「勇気ある既読無視」フォトグラファー・ヨシダナギの人付き合いのコツ
2021年09月08日 公開
アフリカやアマゾンをはじめとする少数民族や、世界中のドラァグクイーンを撮影し発表するフォトグラファーのヨシダナギさん。自らのこれまでの人生を「逃げの人生」だと振り返る。
ヨシダさんの新しい著書『しれっと逃げ出すための本。』では、アフリカ人に憧れを抱きフォトグラファーになるまでのことや、生き方について語っている。
子どもの頃から引っ込み思案だったヨシダさんは人間関係のなかで、自分を"キャラクター化"することで楽になったという。それはどういうことなのか、またSNS時代の振舞い方とは。
※本稿は、ヨシダナギ 著『しれっと逃げ出すための本。』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
自分をキャラクター化してみる
テレビで私が話しているのを見て、「穏やかで落ち着いている」という印象をもつ人がけっこういるらしい。それはたぶん、私にとってはすべてが「他人事」だからだと思う。
自分自身のことでさえも、どこか「他人事」として見ている傾向があって、必死になることがあまりない。それが、「ガツガツしていない」とか「落ち着いている」という印象につながっているのだと思う。
言い換えれば、「覇気がない」ということでもある。最近、インタビューを受けたときに、「自分を客観視しすぎている」と指摘されたが、「ほかの人はそんなに自分を客観視していないものなのか」と逆に驚いた。
子供のころから、無意識のうちに自分を客観視する癖があった。私からすると、そうしているほうが単純に楽だったのだと思う。そうすることで必要以上に傷つかずにすむし、結果を求めて焦ることがない。
自分のことを、一つのキャラクターとして眺めているような感じ、とでもいえばわかりやすいだろうか。たとえば、「ドラえもん」の主要キャラであるのび太君は、現実の学校のクラスにいたら、決して魅力的な存在ではないはずだ。
こういってはなんだが、見た目はさえないし、弱虫で泣き虫、何かというとドラえもんに頼ってばかりいる。しかし、そんな地味でさえないのび太君なのに、あの物語の世界では不可欠な主役的存在なのだ。
ほぼすべてのエピソードがのび太君のちょっとした失敗を起点に展開していく。彼がダメなヤツだからこそ物語が成り立つし、その完璧でないところに共鳴したり、身近に感じられたりする人が多いのではないだろうか。
そう考えると、のび太君の欠点もいとおしい。私は自分自身のことも、そんなふる先生のやさしさが際立ったりする。たくさんの個性的なキャラが存在してくれることで、自分をとりまく「物語」が豊かになるのである。
「ドラえもん」でいえば、完璧キャラの出木杉君は、現実世界にいたらすごく魅力的なのだろうが、あの物語のなかでは目立たないし、完璧すぎて出番さえ少ない(映画版「ドラえもん」にもスタメンで出てこないのはそのせいだろうか)。
のび太君にしろ、ジャイアンやスネ夫にしろ、欠点があるからこそ個性的なキャラクターとして輝けるのである。だから、完璧をめざそうとしなくていい。みんながみんな、出木杉君の世界なんて、どう考えたって気持ち悪いじゃないか。