ターンしたんだよ! 波のなかでターンしたんだ。波に乗るにはそれが必要なんだよ」

「なるほど。でもターンってどうやってするの? さっきは気づいたらそうなってて」

「そうだね、まずは進む方向を見ることだ」

サイモンがボードを砂の上に放り、ポーズをとった。腰幅くらいに両足を開き、膝を少し曲げて前に向け、上体は横に向けて、腕もそれとだいたい同じ方向に伸ばす。

「こうすると正しく重心がとれる。でも舵をとるためには調整もしなきゃいけない」

彼が片方の膝と足首をひねりながら地面に向けて沈めた。すごく不自然で苦しそうな姿勢だったので、こっちまで脚に痛みが走った。

「もっとうまくなると、波の上でいい場所に居続けるために足をクロスさせることもできるようになる」

しゃがんだ姿勢のまま、彼が横に踏みだし、ゆっくり片方の足をもう片方の足の前にクロスさせた。

「でもこれは上級編だ。まずは基本をマスターしてからだね」

「わかった。次からはそれを意識してみる」

ちょっと前進したと思うと、毎回どれだけ先が遠いかを思い知らされる。

 

海がくれる癒やし

サーフボードやウェアが積まれているところまで戻ると、わたしは砂の上に腰をおろしてブーツをぬぎ、続いてウェットスーツもぬいだ。くたくたに疲れ、こわばった身体が言うことを聞かない。それはまもなく全身の筋肉痛に変わるのだろう。

それでも、何カ月もなかったような心の安らぎと満足を感じていた。ようやく胸の圧力弁が回り、熱くて苦い喪失の残滓がゆっくり流れだしていくように。

 

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