写真:小池彩子
テレビ番組「プレバト!!」(MBS/TBS系)の水彩画コーナーで大人気の絵の先生・野村重存さんは、「絵のセンスや才能がない」と思っている超初心者、さらにその前段階の初心者未満の人でも、「必ず上手な絵を描くことができる!」と語ります。
本稿では絵の超初心者・Iさんが、"リアルな木を描く極意"について教えてもらいました。
※本稿は、野村重存著『野村重存の世界一わかりやすい絵の授業』(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです。
実物を見なくても絵は描ける
野村:今日からは、「木」に挑戦していきましょう。木が描けたら、さらに絵を描くことが楽しくなりますよ。
I:ちなみに、なんで木なんですか?
野村:なんといっても、身近な存在だからです。観葉植物や庭の木、街路樹、公園の緑など、家のなかにも、外にも、ありとあらゆるところに木はありますからね。
I:たしかに、木を見ない日はないくらい身近ですね。
野村:しかも、木が描けると応用がきくんです。木が描けたら、森が描けます。森が描けたら、山も描けます。すると、風景が描けます。逆に、木の枝と同じ要領で、1枚の葉の葉脈が描けたりもします。
I:なるほど。応用の範囲が、とても広そうです。......外に出かけて観察しなくていいんですか?
野村:いいところに気がつきましたね。今回は、特定のモデルは設けません。モデルに似せることより、描き方を身につけることに集中するためです。
I:えっ!? リアルな絵って、なにも見なくても描けるんですか?
野村:はい。リアルな絵を描くコツは、描き方を知ること。実物を見なくても、「こうやって描けばリアルな木に見える」という描き方を知って、その手順通りに描けば、だれでも描けるんです。
I:なにも見ずに絵を描けたら、かっこいいですね。あこがれます。
野村:特定のモデルを設けずに描く練習は、「対象物をよく見て描かないといけない」という思いこみをリセットするのにも役立ちます。今回は、実物の木ではなく、Iさんのイメージする木を描いてもらいます。
I:私のイメージする木でいいんですね。それじゃあ、遠慮なく描いてみます。サッサッサッ。下のような感じになりました。
野村:あぁ〜、木ですね......(これまで教えてきたことは、なんだったんだろう......)。
I:野村先生、ちょっと顔色が悪いような......?
野村:だ、大丈夫ですよ! ここからは全部のびしろです(笑)。Iさんのイメージする木って、ひょっとすると、こんな感じですか? ちょっとお待ちください。サラサラサラ。下の図です。
I:うわぁ!! まさに、こんな木です!
野村:それじゃあ、ここに少しずつ近づいていきましょう!
リアルな木を描く極意1
野村:Iさんの描いた木と、私の描いた木、この2つの違いって、なんだと思いますか?
I:なにがって、もう次元が違いすぎて......。
野村:そういうことではなくて、そもそも木をとらえるポイントが違うんです。そこが変わると、木を描くのが一気にうまくなりますよ。
I:木をとらえるポイントですか......。
野村:はい。2つの点で大きく違っているんです。ポイントの1つ目は「葉」のとらえ方です。Iさんの木は、葉の部分が、半円を次々につないだ一筆書きみたいになっていますよね。パターン化すると、絵がリアルに見えなくなるんです。
I:木の絵は、小さいころからもう何十年も、これでずっとしのいできたので、それが出ちゃいましたね......。
野村:そのぐるりとつながった線が、つくりもののような、なにかの記号のような感じに見えてしまうんです。実際には、こんな木は存在しませんよね。
I:はい。実際の木は、たくさんの小さな葉の集まりですね......。
野村:その通り。木は自然のものなので、下の図のように、不規則で、「とぎれ、とぎれ」のランダムな線になるはず。これが木を描くときの1つ目のポイントです。
I:なるほど。ひとつなぎではなく、「とぎれ、とぎれ」に......。
リアルな木を描く極意2
野村:ポイントの2つ目は「枝」のとらえ方です。そもそもIさんの木は幹だけで、枝がまったくないですよね。
I:あっ、本当だ......。
野村:実際の木は、幹だけでなく、もちろん枝もあって、それが縦にも横にも手前にも奥にものびています。このポイントを意識しないと、絵が平面的になって、これまたつくりものみたいに見えてしまうんです。
I:たしかに、実際の木の枝って、四方八方にのびていて、かなり複雑ですよね。
野村:Iさん、少しずつ木の構造に意識が向いてきましたね。今、大きな一歩をふみだしましたよ。
I:えっ、どういうことですか?
野村:リアルな木を描く極意に、ぐっと近づいたということです。木がどんな構造になっているかを理解できると、複雑な葉の部分の描き方がわかるんです。木には、まず幹があって、そこから放射状に枝がのびていますよね。
I:そうですね。
野村:その枝から、さらに細い枝がのびて、その先に葉がこんもり茂っています。
I:はい、わかります。
野村:つまり、「枝+葉の茂り」という、ひとかたまりの房がたくさん集まって、1本の木の葉の部分になっているわけです。さっき私が描いた木の絵も、そんな描き方になっているので、もう一度、見てみてください。
I:そう言われると、野村先生の木の葉の部分は、もこもこした房がいくつも集まっているような......。
野村:そんなふうに、木の葉の部分は、もこもこした房の集合体だとわかったら、木を描く極意はつかめています。「枝+葉の茂り」のひとかたまりの房をたくさん描いていけば、木の葉の部分が描けてしまうんです。
I:なるほど! そうやって構造を分解して考えると、複雑に思える木の葉の部分も描けそうな気がしてきました。