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燃え尽き症候群になりやすい人の特徴は? 定年前後の“心の健康を保つ”習慣

大塚寿(エマメイコーポレーション代表取締役)

2023年09月28日 公開

 

「自分の居場所」は5つ以上持つ

某IT企業の社長を退任されたばかりのJさんとの会食で、本稿の概略を話し、「55歳の現役世代のみなさんへのアドバイス」を求めてみました。間髪置かないJさんのコメントは、「自分の店を持つこと」。

「えっ?」と一瞬、意味が分からずキョトンとしている私に対して、一口ビールを飲んだ後、Jさんは言葉を続けました。

「『自分の店』って、『自分が贔屓にしている店』のこと。できれば、鮨屋がいいなぁ。自分では、できなかったんだけどさぁ」ということで、私も納得がいきました。

その本質は、55歳以降は人から褒められることなどなくなるけれど、店なら褒めてくれるから、というセルフ・モチベーション・コントロールのお話でした。

50代以前は飲み屋やスナックでもいいのだけれど、55歳からはなぜか、Jさんは鮨屋推しでした。

なぜ、鮨屋なのかと尋ねると、「分厚い白木のカウンターで大将の前に座り、何も言わなくても、旬のおつまみが一通り出て、最後は好きなネタから握りが出て、その厳選されたネタの味が前頭葉に沁みわたっていく。それが、究極の褒められ方」という、かなり個人的な趣向の回答。

さらには、「究極に褒めてくれるのは肉ではなく、EPA(エイコサペンタ酸)が大量に含まれる新鮮な魚でないと、だめだね」という完全な「自分へのご褒美系」の決着となり、私の納得感も高まりました。

Jさんの場合は自分へのご褒美として、お好みのお鮨屋推しでしたが、大切なのは、そうした自分へのご褒美の店と認識できる贔屓の店を持ちましょうということです。

この贔屓の店というのは、いわば自分の最高の居場所としてのポジショニングとなります。

50代も中盤ともなると、誰も褒めてくれないというのは、言われてみれば確かにそうで、自己満足では自己愛を満たすことができず、何も対処しなければモチベーションは低下していくばかりです。

よくパフォーマンスの落ちたシニアとか、「仕事をしないおじさん」と揶揄されてしまうのは、そのあたりが遠因になっているのかもしれません。

組織の中で誰からも褒められず、評価もされなければ、無力感を学習してしまい、モチベーションもパフォーマンスも逓減してしまうのは理に適っています。ならば、自分へのご褒美を象徴する居場所を持つというのは、賢い方略です。

 

1つだけの「ペルソナ」に縛られると、心を病む

55歳になったら会社と自宅を含めて構いませんが、自身の心身の鮮度を保つために、いや、鮮度を高めるために「自分の居場所」を5つ以上持つことを提唱します。

以前、「ホンマでっか!?TV」でブレイクした心理学者の植木理恵さんと対談した時に、「心の健康を保つためにも、1人の人間が5つくらいのペルソナを持つことが大切」と教わりました。

念のため、キャラクターのことを心理学では「ペルソナ」と呼びますが、ある調査によれば、心の健康を損ないやすい職業の1位は教師で、2位が専業主婦、3位が宗教家という、1つだけのペルソナに縛られやすい環境や環境の人だったそうです。

逆に、社内では「切れ者技術者」であっても、家庭では「子どもに優しいお父さん」だったり、「釣りに没頭する趣味人」だったり、それに取り組んでいる時は集中して他の何者でもなくなっているというような時間をつくるということが、心を健全にしておくには大切なのだそうです。

そのために必要なのが、居場所です。居場所が変われば、当然、相手との関係性でキャラクターも変わってきます。

例えば、仕事はできるのに、会議や客先で何も発言しない寡黙な技術者がカラオケに行くと豹変してしまい、司会まで買って出るといったケースです。会社と大好きなカラオケではまったく異なるキャラクターになってしまうのですが、これは心の健全を保つには非常に好ましいことなのです。

このように、55歳からはメンタルやセルフ・モチベーション・コントロールのためにも、5つ以上の居場所を持つようにしましょう。

 

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