話がかみ合わない...職場で「意見の対立」が起こる本質的な原因
2023年08月18日 公開 2024年12月16日 更新
「相手と情報が重ならない部分」をどう埋めていくか
この二人が20代の女性向けの商品開発に関しての議論をしていると考えてみよう。下の長方形は、AさんもBさんも共通認識として持っている部分を指す。
例えば、目指すべきターゲットは20代女性であるという大前提や、20代女性がどのくらいのボリュームなのか、自由になるお金がどのくらいかといった定量データや、「この世代の女性は価格を重視している」という過去のマーケティングの結果などが、この共有部分にあたる。
一方、その上に飛び出している部分は、AさんとBさんとで共有されていない、あるいは情報に差があることを示している。白い部分がAさんの持っている情報を表し、斜線の部分がBさんの持っている情報だ。
例えば、Aさんは自分の友人たちから得た情報として、20代の女性にとって何よりも大事なことは、写真撮影をしたときにどう映るかであるという情報を得ている。ところが、Bさんはこの情報を持っていない。これは左端の白色の部分の「Aさんのみの情報」である。
一方、Bさんは過去に自分が行ったインタビュー調査から、彼女らにとって大事なことは機能がきちんとしていることだという情報を持っている。これはAさんが知らない情報だとすると、右端の斜線の部分になる。
もちろん、お互いに少しずつ知っているが、情報量が異なるケースもある。デザインについてはAさんのほうがBさんより深い情報を持っているとすれば、これは左から2番目の部分のような形になる。
もちろん逆にBさんのほうがたくさん情報を持っているケースもある。これは右から3番目である。
異なる認識を持つ人同士が議論を効果的に進めるには、自分たちの間で何が共通の情報で、何が自分だけの情報か、あるいは何がお互いの間で食い違っているかを早い段階で把握することだ。
その際、この図を頭に置きながらコミュニケーションを取ることが大事になる。つまり、自分と相手の情報にはどういった共通点があり、どんな差があるのかを常に意識しておく、ということだ。
「知っていることをとうとうと語る」セールス担当の愚
先ほどの図を念頭に置きながら、どのようにコミュニケーションを取ればいいのか。これもまた、「アウトプット」によって決まってくる。
まずは相手を「説得」するケース。その場合は「自分は持っているけれど、相手は持っていない情報」を使うのがカギとなる。
あなたが自動車販売会社のセールス担当で、そこに一人のお客さんが来店したとする。その人はすでに欲しい車が決まっており、ただ、価格が高くて迷っている。この場合、どういうセールストークをすべきか。
その車の魅力をとうとうと語ったところで意味はない。その人はその車に魅力を感じており、情報も持っている。これはお互いにとっての「共通の土台」でしかない。
そこで、相手が持っておらず、自分だけが持っている情報とは何かを考えてみる。
話を聞くと、走行性能についてはかなり詳しい一方で、コスト面についてはあまり情報を持っていないようだ。ならば、「今この車を買うと補助金が出る」といった情報や、「燃費がいいことは知っていると思うが、具体的には他社の同クラスの車と比べて年間〇〇万円のコストダウンになる」といった情報が説得材料になる可能性があるだろう。
営業シーンでよく見られるのが、相手のよく知っていることを延々と時間をかけて説明し、顧客をうんざりさせてしまうこと。そうではなく、相手の知識レベルを探り、必要最低限の情報を提供するほうが、説得の効率は上がるはずだ。