プロフェッショナルは「スピード仕事術」で成果を出す
2013年02月14日 公開 2022年11月14日 更新
作業ではなく、仕事をしろ!
「スピード仕事術」は、「スピード作業術」ではありません。
「スピード仕事術」は、一流のビジネスパーソンのための仕事術です。
ですので、新入社員が目の前にある伝票整理を速くするとか、そうした話をしているのではありません。
立場が高くなればなるほど、ビジネスパーソンに作業の速さは求められません。
求められるのは 判断の速さ、それも正確な判断が速くできるかどうかです。
たとえば、M&Aをする場合を考えてみましょう。
私も、以前、銀行員をしていたときに、M&Aのアドバイスの仕事をしていましたが、アメリカの会社を買収するとなれば、リーガルドキュメンツを一晩で100ページも読むことがあります。
その中には、ビジネスの膨大な情報が含まれているわけです。
それを理解し、咀嚼した上で、会社を買ったほうがいいか、買わないほうがいいか、買うならいくらか、などをお客様にアドバイスしなければなりません。
そういう仕事に就いていたからこそ、正確な判断を速く下すことがいかに大事かを痛感しているのです。
同様に、今でも、非常勤の役員や顧問をしている会社の役員会に出席すれば、同業他社を買収すべきか、やめておくべきかなど、さまざまな事案が出てきます。
限られた情報しかない場合も、膨大な情報がある場合もあります。
その中から、速く正確な判断を下して、アドバイスするのが、私の仕事です。
M&Aの案件などの場合には、ビジネスとしての視点以外にも、雇用の問題、地域社会の問題、今後の社会の動向など、さまざまな要素を考えての判断が必要です。
また、利益の話だけではなく、法律に触れないのかどうか、法律ばかりでなく倫理的にも正しいのかなど、すべてを総合して、良いか悪いか、この議案に賛成か反対か、手を挙げるか挙げないかを判断しているのです。
それを毎日ずっと続けているわけですから、世の中が複雑系であることもよく知っています。会議によっては、出席者の面子にも気配りしなければならないこともあります。
ビジネスパーソンの中でも、今後リーダーになっていく人たちには、そのようなすばやく、正確な判断が求められていくでしょう。
たとえば、トヨタ自動車社長の「国内生産を300万台維持します」という発言。おそらく数多くある情報を整理して、多くの判断を行なって、その発言にたどり着いたはずです。
結果として正しいか、間違っているかは時代が判断しますが、プロのビジネスパーソン、プロの経営者は常にその時点でのベストの判断を迫られています。
これからの日本経済を背負っていくみなさんには、限られた時間の中で、的確な判断をする能力を身につけていただきたいと思います。
point ◆速くて不正確な判断も、正確でも遅すぎる判断も役に立たない。
小宮一慶
(こみや・かずよし)
経営コンサルタント、株式会社小宮コンサルタンツ代表
1957年、大阪府堺市生まれ。1981年、京都大学法学部卒業。東京銀行に入行。1984年7月から2年間、米国ダートマス大学経営大学院に留学。MBA取得。帰国後、同行で経営戦略情報システムやM&Aに携わったのち、岡本アソシエイツ取締役に転じ、国際コンサルティングにあたる。その間の1993年初夏には、カンボジアPKOに国際選挙監視員として参加。1994年5月からは、日本福祉サービス(現セントケア)企画部長として在宅介護の問題に取り組む。1996年に小宮コンサルタンツを設立し、現在に至る。株式会社小宮コンサルタンツ代表。十数社の非常勤取締役や監査役も務める。
主な著書に、『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)『「1秒!」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)『決算書速習教室』『たった5分で「あなたと一生仕事をしたい」と思われる話し方』『一番役立つ! ロジカルシンキング』(以上、PHP研究所)など多数。