コミュニケーションは言葉よりも顔
メールでの報告ではなく、対面でのミーティングにこだわりました。メンバーの「顔」を見るためです。
コミュニケーションは言葉よりも表情や態度のほうが多くの情報を伝えてくれます。もし、メンバーが与えられた仕事や仮説に違和感を持っていたり、進め方がわからなくなっていたら、それは顔に出るはずです。
ちょっとでも表情に違和感があれば、こちらから聞いてみます。メンバーは、一人で「ああだこうだ」悩みがちで、なかなかマネジャーにまで悩みを持ち込んでくれないものですから、こちらから違和感を発見して悩みを引っ張り出すのです。
昨今はオンラインの仕事も増えていますが、オンラインミーティングでも顔は見ることができますから、同様に違和感を見つけ出すことができるでしょう。
リスク・マネジメントの要諦は、小さなリスクの種や兆しを嗅ぎ分けて、まだ小さいうちにリスクの芽を摘むことにあります。そんな兆しは、経験のあるマネジャーでないとわかりません。少なくとも、メンバーよりは嗅覚が働くはずです。
顔色がすぐれない原因が、個人的な事情であったりキャリア上の悩みであったりする時もあります。仕事には関係ないとはいえ、マネジャーはそうしたことの面倒も、できることであれば見てあげる必要があります。
そうしないと、良いパフォーマンスで仕事をしてもらえませんし、当人にも成長してもらえません。第一、一緒に仕事をするこちらも楽しくありません。
「ウェルビーイング」を大事にする世代をマネジメントするに当たり、これは決定的に重要なことです。
すぐに相談できる雰囲気づくりを
高頻度にミーティングを行うことのもう一つの意味は、「メンバーがマネジャーをいつでもつかまえることができる」機会と環境を作るということです。
メンバーがトラブルに直面した際、あるいはトラブルの芽を感じ取った際、マネジャーがすぐに相談に乗れればいいのですが、実際にはいつも余裕含みでメンバーが駆けこんでくるのを待っていられるようなマネジャーは多くはないでしょう。上司に呼ばれ、顧客に呼ばれ、トラブル処理に大わらわなはずです。
しかし、1日1回、短時間でもメンバーと顔を合わせる時間を持てば、彼らも気軽に相談ができます。もちろん、こちらが「仮説はどうだ?」「分析はどうだ?」「顧客の反応は?」「大丈夫か?」などと声をかけてもいいでしょう。
とにかく、メンバーの顔を見ること。それが、最大のリスク・マネジメントであり、ムカデ型ミーティングの最大の目的なのです。
最長でも30分の「一本勝負」
ミーティングにかける時間は、長くて30分というところでしょう。高頻度であればいままでの議論を復習する時間も不要ですから、自然と時間も短くなります。
ただ、短時間であることのより大きな意味は、「頭が高速回転する時間以上の長さのミーティングをやってもしょうがない」ということです。
どんな人間でも、集中力が続く時間は限られています。居眠りをする人がいるようなミーティングは、そもそも無駄です。
しかも、マネジャーは「ブレインジャック創造思考」でメンバーの話を聞く必要があるのですが、これは想像以上に疲れるものです。
メンバーの話を聞いて、質問をして、自分の頭の思考領域を拡大させていくためには、頭をフル回転させなくてはなりません。私は、毎回30分が限度でした。
昨今のコロナ禍により、直接顔を合わせる機会がめっきり減っている会社も多いはずですが、それでも私は顔を合わせることにこだわってほしいと思います。オンラインでも顔が見えれば十分代替できます(私はオンラインでのテレワークに肯定的です)。