言葉が上手く出てこない人が、苦労せず自分の考えを話せるようになるにはどうしたら良いのか。佐藤政樹氏は、「書く」ことが話し方のトレーニングになると明かす。本稿では、「書くこと」で得られるメリットと、その方法について紹介する。
※本稿は佐藤政樹著『人を「惹きつける」話し方』(プレジデント社)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
書くことで得られる5つのメリット
「考えや想いはなんとなくあるのだけど、言葉が出てこない...」
こういった悩みを解決するのが、これから紹介する「話すための書く練習」です。私たちの頭の中には、いつも漠然とした考えや想いがあります。その考えや想いを、適切な言葉にして自分の中から引き出し相手に届ける行為が"話す"ということです。
言葉が上手く出てこない人は、言葉を自分の中から引き出せていない状態です。その原因は、「そもそも自分の中に言葉が存在しない」、もしくは「あってもそれを瞬時に引き出せない」「ふさわしい言葉を選んで、つむぐことができていない」のどれかでしょう。
"書く"のは、その言葉を自分の中にストックし、"考え"や"想い"を言葉に変換するための話す前の訓練なのです。ではここで、皆さんに、"書くこと"で得られる5つのメリットをあげておきます。
【書くことで得られる5つのメリット】
1. 知識としての語彙が増える
いざ書こうとすると、適切な言葉が出てきません。みんな同じです。そこで考えはじめます。適切な言葉は何か? 自分の中にまだ存在しない言葉を"考え、検索して、調べて、それを使用する"の繰り返しを通じて、語彙がだんだんと増えていきます。
2. 言葉が身体にストックされる
知識としてはすぐに思い出せなくても、ふとしたきっかけで、口から自然と言葉が出てくるようになります。とくに経験談など自分のエピソードを書く練習を通じてまとめると、ひもづいた言葉が無意識のうちにあふれ出ることがあります。
3. 深く考えるチャンスになる
何か失敗したときや問題が起きたときにも、書くことで物事をより深く考えるチャンスが増えます。「そもそも根本的な原因は何か?」のような問いなどを通じて、問題や失敗を人のせいにすることも減ってきます。人としての魅力も深まります。
4. 振り返りの習慣が身につく
上手くいったこともいかなかったことも、「振り返る習慣」が最強の学習効果をもたらします。自分と向き合い、改善して次につなげる、いわゆる「PDCA」が無意識のうちに回りはじめます。忙しい日々の中でもいったん立ち止まって考えることができるので、長い目で見ると思考の量に大きな差がつきます。
5. 自分を客観的に見る目が育つ
紙やモニターに文字を起こすプロセスを通じて、自分の考えや感情を自分から切り離すことができます。ロールプレイングゲームで画面の中のキャラクターをコントロールするときの自分のように、少し俯瞰的に、客観的に眺めることで、現実を冷静にとらえられるようになります。
「だから何?」でも書いてしまおう
話すための書く練習のテンプレート初級編はこちらです。これを実践することにより5つのメリットが手に入るのですが、まずは1「語彙が増える」と2「言葉が身体にストックされる」が培われることを体感してみてください。
【コンテンツ】→【気づき】→【行動】
【コンテンツ】日々の生活の中で自分が経験・体験したことや出来事は、すべてコンテンツです。You Tubeで見た動画も、読んだ詩や本や映画も、購読しているメルマガやビジネス雑誌なども同じです。
【気づき】コンテンツを通じて、自分の中で新しく生まれた気持ちです。単なる感想から、アイデア、視点、考えや問題点もすべて気づきです。
【行動】気づきを踏まえて、コンテンツから何を学び、「自分に」どう役立てていくのかを文字にしましょう。これからやってみようと思ったこと、実行すると決めたことです。アイデアベースで構いません。
例として、実際の私のメモを紹介します。
【コンテンツ】先日、電車の中でスマホを見ていたとき、ふと顔をあげると富士山が見えてとても綺麗だった(→体験)。
【気づき】車内に目を移すとその場にいた全員がスマホを見ていて、富士山に気づいていなかった。スマホよりも大切なものはたくさんあるとそのとき思った(→考え)。
【行動】スマホに人生を支配されないようにまずは1週間距離を置いてみよう(→未来)。
最初は、このような3行程度の日記レベルでいいので続けていきましょう。量をこなすと文量も徐々に増えていきます。
いかがでしょう。難しそうですか? もしかしたら、例を読んでみて「だから何?」と思った方もいるかもしれませんね。書く内容自体は、それくらいのことで構いません。この書く練習の目的は、【気づき】を抽出すること。
自分が経験したことを垂れ流しにすることがなくなります。これが話すための言葉をストックするうえで大切です。書く行為を通して考えたことが文字となって見える化され、自分が書いた文章を何度も見返すこともできるので語彙を増やすうえでも効果が出ます。
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「こんな文章、恥ずかしい」は「30点でOK」と考える