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19歳、飼い猫が認知症に...専門家が語る「ごはんを食べない時」にダメな接し方

林ユミ(イラストレーター),小澤真希子(獣医行動診療科認定医)

2023年01月12日 公開 2024年12月16日 更新

19歳、飼い猫が認知症に...専門家が語る「ごはんを食べない時」にダメな接し方

獣医療の進歩で、人間と暮らす動物は長生きするようになり、高齢化ならではの悩みが増えています。病気だけでなく、耳が聞こえにくくなる、食べものの好みが変わる、ジャンプ力が衰えるなどの未病にも柔軟に対応できると、人間も動物もハッピーですね。

一緒に暮らしていた19歳のねこ・ボンが認知症になったイラストレーターの林ユミさんが、ねこの老化とどんな風につきあっていくのがよいのか、獣医行動診療科専門医の小澤真希子さんに聞いてみました。

※本稿は、林ユミ著、小澤真希子監修『吾輩は認知症ねこである』(小学館)から一部抜粋・編集したものです。

 

耳が遠くなり、好みの変化も...未病もたくさん

【ユミ】認知症と老化の変化は区別しにくいと思いますが、ねこが老化するとどんな変化が起きますか?

【小澤】ねこは年をとると、とにかく病気が増えます。腎臓病は本当に多いです。あとは関節炎も結構あります。

認知症に近い症状で、甲状腺機能亢進症というホルモンの病気もあります。腎臓病になると、そのせいで高血圧になることがあるんです。高血圧も、行動の変化をもたらすような病気です。便秘もよくありますね。

【ユミ】病気のオンパレードだ。ヤムも16歳で肥大型心筋症がみつかりました。

【小澤】病気とまではいえない未病としても、運動機能が弱まってくる、高いところに登れなくなる、歩く速度がゆっくりになるなどの変化が出てきます。耳が聞こえにくくなる、目が見えにくくなるというのもあります。

【ユミ】ボンもかなり耳が聞こえなくなっていました。好みの変化もあると聞きますが。

【小澤】はい。好みの変化もあって、食べものや居場所の好みも変化しますが、病気や体の老化に合わせて、少しずつ変化するというケースが多いかなと思います。歯が悪くなってきて食が細るとか、食べやすいものを好むようになるなど。

【ユミ】病気なら治療となりますが、未病だと、どんな付き合い方をすればいいですか?

【小澤】おたがいに無理のない付き合い方がいいです。好みが変化してきたら、変化に合わせてあげること。「食事はこれまで通りカリカリで!」みたいにこだわる必要はないです。居場所も、高いところより低いところが好きになったら、そっちをよく整えてあげるとか。好みの変化に柔軟に合わせていくことが必要です。

【ユミ】「これまで」にこだわらない方がいいんですね。

【小澤】あとは、未病的なこと、食事管理や体重管理も、動物病院に相談しながら行うことを私はおすすめします。自己判断だと、間違った方にいくこともあるので。

【ユミ】それはこわいですね。よかれと思ってやったことで苦しめるのは避けたい。

【小澤】あと、ねこは老化で目や耳が悪くなるので、周囲を察する能力が低下してきます。

ちょっとさわっただけなのに、突然触られてすごくビックリ!! という反応になってしまうこともあるので、関わるときは何であれ、丁寧にゆっくり関わりましょう。もともとねこは、「ゆっくり関わる」のが好きなんですよ。

 

悩ましい...ごはんを食べる食べない問題

【ユミ】ボンが食べなくなったのは認知症の影響なんでしょうか?

【小澤】ボンちゃんの場合は、食欲がいったんなくなって、また回復をしているので、食欲の低下が認知症の症状であったかはよくわかりません。でも、一般的に食事の介助が必要になるのは、認知症の動物だとよくあることです。ボンちゃんは、シリンジだと食べたんですね?

【ユミ】シリンジは苦手な子も多いと聞きますが、うちはよく食べたんですよ。

【小澤】よかったですね。認知症だと食欲があっても、口がうまく動かないとか、食べものをうまく見つけられないなどで、シリンジで食事を補助することがあります。

【ユミ】シリンジごはんは、無理に食べさせてるんじゃないかとすごく悩みました。

【小澤】よくわかります。ねこが食べない理由は色々ありますが見極めは難しいです。食事管理についての注意点は、その子その子で必要量が変わってくるので、パッケージに書いてある量を目安とは考えないようにということ。月1回でもいいので体重を測って、減ってきてるようだったら追加するし、増えてるようだったら無理のない範囲で抑える。

a/d缶は脂肪分が多いフードです。その分、少量でカロリーをとれますが、脂肪分が多いので、消化器系の負担が大きく、下痢を起こすこともあります。獣医師と相談の上であげるのがベストです。

【ユミ】介助の食事をイヤがったら、どうすればいいですか?

【小澤】口に入れてもペッペッペッペッと全部出すような状態ならば、無理やり与え続けると、食事自体を拒否するようになることもあります。そうなると、もう最悪の事態になってしまいます。

【ユミ】そうなったらどうすればよいですか!?

【小澤】場合によっては動物病院で食欲増進剤をもらうこともできます。食事を全然受けつけないとなったら、それは本人の意思として尊重してあげて、無理して食べずに、さいごを穏やかに迎えるという選択肢もありだと思うんです。

どの選択肢が正しいというわけではありません。いろいろな方法があるので、まずは選択肢をよく知ることが後悔しないためにも大切なことと思います。食べない理由を知ることも大事です。獣医師に相談するのがいいですよ。

 

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