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富裕層が集結? さいたま市はいつから“恵比寿を抜く人気都市”になったのか?

竹内謙礼(有限会社いろは代表)

2023年11月14日 公開 2024年12月16日 更新

 

なぜ、あえて人はさいたま市に住もうとするのか?

2019年のヒット映画『翔んで埼玉』で、さんざんイジり倒されていた埼玉県の中核都市のさいたま市が、千葉県どころか、名だたる東京都内の都市を抑えて人気の街として注目されていた。

さいたま市は交通の便がいいし、東京よりも安い地価で住宅が買えるメリットがあることは理解できる。

しかし、その条件であれば、神奈川県や千葉県にも似たような街はたくさんある。首都圏を探せば、東京に近くて安い地価の街などどこにでもあると言っていい。

『SUUMOジャーナル』が2023年6月に公開した、東京駅まで電車で30分以内の家賃相場が安い駅のランキングデータによると、1位は千葉県の「南船橋」の5.4万円、2位は東京都江戸川区の「葛西臨海公園」の5.8万円。

対して、「浦和」がようやく30位にランクインしているが、家賃は7.13万円と決して安いわけではない。

大宮駅前にはそごうと高島屋、浦和駅には伊勢丹やアトレ、パルコがあり、その周辺にはオシャレなカフェがたくさんある。買い物に便利な街であることも人気の理由のひとつだと思うし、ターミナル駅として各路線に自由に乗り換えができることも魅力といえる。

しかし、交通の利便性だけでいえば、横浜もあるし、買い物であれば東京23区のほうが圧倒的に立地条件で有利である。それなのに、なぜ、あえて人は「さいたま市」に住もうとするのか?

 

可処分所得は政令指定都市で1位

知人にマウントを取られてからというもの、私は暇さえあれば、さいたま市の情報をかき集めるようになっていた。

たとえるなら、クラスで目立たなかった子に突然、トップアイドルとしてデビューされたような気分である。なぜ、さいたま市が首都圏を代表する人気都市になったのか、その経緯を知りたくなった。

そして辿り着いたのが、一般財団法人日本総合研究所が2年ごとに発行している「全47都道府県幸福度ランキング2022年版」だった。

「さいたま市/政令指定都市幸福度ランキング 総合3位」

「幸福度ランキング」とは、人の幸福感を具体的に評価する尺度として、健康、文化、仕事、生活教育など、様々な指標のもとで評価したランキングである。さいたま市は全国20の政令指定都市の中で、3位の位置につけていたのだ。

ちなみに、私が住む千葉県の政令指定都市・千葉市は11位で、吉村知事の人気で注目されている大阪市は17位と下から3番目である。

しかも、さいたま市は政令指定都市の調査が始まった2016年に1位を獲得、その後、2018年に2位、2020年に1位と、トップ3から一度も落ちたことがない。

さらに細かい数字に目をやると、さいたま市の驚くべき評価が見えてくる。

少子高齢化の時代に、人口増加率は2位、しかも、給与が上がらないと嘆くサラリーマンが多い中で、勤労者世帯可処分所得は政令指定都市で1位である。

つまり、富裕層が続々とさいたま市に集結しているのである。

こんな数字を見せつけられてしまうと、「ダサイタマ」という古い流行語にとらわれていたことが恥ずかしくなる。いかに自分が無知で頭が固く、田舎者だったのかということを思い知らされた。

 

2016年からすでに人気都市だった

ここで気になるのは「いつから」さいたま市が人気都市になったのかという点である。

どこかのタイミングで大きな変化が起きたのではないかと思い、「全47都道府県幸福度ランキング」の政令指定都市の調査が始まった2016年、2018年、2020年の3冊のバックナンバーを取り寄せて検証してみることにした。

しかし、さいたま市の人口増加率は、2016年と2018年は4位、2020年、2021年は1位と、すでに2016年頃には人気都市としての地位を不動のものにしていた。

しかも、勤労者世帯可処分所得に関しては、調査以来1位から一度も落ちたことはなく、その点からも、2016年にはさいたま市は人気都市になっていたことが分かる。

さらに過去のデータにさかのぼり、SUUMOの住みたい街ランキングの調査結果を追ってみることにした。

調査した年によって審査の諸条件、リサーチ方法に若干の違いがあるものの、さいたま市を代表する「大宮」「浦和」「さいたま新都心」の3つの街がランキングに入り始めるのは2018年頃のようである。

トップ10に入り始めた大宮に引きずられて、他の2つの都市の順位が大きく引き上げられている。

つまり、さいたま市が人気都市になったのは、2016年前後の可能性が高く、何かこの時期に大きく都市が転換する出来事があったことは間違いないようである。

 

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