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“猫の神話”は多いのに、なぜ“12星座”に猫がいない? 占星術研究家が考える理由

沖昌之(猫写真家)、鏡リュウジ(占星術研究家)

2023年02月17日 公開

“猫の神話”は多いのに、なぜ“12星座”に猫がいない? 占星術研究家が考える理由

2月22日は「猫の日」! 今回は『必死すぎるネコ』シリーズで大人気の猫写真家・沖昌之さんと、占星術研究家・鏡リュウジさんのスペシャル対談をお届けします。

長年にわたり、地域猫を中心に写真を撮り続ける沖さんと猫とのご縁を、鏡さんが翻訳・監修した『月と太陽でわかる性格事典 増補改訂版』と共に楽しく紐解いていきます。

本稿では、沖さんが出会った「運命の猫」、そして鏡さんによる「猫」にまつわる不思議なお話について紹介します。

※撮影:寺田須美、取材・文:金澤英恵
※猫の写真:沖昌之(『必死すぎるネコ』より)

 

大晦日の公園で出会った、外猫らしからぬ「ふくよかな猫」

沖昌之
ぶさにゃん先輩。

――沖さんは来年、猫写真家として10周年を迎えるそうですが、猫を撮り始めたのは1匹の「運命の猫」との出会いがきっかけだったそうですね。

【沖】「ぶさにゃん先輩。」と名付けた外猫ですね。出会った当時、僕は婦人服販売のお店で働いていて、撮影補助の仕事でカメラを持ち始め、少しずつ撮るのが楽しくなってきた時期でした。

とはいえ仕事は激務で、2013年の大晦日も働き詰め。なんとか休憩時間を見つけて、店の近所の公園でやさぐれていたんです。そうしたら、公園の道のど真ん中にアメショー柄のグレーの毛並みが渦を巻いている、ものすごい存在感を放っている猫がいて。それが「ぶさにゃん先輩」でした。

家猫が外猫になると痩せ細ってしまうと思い込んでいたんですが、ぶさにゃん先輩はめちゃくちゃふくよかで(笑)。「なんか想像と全然違う猫がいる!」と思ったらどんどん興味をそそられて、そこから毎日カメラを持ってぶさにゃん先輩に会いに行くようになりました。

【鏡】 沖さんは元々よく猫を撮っていたんですか?

【沖】猫は大好きだったんですけど、被写体としては見ていなかったんです。猫を撮るようになったのは、ぶさにゃん先輩と出会ってから。その後会社を辞めて独立するわけですが、僕にとってはあの日がまさにターニングポイントでしたね。

【鏡】動物って人生のガイドになることもあると思うんですよね。社会のルールに縛られている人間にとって、動物は常識の世界から自由な存在ですから。中でも猫は特別なんじゃないでしょうか。

何千年も人間のそばで暮らしていながら完全に「飼いならされて」はいなくて、ときどき言うことを思うように聞いてくれない。懐いていながら気まま。

人間社会と自然世界を自由に行き来している。だから僕たちの常識をよく知りながら、そこから解放される知恵を持っているように見えるんじゃないでしょうか。

 

「猫と占星術」の意外な関係

沖昌之

【沖】人生のガイド...すごく面白いお話ですね。猫は占星術とも縁が深いんですか?

【鏡】猫をテーマにした占星術の本はたくさんありますし、タロットも猫の絵柄のみが描かれた「猫タロット」のジャンルが確立しているほど人気です。

海外だと「Cat Zodiac」「Cat Horoscope」といった"猫を読み解く星占いの本"もたくさん出ているんですよ。占星術の世界でよく言われるのは、動物は「月の星座」が大事だということ。動物は本能で生きているので、身体性を象徴する月の星座の影響が強いとする占星術家が多いようです。

【沖】猫を飼っている方は、ぜひ知りたいところですね。

【鏡】僕がイギリスで占星術を学んだマギー・ハイド先生のご夫妻も猫を飼っているんですが、「うちの子は牡牛座だから、食の選り好みが激しくて」っておっしゃっていました(笑)。

【沖】それは猫が生まれた日時や場所で占うんですか?

【鏡】基本的にはそうですが、沖さんのように「出会った日」の月のサインで見ることもできます。出会った日を"2人の誕生日"とみて、その人と猫の"ご縁の形"を表すイメージを見ると考えてもいいかもしれませんね。

沖さんとぶさにゃん先輩が出会った2013年の大晦日を『月と太陽でわかる性格事典』で紐解くと、月のサインが「射手座」です。射手座は「遠くの世界に連れていってくれる」「世界を広げる」そんなイメージを持っています。

【沖】猫写真家になって写真集を出せたのもぶさにゃん先輩のおかげなので、そのイメージはまさにという感じです。

【鏡】大晦日というのも年の切り替えの時ですから境界を"またぐ"タイミングですよね。"沖"さんというお名前も、岸辺から遠く離れた海原をイメージさせます。ぶさにゃん先輩との出会いには、そうした「遠くの世界へいく」「世界が広がる」シンボリックなものが色々と重なっている気がしますね。

 

あっちにもこっちにもいい顔!?「ボブ」に学んだ処世術

鏡リュウジ

――出会った日からご縁の意味を知れるなんて、とっても素敵ですね! 猫写真家の沖さんはもちろんですが、鏡さんもとてもソフトな印象なので、猫に好かれそうな気がします。

【鏡】僕ですか? いやあ、これが全然好かれないんですよ。ただ、2〜3匹だけ仲良くなれた子がいて。一番印象に残っているのは「ボブ」ですね。ある日、見知らぬ猫がだーっと走り寄ってきたと思ったら、「おい、お前んち入れろ〜」みたいな顔をされたんです。

僕は猫を飼ったことがないので最初は戸惑ったんですけど、ミルクを買ってきて飲ませてあげたら、家に頻繁に顔を出すようになって。でもある時、他のお宅でも同じことをしていたと知って、結構ショックでしたね(笑)。

【沖】それにしても、猫の処世術ってすごいですよね。いつもは地域猫のコミュニティにも顔を出さない、遠くをトコトコ歩いている孤高なタイプなのに、ご飯前になるとしれっとコミュニティの周りにいたりするんです。

しかも「ずっといましたけど?」感を出しながら(笑)。ご飯をもらうっていう目的遂行のための処世術は、自分も学ぶべきだなって、その子を見てて思いました。

【鏡】ボブはオス猫だったから、よく大喧嘩してケガしていたんです。でも、近所でお世話している人がたくさんいたから、誰かが病院に連れて行ってくれるんですね。

縄張り争いしてる他の外猫からしたら、「あいつやっつけたはずなのに、3日で復活してやがる!」「ターミネーターみたいなやつだな...」って思われていたかもしれないですね。ボブみたいな猫がいる一方で、絶対に寄ってこない猫もいますよね?

【沖】いますいます。僕は猫写真家なので、猫のほうから寄ってきたり、どんな猫とも距離を詰めるのが上手いと思われがちなんですけど、実際はバンバン逃げられてますからね。数十メートル先で目が合っただけで、猛ダッシュで逃げていく子もいますし。

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歴史の中に消えた「ねこ座」

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