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生き方

“人間関係”を豊かにする、「ほんのちょっとの気配り」

本郷陽二(作家/幸運社代表)

2012年08月22日 公開 2023年01月05日 更新

本郷陽二

おごられ上手、おごり上手

会社の先輩に同僚数人が誘われ、居酒屋で乾杯。すっかり盛り上がって、お酒もすすみ、さて会計という時になって先輩が、

「今日は僕が誘ったんだから、おごりだよ」と伝票を持ちました。

会計は決して安くないはずだし、先輩といっても給料がそんなに高いわけでもない。

つい、
「いいです、いいです。割り勘にしましょう」
と固辞してしまいがちです。

でも、これではせっかく「おごろう」としている先輩の好意をないがしろにしてしまいます。また、先輩としてのプライドを傷つけることになるかもしれないのです。また、

「すみません。ごちそうになります」
と頭を下げれば、先輩の顔は立ちます。

でも、スマートな人は、
「ごちそうさまでした! おいしかったです」
「ほんとうですか? ありがとうございます!」
というように、素直に喜びを伝える言葉を選びます。

そうすれば、相手もおごりがいがあったとうれしくなるでしょう。さらに、いつもおごられるわけにはいかないという気遣いのできる人は、

「今日は、ごちそうになります」
と、「今日は」という言葉を付け加え、「今日は特別、次は割り勘にしましょう」と暗に伝えるようにするでしょう。

そして、翌日には必ず、
「昨日はありがとうございました」
と、もう一度お礼を言うことを忘れません。

このような人なら、先輩もまたごちそうしたいという気持ちになりますね。

さて、立場が逆転して、あなたが後輩におごる立場になった時、どんなおごり方がスマートでしょうか。

後輩に一部を払わせて自分が多めに支払うようにすれば、頻繁に後輩を誘うことができるかもしれません。しかし、このやり方では、せっかく出したお金に効果がありません。

後輩にしてみれば、少し多めに出してくれても、結局、自分もいくらか払わなければならないのだから、おごってもらったというありがたみをいまひとつ感じられないでしょう。

それに、後輩自身がそんなに頻繁に先輩や同僚と飲みに行きたいと思っているかどうかも疑問です。気持ちよく相手が「ごちそうさま」と言えるのは、やはり全部すっきりおごってもらった時ではないでしょうか。

たとえ高級な店でなくても、全員分が予算内に収まる店を選んで飲みに行く方が効果はあります。そうすれば、後輩たちも心から「ごちそうさま」と言えるし、先輩としての顔も立ちます。

「今日は俺のおごりだから、好きなものを選んで」
と最初に恰好をつけたいものですが、これでは、おごられる方はできるだけ負担にならないように安いものを頼もうかと気を遣いがちです。

冒頭に話した先輩のように、支払いの段になって「おごるよ」と言う方がスマートですし、意外性もあって効果的かもしれませんね。

相手も自分も疲れてしまうことのない、楽しい飲み会をしたいものですね。

 

【PROFILE】本郷陽二
東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。光文社カッパ・ブックス編集部でベストセラーとなった『冠婚葬祭入門』(塩月弥栄子著)のシリーズなどを担当。その後、話し方や歴史関係の著作やプロデュースで活躍。
主な著書に『誰とでもうまくいく「人間関係」のルール』(日本文芸社)『人を動かす「ほめ言葉」』(中央公論新社)『話し方で損する人、得する人』(PHP研究所)『ひと言で心をつかむ話し方』(ぶんか社)などがある。

 

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