シリコンバレーの小さなオフィスからイサム・ノグチを追いかけた
2018年08月09日 公開 2021年05月11日 更新
Appleの新社屋に納入される数千脚の木の椅子
人間も元々が自然のものだから、プラスチックみたいなものには、万能だけど、若干の拒絶反応というか違和感を持っている。
木にはそれがないんですよ。
木っていうのは暴れるし、言う通りになってくれないこともあるんですけど、それが「らしい」なというところもあります。
マルニ木工は広島県の会社なので〈HIROSHIMA〉という名前を提案したら、会社の人たちはたまげたみたいで。
僕がアメリカにいたとき、Hiroshimaっていう日系3世のバンドの局を毎朝ラジオで聞いていて、それがすごくいいんですよ。洋楽なんですけど、琴とか使って。
それはともかく、世界に知られている名前であることはたしかだし、単純に名前としていいんじゃないかと思いまして。
それに、その前に何百億と売り上げていたマルニの核となる商品は〈ベルサイユ〉っていうんですよ。だったら〈HIROSHIMA〉もありじゃないかと。
結果的に、この椅子はしだいに独り歩きを始めまして、世界のありとあらゆるところに置いてもらって、いろんなファンができた。
〈HIROSHIMA〉が出たのが2008年。ちょうど10年目にあたる今年、アップル・パークというアップルの新社屋に、数千脚の納品が決まりました。
世界のOS、プラットフォームを作った人たちがオフィスに導入するのが木の椅子ということを決めたということが、何かおもしろいというか、うれしくて。
これは自分の思い切ったデザイン人生の記念すべきアイコンだと思いました。
*本記事は2018年6月にアートブック・ユリーカ で行なわれたトークイベントの内容から抜粋し編集したものです