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生き方

「私にだけ態度が悪い...?」些細なことで不安になる人の思考のクセ

舟木彩乃(公認心理師)

2023年12月15日 公開 2023年12月25日 更新

 

まあまあ理解できる、ざっくり予測できるまで準備する

把握可能感

【予測がつけば不安は減る】

いつものルーティンの仕事と、初めてまかされた大きな仕事と、どちらが不安でしょうか。

もちろん後者ですよね。大きな仕事をまかされてワクワクしている部分もあるとは思いますが、初めての不慣れな仕事には、誰しも多かれ少なかれ不安を感じます。

人は慣れたものに安心しますが 、逆に知らないことに対しては恐れを感じます。

ただ、たとえ未知なものでも、それを自分なりにまあまあ理解できたり、ざっくりと説明がつく 、予測がつくと思えたりすれば把握可能感は低下せず、 そこまで恐れを感じません。

例えば、海外の知らない街の道を歩くときと、日本の知らない街の道を歩くときと、どちらが安心でしょうか。どちらも知らない街ですが、日本国内でしたら、「日本ならある程度治安はいいだろう。わからなくなっても人にきけばいい」と予測がつくため、そんなに不安は感じないはずです。

 

【「だいたいわかった」に近づける】

把握可能感は、自分の抱えている問題を、何が原因で起きているのか、 そして今後どのようになっていくのかが、「ある程度理解できている」あるいは「納得のいく説明がつけられる」という感覚ともいえます。

したがって、「準備すること」は把握可能感を高めることにつながります。

未来の出来事について、「未知」であれば恐怖を感じることもあるでしょう。得体の知れないものを恐れるのは自然なことです。漠然とした不安にも駆られます。

しかし、未知のものであっても、それについて、自分なりに「説明がつく」「だいたい予測がつく」と思えれば、把握可能感へとつながります。

この「説明がつく」「予測がつく」ためにも、調べる、準備することが大切です。

初めてのクライアントに対するプレゼンでは、どのような展開になるかわかりません。けれども、クライアントについて調べたり、自分の今までの経験からうまくいったことを確認したり、本やウェブなどでプレゼンがうまくいった人の例を学んだりして準備していくと、不安が減っていくと思いませんか。それは、「把握可能感」が高まっていくからです。

自分自身の中で「だいたいわかった」と納得するまで 、「これくらいやれば、まあうまくいくだろう」と思えるまで事前に調べること、準備すること。これが把握可能感を高めることにつながります。

 

「自分がどんな価値観や考えをもっているか」を普段から知っておく

【枠組みが狭い人は不安を感じやすい】

把握可能感を高める方法として「準備すること」の重要性は、先ほど述べたとおりです。そして、把握可能感を高めるうえで「準備すること」に近いのが、「自分を知っておくこと」です。

もっと詳しくいうと、普段から「自分がどんな価値観や考え方をもっているか」について知っておくことです。

人は、直感や過去の経験などから自分の「枠組み」(価値観や考え、もののとらえ方)を形作り、それに基づいて他者を理解します。

例えば、過去の経験から、早口で話すタイプの人のことを「せっかちな人で苦手だ」という考え(枠組み)をもっていたとします。すると、早口で話す人と会ったときに真っ先に苦手意識をもってしまいます。じっくり話してみたらウマが合うかもしれないのに、苦手意識があると、友だちをつくる可能性を消してしまうことになります。

あるいは、メールの返事が遅かったときに、「私にだけ反応がよくない」「私の存在感がないから忘れられる」などとネガティブにとらえる考え(枠組み)をもつ人もいます。

「メールの返事が遅い」には、もちろんいろいろな理由が考えられます。しかし、すぐにネガティブな思考が思い浮かぶ人は、視野が狭くなってしまいます。

「枠組み」(価値観や考え、もののとらえ方)が狭いと、許容できる人や出来事の範囲が狭くなるのです。枠組みが広くない人は、自分の評価基準に当てはまらない人や出来事に遭遇すると不安や違和感を抱きやすくなってしまいます。少しずつ枠組みを広げ、見える世界を広げていきましょう。

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自分がもっている思考のクセを修正する

著者紹介

舟木彩乃(ふなき・あやの)

ストレスマネジメント専門家、公認心理師、株式会社メンタルシンクタンク(筑波大学発ベンチャー)副社長

一般企業の人事部で働きながらカウンセラーに転身、その後、病院(精神科・心療内科)などの勤務と並行して筑波大学大学院に入学し、2020年に博士課程を修了。博士論文の研究テーマは「国会議員秘書のストレスに関する研究」。
これまで一般企業や中央官庁、自治体などのメンタルヘルス対策や研修に携わり、カウンセラーとしての相談人数は、のべ約1万人以上。ストレスフルな職業とされる議員秘書のストレスに関する研究で知った「首尾一貫感覚(別名:ストレス対処力)」に有用性を感じ、カウンセリングにとり入れている。
Yahoo!ニュース エキスパート オーサ-として「職場の心理学」をテーマにした記事、コメントを発信中。著書に『「首尾一貫感覚」で心を強くする』(小学館)、近著に『過酷な環境でもなお「強い心」を保てた人たちに学ぶ「首尾一貫感覚」で逆境に強い自分をつくる方法 』(河出書房新社)がある。

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