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親子関係だって選んでいい...母が「祖母の借金を肩代わりした過去」を明かした理由

岸田奈美(作家)

2023年05月03日 公開 2024年05月30日 更新

 

親子であっても関係性は自ら選んでいくしかない

誰もが家族のことで人に話せない苦労や辛さを抱えていると思います。

いわゆる毒親・親ガチャのような近年の親子問題については、人の性格も関係性も全く異なるので、私に「こうだ」と言えることはないです。ただ、ひとつ思うのは、誰と一緒にどういう距離で生きていくのが幸せなのかは、自らで選んでいくしかない、ということです。

実は、父が亡くなった後、母は自分の親(私にとっては祖母)の借金の肩代わりをしていたらしいんです。それも、貯金や父の保険金でも足りないほどの額を。生活を切り詰めてでもなんとかしようとして、結局自分が倒れてしまいました。

「自分の親が子どもにお金を無心するなんて恥ずかしくて誰にも相談できなかった」と。母は3度も倒れてからようやく「そういう親になってないかってすごく不安で、奈美ちゃんにうまく頼れないんだよね」と私に打ち明けたんです。

ただ我慢強いだけがいいんじゃないって、母も50歳過ぎでようやく気付いて、一歩踏み出そうとしたんだと思います。そんなふうに、親子ですらわかってあげられないことはあります。わかってもらえるはずと思って、期待しちゃうともっと辛くなるかもしれない。人に期待をするって結構残酷なんですよね。

 

しんどいときは、少しでも気持ちが動く方に

岸田奈美

母が倒れた後、私も八方塞がりになったことが幾度もありました。現状維持すら難しい、生きていくために選択を迫られる....そんなときは「これだけは絶対に手放してはいけない」っていうものを見極めるしかない。

私が一番大事だったのは、家族みんなが生き延びること、ただそれだけでした。それまで、家族離れ離れなんてかわいそうだっていう思い込みで、勇気がなくて動けなかったんですけど、「このままやったら終わるから、みんな腹くくって解散や」って、母が持ち直すまでの間、弟はグループホーム、祖母は高齢者施設へ。のちに「戦略的一家離散」と命名しましたが(笑)、そのおかげでみんなが窮地を回避できました。

どうしようもなくしんどいとき、究極の選択には「どちらが愛を感じるか」、もうそれしかないですね。体はつらいかもしれないけど心は絶対元気になれるとか、気持ちが動く方に向かう感じで、「ここにいたら落ちそうだから、ちょっとだけそっちに行く」くらいできたら。

たとえ間違ったとしてもいいんですよ、間違わないとわかんないことってあるから。私なんて今や、間違っていても「こっちのほうがおいしい(おもしろい)かも」と思ってしまう、そうなったら最強(笑)。たとえお金を失ったとしてもそれは後からなんとでもできる、だからそうやって動いた自分を許していいんです。

私が何かやるたびに誇らしそうに笑っていた父の顔を思い出しながら、「父だったらなんて言っただろう」ではなく、「きっと父ならこう言うだろう」と、私も少し自信を持って動いていけたらって思います。

岸田奈美

 

著者紹介

岸田奈美(きしだ・なみ)

作家

1991年生まれ、兵庫県神戸市出身。大学在学中に株式会社ミライロの創業メンバーとして加入、10年に渡り広報部長を務めたのち、作家として独立。 世界経済フォーラム(ダボス会議)グローバルシェイパーズ。 Forbes 「30 UNDER 30 JAPAN 2020」選出。

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