“迷路絵本”作家・香川元太郎さんの人生を変えた「40代の大きな賭け」
2023年11月10日 公開
累計300万部を超える「迷路絵本」作家の香川元太郎さん。緻密で美しいイラストと迷路に散りばめられた仕掛けは、子どもも大人も楽しめる絵本として20年以上愛され続け、2023年11月には新作『地獄の迷路 妖怪たちと鬼の城をめざせ!』を発表します。
じつは、迷路絵本の制作を始めたのは40歳を過ぎてからだという香川さん。絵本を作るに至った経緯や当時の心境、今後挑戦してみたいことについて語ってくださいました。
40代で「迷路絵本」をはじめた
――イラストレーターとして初めは城など歴史関連の絵を描いていらした思います。それから40代半ばで迷路作家の道に進まれましたが、新しい挑戦に迷いはなかったのでしょうか。
【香川】じつは迷路は幼かった息子に描いてと頼まれて、30代の頃に描いたことがありました。それを息子はすごく喜んでくれて。それを見たとき、迷路って永遠に尽きない遊びだと確信しました。だからずっとアイディアとしては持っていたんですが、歴史のイラストの仕事が忙しくて始められなかったんですよ。実際に迷路絵本を始めたのはその10年後くらいですね。
――年齢を重ねるにつれ、新しいことを始めるハードルは上がってくると思います。当時はどんな心境だったのですか。
【香川】やっぱりちょっと"賭け"だなとは思いましたね。ただ、歴史イラストにもブームがあって、多く依頼が入るときもあれば少ないときもある。だから歴史関連の仕事が減ってきたら、迷路絵本の企画を作って売り込もうと前々から考えていました。
40代の頃、それこそPHP研究所の雑誌「歴史街道」で、2年ほど連載用のイラストを描いていました。ちょうどその時期に仕事が途切れそうな予感がしたので、進んでいる仕事と並行して一生懸命に迷路の売り込み用サンプルを作りました。
それを編集者に提案したところ「せっかくなら歴史迷路を作ってほしい」と言われてしまい、ハードルが高いとは思ったんですが、チャンスを逃すまいと作ってみることにしました。
――不安になったりしなかったのでしょうか。
【香川】新しい挑戦に不安になることはあまりなく、どちらかと言うと楽観的なタイプかもしれません。
正直、絵本の世界って儲かるかどうか、出してみないとわからないじゃないですか。売れなければ少ししかお金にならない。それは賭けだと思った半面、"迷路ならいけるだろう"という自信もありました。
20年間迷路を作り続けてきたモチベーションとは
――迷路作りを始めて20年ほど経つそうですね。何かを続けることは大変なことだと思うのですが、そんな香川さんのモチベーションの保ち方を教えていただきたいです。
【香川】常に仕事に追われてきたから、モチベーションについて考える間もなかったですね。
――そうなんですね...!
【香川】迷路絵本も1年に1冊は絶対に出せと言われてるんで(笑) おかげさまで最近、歴史イラストもまた増えてきて、それに押されて迷路の発売時期が段々と後ろにずれ込んでしまっています...。
モチベーションについて考えることはなかったですが、せっかくなら面白いものを作りたいので、今度はこれがいいんじゃないか、あれがいいんじゃないかって考えるうちに気持ちが上がってくることはありますね。迷路も20作となると、どうしてもネタは尽きてくるし、何か新しい切り口ないかなと常に考えています。
これから挑戦したいこと
――ずっとお忙しくされていると思うんですが、もし今後機会があればやってみたいことはあるのでしょうか?
【香川】じつは、これまでに却下された案もたくさんあって...迷路絵本じゃない遊び絵本を作りたいとは思っています。例えば、物語のあるページ数の多い遊び絵本とか。でもそれは採算が取りにくいと言われて...(笑)
あとは間違い探しなんかも作ってみたいです。例えば歴史の間違い探しとか。イラストを描いて、これは歴史的に正しいか間違っているかを解いてもらう本があったら面白そう。いつか時間があればやってみたいですね。
取材・構成:PHPオンライン編集部 片平