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話が長い、専門用語を多用...人望のない上司がする「NGな話し方」

相原孝夫(人事・組織コンサルタント)

2023年11月22日 公開

 

「たとえば」と「要するに」

ハイパフォーマーは、一般論が続いて抽象性が高くなりすぎたと感じると、「たとえば」と言って具体例を挙げたりします。反対に、具体的な話が続いた場合には、「つまり」「要するに」と入れて、言わんとするところをわかりやすく要約してくれたりもします。

どうすれば相手に伝わるかを考えながら話しているので、具体と抽象を自然に行き来することになります。

私はこれまで延べ3000人以上にインタビューを行い、ハイパフォーマーに関する分析を重ねていますが、これらの「たとえば」「たとえて言うならば」や、「つまり」「つまるところ」「要するに」などの言葉はハイパフォーマーのインタビューでは何度も出てくるつなぎ言葉です。

こうした言葉を多用するのは相手への配慮がある証拠です。相手の理解を促すために、具体化したり、抽象化したりするからです。逆に、配慮がない人の場合、これらのつなぎ言葉はあまり使われることはありません。

中には1時間のインタビューで、こういう言葉を一度も口にしない人もいます。さらには抽象的なことしか話していないにもかかわらず、「要するに」と入れて同様に抽象的なことを言葉を換えて言う人もいます。

自身でも十分な回答ができていないと感じ、説明する必要があると思ってのことだと思いますが、やはり具体的な思考が働いていない場合、そのようになってしまうのです。こういう人がハイパフォーマーであることはありません。

「たとえば」という言葉を入れて具体例を挙げて話すのは、実は結構ハードルを上げることになります。なぜなら、相手も納得する具体例を挙げなければならないからです。具体例の想定があってこそ言える言葉なのです。だからこそ具体的思考が働きづらい人は「たとえば」が出てこないのです。

 

ハイパフォーマーは専門用語を極力使わない

質的な話のバランス感覚ということでは、専門的な話をどのように話すかという重要な点があります。誰しも何かしらの職種に就いており、皆それぞれに専門的な仕事をしています。

相手に自分の仕事について説明をするような場合、専門用語を多用する人が時々います。自分の仕事に誇りを持っているがゆえかもしれません。技術系の仕事をしている人に多いように思われます。そうした分野では専門用語自体が多いということが1つにはあると思います。

しかし、それでは専門外の相手には伝わらないことは明白です。

専門的な用語を使って説明したがる人もいる一方で、極力使わずに説明をする人もいます。ハイパフォーマーの場合、技術系でも専門用語をほぼ使わずに自分の仕事をわかりやすく説明されます。うっかり使ってしまった場合でも「〇〇というのは、......のことです」と一般的にもわかりやすく解説されます。

また、「これは、最近増えているエレベーターの非接触ボタンなどに使われている技術です」などと誰もが身近に感じられるものを引き合いに出して説明してくれたりするのも、ハイパフォーマーに特徴的な点です。

専門用語を使って話した方が当人にとっては説明は容易いに違いありませんが、それでは相手に伝わりません。どんなに専門性の高いことであっても、技術的に深い話をする場ではないのであれば、専門外の人にもわかるように話すべきなのです。

「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに」

有名な井上ひさしの言葉です。

説明能力が高い人というのは、話が饒舌な人でも、言葉遣いが巧みな人でもないのです。「相手に合わせた話ができる人」です。

相手に合わせた話というのは、話し始める前に相手を想定しているだけではなく、話し始めた後も、相手の反応を見ながら随時調整して合わせていくのです。

そうすることで、誰にとってもわかりやすい話ができるのです。これが説明能力の高い人のたった1つの秘訣と言っても過言ではないでしょう。

 

【相原孝夫 (あいはら・たかお) 】
人事・組織コンサルタント、作家。株式会社HRアドバンテージ代表取締役社長。早稲田大学大学院社会科学研究科博士前期課程修了。マーサージャパン株式会社代表取締役副社長を経て現職。コンピテンシーにもとづく人材の評価・選抜・育成および組織開発に関わる企業支援を専門とする。 職場で他者の模範となり、継続的に高い成果をあげている人材である、ハイパフォーマーへのインタビューを30年以上続けており、これまで延べ3,000人以上を調査・分析している。 著書に『人望が集まるリーダーの話し方』(かんき出版)ほか多数。 

 

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