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「リツイートしたら1万円」お金配り行為にイラッとしてしまう意外な理由

石川幹人(明治大学教授)

2022年03月11日 公開 2022年06月02日 更新

 

支援は本当に支援に繋がっているのか?

結局、それからは資本主義が台頭して現代に至ります。資本主義においては、個人が財産を所有することが認められている以上、貧富の格差があることは仕方のないことです。

一方で、キリスト教には博愛主義の考え方があります。個人が富を所有することを必要悪としたうえで、富を持っている者は他者に分け与えようという寄付文化が欧米を中心に根付いているのはそのせいです。

ところが、「お金配りさん」に代表される博愛主義の人たちにも問題はあります。彼らは世界にある不条理な貧困や対立などに関心を持ち、主に寄付という手段で解決しようとします。しかし、 そうした支援が必ずしも功を奏するとは限りません。

なぜなら、寄付を受けた一部の人たちだけが一時的に豊かになることで、格差や対立がより深まってしまい、さらに困窮する人たちが出てくるからです。また、金銭的な支援をすることで、当事者たちが自力で解決する機会をかえって奪ってしまうこともあります。彼らに本当に必要なのは、自分たちの手で問題を解決するための教育や技術的な支援なのです。

「困っている貧しい人たちを助けよう」という博愛主義のお題目に反対する人はいないでしょうが、人類はその根本的な解決策にいまだたどり着いていません。進化論的な観点から見て、77億人以上もの人々が国に分かれて関わり合う人類は、どうすれば公平に幸福になれるのか。

資本主義にも限界がきている現代は、個人の所有する富と再分配とのバランスをどう取るのか、試されている時代でもあるのです。

 

お金配りさんとどう付き合う?

あなたの周りに「お金配りさん」がいるとしたら、飲み会のたびに気前よく奢ってくれる同僚や、気兼ねなくお金を貸してくれる友達などが該当するでしょう。彼らとうまく付き合うコツは、まず自分の心に「お金配りさん」への嫉妬がないか胸に手を当ててみること。

自分と彼はあくまで対等な仲間なのだと思うことで、無用な嫉妬を抱かないようにしましょう。その上で、気前よくお金を出してくれる人に対しては、甘えるのも手です。その際は、あなたが相手に何を返せるかを明確にしておくと、奢ってもらいやすくなるかもしれません。今は借りを作ったとしても、いずれは何かを返す意思表示をすることが、協力関係を引き出すコツだと心得ましょう。

ただし、あなたにお金を出してくれるかどうかは、あくまでも「お金配りさん」の自由裁量です。どうしても助けが必要な状況にいるなら、裕福な人にすがって解決するのではなく、まず頼るべきなのは国や社会制度であることも忘れないでください。

 

あなたがお金配りさんだったらどうする?

寄付をする、気前よくお金を出すという行為は素晴らしいことですが、周囲からの嫉妬心を抑える工夫も必要です。例えば、Amazonは中小企業の商品を購入した購買者にポイントを付与して購買を支援しています。これには、ネット販売力の弱い中小企業を支援する目的に加えて、Amazonに対する批判を避ける狙いもあると思います。

このように、どこかの国の困窮者への寄付だけではなく、近しい対象にも配慮した寄付も考えてみてください。新興国は児童の死亡率が高いですが、それと同時に人口が爆発的に増えているのも現状です。寄付によって個人の命は助かっても、法整備が整わないことで、地球の資源を急速に使い尽くそうとしているという別の深刻な問題も起きています。

世界中の困っている人をもれなく救うことは現実的に難しいので、あなたの周囲に困窮している人がいたら優先的に目を向けてあげましょう。

 

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