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体の「力み」が取れれば疲れ知らず? 簡単に体のケアができる“脱力”の効果

大沼竜也(鍼灸師)

2024年09月10日 公開 2024年10月01日 更新

体の「力み」が取れれば疲れ知らず? 簡単に体のケアができる“脱力”の効果

せっかくの休日なのに、何もせずに終わってしまった。いくら寝ても慢性的な疲れが抜けない...。こんなときは、頭で考えるのではなく、体に目を向けるほうが有効です。忙しくて時間がないときにこそ取り入れたい、体にフォーカスした心身のほぐし方を鍼灸師の大沼竜也氏が紹介します。

※本稿は、大沼竜也著『心と体のコリをほぐすセルフリセット』(大和出版)から一部抜粋・編集したものです。

 

一生懸命になればなるほど体は「固く」なる

集中していると、気がついたときにはすでに全身がガチガチ。深くゆっくり呼吸をしようと誓ったのに、集中していたら息が止まっていた。姿勢を意識していたはずが、集中しているうちに背中がまあるくなっていた、なんてことはよくあると思います。

こうした「集中」に伴う緊張の問題は、仕事や家事に一生懸命な人ほど強くある傾向です。

できるだけよい成果が出るように、「頑張る」ほどに自分が削られていく――。自己犠牲にも似たこの感覚は、これまで植え付けられた「頑張る」への認識が偏っているために起きる問題かもしれません。

「頑張る」とは、「頑(かたく)なに張(は)る」と書きます。つまり、「固くなる」といっているのと同じようなものです。固くなると、動きは止まり、代謝が落ちます。つまり疲れます。

自分から固くなろうとして仕事に取り組んでいるのでは、それは疲れるし、仕事のパフォーマンスも落ちてしまうでしょう。この疲労感が「やった感」として認識されやすいことも、一生懸命になればなるほど「固くなる」原因かもしれません。

おかしな話ですが、体を緊張させるように指令を出しているのも、自分の脳です。よせばいいのに、自分で指令を出しているので、その分脳の労力は使われています。自ら脳の仕事量を増やしているために、固くなった体に支えられた脳のパフォーマンスは、自由度が低くスタミナもありません。

 

正しい首のポジションを知れば、脱力して集中できる

一方、「脱力して集中」したときの脳のパフォーマンスは、存分にその作業に労力を使えるので、疲れが溜まりにくく、柔軟で、スタミナもあります。実際に、脱力した状態でパソコン作業ができるようになり、万年の頭痛や肩コリが軽くなって、集中力が増したというクライアントを数多く見てきました。

「固くなりながら頑張る姿」は、同じように固くなって苦しい思いをしながら頑張る人には察知しやすいのかもしれません。「固くなりながらきちっとしたほうがよい」という価値観を持つ人が多いせいか、緊張を伴う頑張りは他人から見えやすく、つまり褒めやすいのです。

頑張り屋さんの皆さんには、そうした価値観からは一線を置いて、ここで新しい頑張り方を知ってほしいと思います。

では、どうすればよいかというと、脱力して「ゾーン」に入るような意識を持つことです。

首をくねくねと左右にやさしくくねらせて、首の中心を通る線をイメージし、首の重みを感じます。ちょうど魚が泳ぐようにくねらせて、頭が首の上で「やじろべえ」のようなバランスで乗るイメージです。

力が抜ければ抜けるほど、重力を感じやすくなります。重みを感じながら、最も気持ちのいいポイント、動かし方を見つけます。そこがあなたの首の正しいポジションです。そのまま仕事に向かいましょう。正しくできているかどうかは「気持ちよく力が抜けているか」でわかります。

 

「力み」は体にとって燃費が悪い

セルフケアやリフレッシュ法など、いろいろなやり方がメディアに溢れています。試しにやってみると、効果がある。でも、なかなか続けられない。

これって、実はあなたにやる気がないとか、続ける根性がない、とかではありません。「毎日○分○回、必ずやるんだ!」と思うだけでも精神には負担になります。それが乗り越えられる状況であればよいですが、大半はその余裕はありません。だから続けられない、続けないのです。

そんなあなたにお伝えしたいのが、「ながらケア」です。

仕事や家事、散歩中でもお風呂でも、トイレでも寝るときでも、全ての行動において、「だらー」と体が溶けていくような感覚を持ってみましょう。だらーっとした感覚があるとき、あなたの体は脱力しています。垂れているような、心地よい重みを感じられる状態が理想です。

私たちは、起きているときも寝ているときも、四六時中「重力」がかかった状態で生きています。全身が力んでいる状態は、重力に逆らってエネルギーを浪費しているようなもので、とにかく体にとって燃費が悪い。

ちょっと動いただけで疲れる、何もしていないのに疲れる、というのは、こうした力みが大きな原因なのです。

つまり、重力とうまく付き合うことができれば、セルフケアの時間をわざわざとらずとも、日常が私たちを癒してくれます。

 

体の重みを感じて脱力するだけの「ながらケア」

まずは家で、誰にも見られていないタイミングでやってみましょう。

皿洗い中に、魚のようにくねくねと体を動かしながら、緊張している部分を探します。緊張している部分があると、スムーズにくねくねできません。ぎこちない動きになっている部分を見つけたら、だらーんと力を抜いていきます。

トイレでスマホを触っているときも、首や肩が緊張していないかモゾモゾ動かしてだらーっと力を抜く。パソコンの作業をする前に、手をぷらぷらとゆすって、だらっとした感覚のままタイピングする。

日常動作の中で四六時中この感覚を掴めるようになれば、あらゆることが上手に、かつはやく、疲れも溜まらずこなせるようになります。

さらにこなれてくると、その動作自体が楽しく、ストレスなくこなせる感覚が味わえるはずです。根付いてくればこっちのもので、今度は力みに対して敏感になってきます。「ちょっと力んできたな」とすぐ気がつくことができて、力を抜かないと気持ちが悪くて仕方なくなるでしょう。

ここまでくれば、ノルマを定めなくとも、努力感はゼロでセルフケアができていることになります。

セルフケアを考えるとき、私が最も重要にしているのが「ラク」であることです。しんどさや難しさは最小限にとどめて、かつ効果は最大限引き出せるものをお伝えしています。

だって、くたくたに疲れている状態だからこそ悩みがあるのに、そこに加えてしんどい思いをしながらセルフケアに取り組むのは、少々無理があると思いませんか?

大切なのは、生活にストレッチやサプリを「加える」だけではなく、今すでにある力みの種を減らしていくことです。この営みに確かな手応え(ここでは気持ちよさ)を感じることができれば、日々自分がよくなっていく実感を掴めるようになるはずです。

 

著者紹介

大沼竜也(おおぬま・たつや)

鍼灸師

大沼鍼灸院長。1991年宮城県生まれ。幼少期にカトリック系の教育を受け、東西文化の融合に対する寛容な視点を培う。旧赤門鍼灸柔整専門学校を卒業後、医療・介護領域での豊富な臨床経験を基盤に、2018年仙台市で大沼鍼灸を開業。身体心理学およびソマティック心理学に基づき、精神領域と身体運動の相互関係を変容させる独自のアプローチを実践し、クライアントの心身のバランスを取り戻すことに貢献している。
また、全国規模でのワークショップやセミナーを主催し、専門家向けの学習プログラム【somatics(ソマティクス)】を展開。一般向けには、レジリエンス(精神的回復力)を高めるセッションプログラムを提供し、多方面から支持を集めている。

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