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上司との雑談はムダ? 静かな職場ほど「離職率が上がる」悪循環

相原孝夫(人事・組織コンサルタント)

2023年11月30日 公開

上司との雑談はムダ? 静かな職場ほど「離職率が上がる」悪循環

「雑談に意味を感じない」「時間のムダ」と感じる人も多いかもしれませんが、実は雑談は離職率にも大きく影響するなど、仕事においても大切なスキルだといいます。3000人以上のインタビューを通しハイパフォーマーを分析してきた人事・組織コンサルタントの相原 孝夫さんが、雑談の重要性と有効性について解説します。

※本稿は、相原孝夫著『人望が集まるリーダーの話し方』 (かんき出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

雑談は離職可能性に大きく影響する

雑談の重要性については、以前から指摘されてきました。雑談が自然にできるかどうかは、その職場が健全な状態にあるかどうかのバロメーターと言っても過言ではありません。雑談や声掛けの多い職場ほど、上司・部下間や同僚間の垣根は低く、現場からの情報は上がってきやすく、また流通しやすくなります。

私は仕事柄、多くの企業に足を踏み入れていますが、たいていは最初にその職場に入った瞬間に、良い職場かそうでないかはわかります。何をもとに察知しているのかと言えば、社員たちの動きや表情、話し声です。

もちろん職種にもよりますが、しんと静まり返った中で、皆がPCに向かっているような職場には弾んだ空気は流れていません。

雑談はまた、リテンションの指標であることもわかっています。つまり離職可能性に大きく影響するのです。

リクルートキャリアが2019年6月に発表した「中途入社後活躍調査」(n=5378)の結果がそれを示しています。

離職意向に影響を及ぼす要素を調べたところ、離職について「まったくそう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と回答した人には「短時間でも上司と雑談している」傾向が見られたのです。

また、自分の能力を十分に発揮している「パフォーマンス発揮者」は、「会話の頻度」が高いことがわかったのです。「パフォーマンス発揮者」の約3分の2の人が「1日に1回以上の頻度で上司と会話」をしていました。

一方、パフォーマンスが不十分な人の約3分の1は、「1週間に1回程度、またはそれ未満」しか上司と会話をしていなかったのです。

そもそも、「リモートワーカーは離職する可能性が高い」とする海外の研究結果もあります。その調査によると、在宅勤務を行う人の中では孤立感と労働意欲低下の深刻化が顕著であることが明らかになりました(Survey: Remote Workers Are More Disengaged and More Likely to Quit, November 15, 2018.)。

世界中の従業員とマネジャー2000人以上にインタビューを実施した結果、遠隔勤務者の3分の2は「仕事に意欲を持っていない」ことがわかったのです。

また、「キャリアを通して同じ会社に勤め続ける」と常時あるいは頻繁に考えている割合は、遠隔勤務経験のない従業員の場合は28%だったのに対し、遠隔勤務者の場合はわずか5%でした。リモートワークによる労働意欲の減退と離職可能性の上昇が顕著であることがわかります。

こうしたこともあり、IBMや米ヤフー、ヒューレット・パッカード、ハネウェル、ベスト・バイなどの企業は、毎日のオフィス勤務を例外なく義務づけています。そうすることがチームワークを高め、強力な文化を醸成し、エンゲージメントを高めることで、労働意欲を高め、離職可能性を低下させると考えているのです。

多様化が進み、価値観が共有されていない場合、仕事上必要な会話以外、雑談などはなされなくなります。仕事上の会話だけでは人間的なつながりはできづらく、職場への愛着感も生まれづらいのです。

 

日本人は雑談が苦手な傾向にある

このように、雑談は人と人との距離を近づけますし、他愛もないことも含め、やりとりする習慣をつけるという点で重要性は高いと思われます。

しかし一方で、雑談が苦手な人が多いのも事実です。リスク回避傾向というものが関係しているという考え方もあるようです。

「リスク回避志向が高いのは実は日本人の特性である」という意見もあります。「それゆえ、雑談への苦手意識が強い」というようなことをコミュニケーション戦略研究家の岡本純子氏は言います(「『雑談力』こそ『人生最強の武器』である超納得理由」東洋経済オンライン2022.6.24)。記事では、大手旅行サイトExpedia の調査を紹介しています。

「機内で知らない人に話しかける割合は日本人はたった15%で、堂々のワースト1位でした。トップ層のインド(60%)、メキシコ(59%)、ブラジル(51%)、タイ(47%)、スペイン(46%)と比べても、その差は歴然です。ちなみに日本以外の下位4カ国は、韓国(28%)、オーストリア(27%)、ドイツ(26%)、香港(24%)で、日本とは10ポイント近くの差がありました」。

確かにアメリカの国内線を利用した際には、かなり高い確率で隣の席の人が話しかけてきました。「この間の席には誰も来ないことを願うよ」といった些細な一言ですが、座ってすぐくらいに話しかけてくれるので気まずい気持ちにならずに助かったものです。

「『飛行機の中で、頭上の棚に荷物を入れるのを手伝うか』という問いに、オーストラリアやドイツ、スイス、オーストリア、アメリカはほぼ半数の人が『手伝う』と回答しましたのに対し、日本人は24%とやはり世界最低でした。

一方で、機内の迷惑行為に対して『何も言わずに黙っている』と答えた人の割合は日本人が39%と、世界一『我慢強い』一面も明らかになりました」ということです。

雑談をしたがらない理由としては、「雑談は無駄である」と捉える風潮が強いということを記事では挙げています。

確かに、スピード重視のビジネスの世界では、業務に関係しない話は無駄であると考える人もいます。無駄だから話しかけないというよりも「余計なことを言ってバカにされたくない」「軽くスルーされたらどうしよう」などの心理的な抵抗のほうが大きいようにも思われます。

まして見ず知らずの人に話しかけることには、高い心理的なハードルがあって当然です。「沈黙は金なり」ということわざが頭をよぎったりするかもしれません。黙っていたほうが賢く見えるという誤解もあるかもしれません。

昭和の時代の管理職などは、黙っているだけでなく、苦虫を噛み潰したような不機嫌な表情をする人も多くいました。明るくオープンに接するよりも何か権威が増すような錯覚をしていたのでしょう。

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今日、職場で何回人と雑談をしましたか?

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