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産学連携によるグローバル人材の育成で日本を再生する

山極壽一(京都大学総長)・永守重信(日本電産会長兼社長)

2018年05月31日 公開

「世界を見て自分を知る」という学び

山極 京都という地は、永守会長を筆頭に、世界に向かって挑戦する人材を多く輩出しています。街自体にも「世界の中で京都が一番」という自負がある。職人にしろ、商売人にしろ、世界を相手にしているという気概を持っています。だからこそ、新しいものを伝統と調和させることで、1200年も生き続けてこられたわけです。それをまず大学生に学んでほしい。
産学連携の場とは、世界が抱える課題の中で、自分がどういう役割を持っているのかという「みずからの位置関係」を知る場だと思います。そういう意味では、京都は学問の場として非常に条件が整っています。
私は、京都の街そのものを大学のキャンパスとする「京都・大学キャンパス構想」を掲げています。大学の中だけで座学で学ぶのではなく、もっと市内に出て様々な人たちと付き合い、自分を知ること。そして世界を知ること。京都は、日本の一都市ではなく、世界に通じている都市です。だから、そこに住む人々を通じて世界を知ることができるんです。

永守 国内だけを相手にしていたら、やがて限界がきますからね。
私は創業した時から、わが社は零細企業ではなく「兆円企業の卵である」と言っていました。皆さん、びっくりしてましたけどね(笑)。ところが、私が取引先を求めて国内企業を回っていると、行く先々で「お宅の会社、資本金いくらや」「従業員何人おるのや」と必ず聞かれた。従業員3人ですと答えると、その時点で門前払い。自分たちと取引するような会社ではないと判断されるわけです。
だからやむなくアメリカに渡ったのですが、あちらでは、3MやIBMのような大企業ですら、私に「資本金いくらや」なんて一切聞きませんでした。その代わりに「あなたはわれわれに対して、どういうメリットを与えてくれるんだ」と聞いてきた。だから「あなたが使っておられるこのモーターをうちでつくらせてくれれば、形状が半分になるし、コストも安くなって性能がうんと向上する」と答えました。
結局、日本電産は世界43カ国で事業を展開するまでになり、売上の8割以上を海外が占めています。もし国内だけで取引していたら、日本の一企業で終わっていたでしょうね。

山極 私の師である生態学者の今西錦司さんは、とにかく世界が考えていないことを考えよう、つくり出そうという方でした。
今西さんは、「社会」は人間だけのものではなく、虫や魚や鳥だって「社会」を持っているとおっしゃっていました。こうした自然観は、西洋の発想にはない。だから最初は学会で笑いものにされました。一体一体の動物に名前をつけて、人間のようにその行動を記述するのは単なる擬人化で、人と動物は違うのだから、そんなことをしてはいけないとさえ言われました。
でも今西さんは、「動物は人間のように言葉で世界を認識していないが、彼らなりのやり方で世界や仲間を認識している。それを知るためには、動物の世界に入り、一体一体を識別して彼らを理解しなければならない」と言ったんです。今西さんは京都・西陣のご出身ですが、こういうとんでもない発想は、京都だからこそ出たのだと思います。
 

※本記事は、マネジメント誌「衆知」2018年1・2月号特集「若い力を育てる」より、一部を抜粋したものです。

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