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70代まで働く時代の到来...人生後半のキャリアを分ける“リスキリング”とは?

大賀康史(フライヤーCEO)

2022年12月28日 公開

 

隣接領域から新たなスキルを獲得

欧米にはアプレンティスシップ制度という優れた仕組みがあります。日本語で表現すると「企業における職業実習訓練制度」です。

大まかに表すと、スキルを獲得するために新しい職種に就く見習い制度で、やや給与は低めながらも報酬を得ながら就業時間内の実践機会を得ることを実現するものです。国や自治体から企業向けに学習費用や人件費の補填がなされることも重要な点です。

終身雇用の良さも当然ありますが、環境の変化にスキルが追い付いていない人がいることを想定すると、日本でもぜひ推進され、浸透していってほしいと感じます。

新たなスキルを獲得する上で、まずどのような職種に移行するかを考えることが有効だと言われています。本書では今のスキルの隣接領域を見出すことが良いといいます。

例えば、航空会社や観光業界でサービススタッフとして働いていた人が次の仕事を探すケースでは、競合他社に勤めるという選択肢だけでなく、培ったホスピタリティの精神やスキルを活用して、介護職に就くことも考えられます。

今の具体的な業界やスキルを少し抽象的に眺めることで、一見全く異なる業界も本質的には近いことをしているという事実が見つけられます。その際に学び直しは必要となるものの、まったく似たことをしていなかった人と比べると、随分近いところにいると言えるのです。

 

「リスキリングをし続ける姿勢」が重要

次に目指す職業が見つかったならば、今の仕事とのギャップを埋めたいと思うものの、何をしたらよいかわからない人も多いかもしれません。

その場合、いきなり難易度の高いハードスキルの習得をするのではなく、今の仕事で学んだことに近いソフトスキルから着手すると始めやすいのではないでしょうか。一歩でも始めたら、一歩目よりは二歩目は踏み出しやすく、段階的に学びが進む可能性が高まります。

海外では新しい領域のスキル学習の早い人を「ファーストラーナー」と呼び、転職時にも同じ会社の中でもとても重宝されると言われています。

リスキリングで学ぶテーマは数多くありますが、最も大切なスキルは「リスキリングをし続ける姿勢」だと考えられます。日々、課題に思うことを速やかに学ぶ習慣が身につけられれば、これからも変化に対応し続けることができるでしょう。

本書は話題となり始めた「リスキリング」という取り組みを、いち早く体系的まとめて世に送り出された貴重な1冊です。企業において教育制度を考えなければいけない人事部に加えて、今後の人材確保の方法を考えている経営者の方にはまずお薦めできます。

その他にも、リスキリングという言葉をより深く理解したいという人にも適しています。また、今の仕事に漠然とした不安を抱えているビジネスパーソンにとっては、これからのキャリアを好転させていく重要なきっかけが得られるでしょう。気になる方は通読してみてはいかがでしょうか。

 

著者紹介

フライヤー(flier)

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